【専門家がコメント】社宅の更新料を負担するのは誰? ~相場、消費税、計上方法・勘定科目


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社宅の更新料は、企業・従業員のどちらが負担すべき費用か、扱いに迷う企業の担当者も多いでしょう。
今回は、社宅の更新料について誰が負担する場合が多いか、その相場はいくらくらいかを網羅的に紹介します。社宅の更新料にかかる消費税や勘定科目についても解説するので、社宅を管理する担当者はぜひ参考にしてください。

物件によっては高額な更新料が発生する場合もあるため、企業・従業員のどちらが更新料を負担するのかを明確にしておきたいところです。あらかじめ更新料の負担者を明確にしておかないと、更新料を巡って思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
また、社宅は個人の賃貸物件と違い、複数の部屋を同時に賃貸契約したり、アパート・マンションを一棟丸ごと利用したりするケースが多いため、更新料が発生する場合は高額になりがちです。少しでも社宅の管理コストを削減したい担当者のために、更新料がそもそもかからない賃貸物件サービスも紹介するので、併せてチェックしてみてください。

社宅の更新料に加え、その他の費用についても正しく理解し、より良い社宅運用を目指しましょう。

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そもそも社宅の「更新料」とは?

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更新料とは、物件の賃貸契約を更新する場合に発生する費用を指します。更新料が発生するタイミングは2年に1回、4年に1回とオーナーや物件管理者の判断によって決定されます。

賃貸物件の契約更新にともなって発生する更新料ですが、徴収された更新料の明確な使用目的は定まっていない場合がほとんどです。更新料は、物件のオーナー=大家さんの収入源のひとつとなることが多いと言われています。

大家さんにとって礼金や家賃以外に得られる貴重な収入源となるため、収入源の確保を目的として更新料を設定している物件も少なくないはずです。ただし、大家さんによって更新料の使用目的も異なります。更新料を単純な収入源として考える以外に、自然災害や老朽化によって物件の損傷が発生した際や、入居者の希望により共用部分の設備を整える際に、修繕費として利用したりしています。

また、大家さんから物件を預かり管理・運営している管理会社がいる場合、更新料とは別に「更新事務手数料」と呼ばれる手数料を徴収されたりもします。更新事務手数料はその名の通り、管理会社が物件の契約を更新する作業の際に必要な書類の準備や人件費を賄うために発生するもので、更新料とは別の意味合いを持った費用です。

更新事務手数料は、物件や地域、賃料などさまざまな要因で発生しない場合もあります。そのため、社宅を含めた賃貸契約の際は更新料・更新事務手数料の有無について確認する必要があります。なお、賃貸物件の中には、更新料不要のマンスリーマンションも存在しており、少しでも費用を抑えたい方はマンスリーマンションもチェックしてみましょう。マンスリーマンションについては「マンスリーマンションとは?9つのメリットと8つのデメリット~選ぶべきシーン・用途/こんな人に向いている~」で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。

更新料や更新事務手数料の支払いは、民法や借地借家法といった法律での規定はありません。そのため、更新料の支払義務については不動産賃貸借契約書において定めることになります。 こうした更新料の定めに関しては、賃貸契約書で記載することが宅地建物取引業法において決まっています。つまり、賃貸契約書に定められていない更新料については、賃借人に支払い義務はなく、大家さんも更新料を請求することはできないということになります。 逆にいえば、賃貸契約書に更新料の定めがあれば賃借人には更新料の支払い義務があります。更新料の金額については賃貸借期間2年で賃料の1か月分程度が相場です。 一方、更新事務手数料は更新料とは別途、不動産管理会社に支払うものであり、賃貸契約書とは別に不動産管理会社との契約に基づくものになります。更新事務手数料については賃貸契約書に記載されるわけではないので、あらかじめ不動産管理会社に発生の有無を確認しておくとよいでしょう。

渋田貴正氏(税理士・司法書士)

社宅の更新料を負担するのはだれ?

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社宅の更新料は企業側が負担するケースが多いです。社宅は、企業が従業員の働きやすい住環境を整えるために整備する「福利厚生」のひとつです。そのため、社宅を用意する企業の多くは、家賃の一部を負担するだけでなく、敷金・礼金・仲介手数料といった入居一時金とともに更新料も全額負担としているケースが多いです。

しかし、社宅の更新料を必ず企業が負担しなければならないと法律で定められている訳ではありません。そのため、従業員の理解を得られれば社宅更新料を従業員