家賃補助制度とは? 会社による補助制度や相場を解説【専門家コメント付き】


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家賃補助制度は、企業の福利厚生のひとつです。通常の給与やボーナスに加えて、従業員の家賃支払いの負担を軽減するために支給されます。
家賃補助制度は、社員満足度の向上に貢献しやすい福利厚生のひとつとして導入されています。

一方で新型コロナウイルス感染拡大を受けた在宅勤務の拡大や同一労働同一賃金の流れなどから撤廃する企業が増えていることも事実です。

この記事では家賃補助制度の種類や相場、およびメリット・デメリットなどをご紹介します。
この記事を参考に家賃補助制度を理解し、福利厚生として導入するかどうかを判断しましょう。

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家賃補助制度とは? 住宅手当と同じ制度?

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家賃補助制度とは賃貸住宅に住む人を対象に、家賃の一部を補助する制度のことです。企業および自治体が提供しています。
「住宅手当」という言葉もありますが、ほとんど同じ意味で使用されています。

家賃補助制度の種類

家賃補助制度は提供される内容の種類の他に、提供する団体にも主に企業と自治体の2種類があります。

それぞれの内容や違いについて説明していきます。

所属する企業の福利厚生としての家賃補助制度

企業から従業員に提供される家賃補助制度は、企業の福利厚生のひとつです。通常の給与やボーナスに加えて、従業員の家賃支払いの負担を軽減するために支給されます。

また、家賃補助制度は企業の義務ではなく、企業の判断で提供される法定外福利厚生です。そのため、家賃補助の有無や内容は企業などにより大きく異なります。

家賃のほとんどを補助する企業もあれば、家賃補助の制度自体がない企業もあります。また、賃貸家賃の一部を負担する場合や持ち家のローン返済の一部を補助する場合など、ケースは様々です。

核家族化が進む現代では、家賃を理由に住む地域を選択する世帯も少なくありません。そのため、地価の高い都市部の自治体や人口が減少している自治体では、家賃補助制度を設けることで地域の活性化を図っています。自治体によっては倍率が高く、補助が受けられない場合もあるため、補助金を希望する場合は募集期間や要件を早めに確認しておきましょう。

北 光太郎氏(社会保険労務士、きた社労士事務所 代表)

各自治体が運営する家賃補助制度

高齢化や過疎化に悩む地域において、住民を増やすため、また住民の家賃負担を軽減するための政策として住民に提供されている家賃補助制度もあります。
子供が増えることで地域の活性化や未来の税金の増収を目指したり、地域を活性化させたりすることを目的として制度が作られることが多いため、新婚夫婦や子育てファミリー層向けに作られているものが多いです。
また、自治体によって制度の内容や募集期間も大きく異なります。

東京都千代田区の「次世代育成住宅助成」

東京都千代田区では、「次世代育成住宅助成」を実施しています。区内に親がいる新婚世帯や子育て世帯、および区内に居住する子育て世帯向けに月に6,000円から最大8万円までの家賃を補助する制度です。
所得制限など条件はありますが、受給期間が最大8年間と長期間なので、長期的な居住が見込まれる子育て家庭に向いている制度といえます。
参考:千代田区「次世代育成住宅助成」

京都府京都市の「住居確保給付金支援事業」

京都府京都市では、失職や離職、および休業などで収入が減ってしまい、住む場所を追われる可能性がある方向けに、3ヶ月間(延長可)家賃相当額を支給する制度があります。
所得制限や支給金額に上限があるなど条件はありますが、失業期間中に失業手当以外にも収入があることで、再就職に向けた活動をより集中して行うことができます。
参考:京都市情報館「京都市住居確保給付金支給事業について」

特定優良賃貸住宅

特定優良賃貸住宅とは、専有面積や広さ、構造などの法的基準を満たした良質とされる賃貸住宅です。間取りは2LDKや3LDKなど余裕があり、駐車場やオートロックも整備されるなど優良ですみやすい特長があります。
この特定優良賃貸住宅では、国や各自治体から家賃補助が適用され、礼金や更新料・保証金・権利金が不要です。年数を重ねるごとに補助額が減少しますが最長で20年と長期の補助を受けることができます。
一方で、特定優良賃貸住宅の利用には所得制限があります。所得によって入居者負担額が変わる点に注意してください。

企業による家賃補助制度の支給条件の例

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補助の必要性

家賃補助制度が適用される正社員の中でも、新入社員など給与水準が低い人や単身者は補助が適用される傾向にあります。

また単身赴任者なども、勤務にあたる費用負担が大きいため、引っ越し手当や別居手当などの費用を、住宅手当などとして補助されることが多くなります。

勤務地から自宅までの距離

勤務地から〇km以内に住む従業員には毎月〇万円を支給するといったように、勤務地・事業所から賃貸している住宅までの距離を条件にしている企業が多いようです。

距離による支給条件は2km圏内、5kmなど企業によりさまざまで、「最寄駅から○駅」など駅数で指定する場合もあります。
そのため、リモートワークで勤務地から遠いところに住んでいる方などはこの条件から支給の対象外になることもあります。

持ち家ではなく賃貸であること

多くの企業は家賃補助を適用する住宅が賃貸であることを条件にしています。
持ち家を支給の対象にしている企業であっても、賃貸と比較して補助額が少ないケースも多く見受けられます。
条件によっては、賃貸に住んでいる人だけが優遇されていると従業員から不満が出る可能性もあります。

家賃補助を導入することで従業員の満足度を下げてしまうことがないように、会社全体への影響を見ながら制度の導入を検討する必要があります。

賃貸のみに家賃補助を行う企業は、「業務上の都合によって従業員自身が賃貸住宅に住居した場合に支給する」など、一定の条件を設けることで、持ち家の従業員と不公平にならないように配慮することが大切です。 一方、賃貸・持ち家の両方に手当を支給し、持ち家の支給額を少なく設定している企業は、「持ち家の従業員に対しては、住宅ローン控除の適用や住宅自体の資産性を考慮している」など、公平である理由を説明できるようにしましょう。

北 光太郎氏(社会保険労務士、きた社労士事務所 代表)

世帯主であるか否か

家賃補助を支給する条件として、「従業員が世帯主であること」を指定している場合も多くみられます。
近年では、結婚している配偶者同士や同棲だけでなく、シェアハウスなど新しい賃貸のスタイルが広がっており、多様な状況への対応を迫られてる担当者もいるかもしれません。

一般的には、世帯主に支給を限定した条件でも問題ありません。
世帯主になるための条件は基本的に指定されておらず、年齢や性別、所得に関係なくなれるからです。
また、世帯主に限定しておかないと、住居の費用を負担していない従業員でも受け取れる事案が発生してしまうかもしれません。
このように、あらゆるケースを想定して条件を設定する必要があります。

実際にあったケースとして、本拠地(地元)以外の地域に住む従業員のみを家賃補助の対象としていた企業がありました。しかし、本拠地で一人暮らしをする従業員には家賃補助が支給されないため、不満が相次ぎ、本拠地条件を廃止したケースがあります。 家賃補助制度を設ける際は、公平性が担保できるよう支給条件を十分検討することが大切です。

北 光太郎氏(社会保険労務士、きた社労士事務所 代表)

企業による家賃補助制度の相場

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厚生労働省の発表によると、家賃補助および住宅手当の全体平均は17,800円です。

補助額は主に企業規模によっても大きく変わり、従業員数1,000人以上の企業は21,300円ですが、30人から99人では14,200円と規模が大きくなるほど補助額も大きくなる傾向があります。

参考:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」

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企業にとっての家賃補助制度のメリット

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社員満足度および定着率の向上

家賃は従業員の毎月の家計の3割ほどを占め、金額負担の大きさに悩む方も多いでしょう。

そのため、家賃補助制度は従業員の金銭的負担を直接減らせる制度のひとつであり、社員満足度の向上に貢献しやすい福利厚生といえます。

また、借り上げ住宅や社宅と異なり、条件内であれば自由に住居が選択できる点も社員満足度の観点からメリットといえるでしょう。

家賃補助制度は、給与水準が低い新入社員にとって魅力的な福利厚生制度の一つです。新卒の学生が家賃補助制度の有無でエントリーをするか判断をする場合もあります。家賃補助制度は若手の人材を集めるために一定の効果があるといえるでしょう。

北 光太郎氏(社会保険労務士、きた社労士事務所 代表)

企業のイメージアップ

家賃補助制度は前述から従業員募集の際に福利厚生の目玉としてPRしやすい手当のひとつです。

家賃補助制度は法定外福利厚生のため導入していない企業も多く、家賃補助制度があること自体に就職市場で高いPR効果が期待できます。
厚生労働省の「令和2年 就労条件総合調査」によると、2020年時点で住宅手当を支給している会社の割合は47.2%と半数に満たない数字です。

そのため、家賃補助制度を導入すれば、それだけで他の企業と差別化ができます。

参考:厚生労働省「令和2年 就労条件総合調査」

ある企業では、社員寮を廃止する代わりに家賃補助制度を導入したところ、従業員の満足度が向上した事例があります。 具体的には、家賃補助の対象となった従業員の一人から「ダンスを趣味にしており、家で練習できる住宅を借りることができた」と報告を受けことがあります。このように、従業員自身で住宅を選択できるからこそプライベートが充実し、仕事への好影響や、企業への定着が向上される場合があります。

北 光太郎氏(社会保険労務士、きた社労士事務所 代表)

企業による家賃補助制度のデメリット

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企業の負担が大きい

家賃補助の大きなデメリットのひとつとして、支給する企業側の負担が大きいことが挙げられます。

日本経済団体連合会による第63回福利厚生調査結果報告によると、2018年4月から2019年3月までの企業の法定外福利厚生のうち、家賃補助をはじめとした住宅関連費用は47.8%と約半数を占めています。
特に企業規模が大きくなり従業員数が多くなるとその分補助に必要な金額も増えてしまいます。
参考:一般社団法人 日本経済団体連合会「第63回福利厚生調査結果報告」

課税対象になる

基本給に上乗せして給与とともに支給される家賃補助は会計時に給与額に加算されるため、所得税が課税されます。
所得税は累進課税制度のため、給与額が増えれば自ずと所得税の割合も増え、従業員や企業の税負担が増える点に注意しましょう。

企業による家賃補助制度は近年減っている!?

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ここまでさまざまなメリット・デメリットを紹介してきた家賃補助制度、近年ではさまざまな事情により廃止する企業が増えています。
ここでは、家賃補助制度が減ってきている理由を解説します。

減っている理由①テレワークの普及

新型コロナウイルス感染拡大の影響から、通勤の際の満員電車や車内での感染を避けるために、テレワークを導入する企業が急増しました。それにともない、企業の近くに住んでもらう必要性がなくなり、その代わりに自宅などで仕事をするための環境整備の補助が必要になりました。
そのため、家賃補助や引越し手当などの住宅手当を撤廃して、在宅勤務をサポートする在宅勤務手当などを導入する企業が増えています。

新型コロナウイルスの感染拡大自体は今後おさまっていくと考えられますが、このコロナ禍がテレワーク普及のきっかけになった企業も多くあり、またテレワークができること自体を福利厚生ととらえる価値観も浸透しました。
家賃補助を撤廃し、在宅勤務手当を導入する動きは今後も続くと考えられます。

減っている理由②同一労働同一賃金の働き方改革

政府主導の働き方改革によって提唱された概念の一つに、「同一労働同一賃金」があります。これは、正規雇用や非正規雇用の関係なく、同じ責任を持ち同じ労働をしている人は同じ賃金であるべきという考えです。
特に日本では同じ労働をしていても、正社員は契約社員や派遣社員よりも賃金が高いことが多く、家賃補助を含めた福利厚生も正社員に限るなど、正規雇用者が優遇されていた背景がありました。

しかし、上記の「同一労働同一賃金」の流れの中、労働法の改正により、特別な理由なく正規雇用者と非正規雇用者の待遇差をつけることができなくなりました。
そのため、主に正社員の福利厚生のひとつとして実施されていた家賃補助制度はなくなり、全員の給料を一律で上げるなど、対応している企業が増えています。

家賃補助制度は支給条件や課税額なども含めて検討しよう

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家賃補助制度は従業員満足度に直接働きかけることができる社内の福利厚生のひとつであり、導入のメリットが大きい制度のひとつです。

一方で所得税制度との相性があまりよくなく、また昨今の働き方改革の流れの中で必要性が問われている制度でもあります。
また、一口に家賃補助制度を実施するにも、適用条件など企業の運営状況をみて決めていかなければならず、それに漏れてしまった社員の不公平感をなくすことも重要になります。
家賃補助制度の検討は一般論に流されずに多くの視野からの総合的な検討が必要といえるでしょう。

近年では、条件次第で非課税になる社宅制度に乗り換える企業もあります。
社宅制度については、こちらの記事「【社宅制度を徹底解説】制度の仕組み、メリット・デメリット、契約・手続き方法まで」をぜひチェックしてみてください。

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(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2023年10月時点のものです。

【コメント専門家プロフィール】
北 光太郎 氏
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。


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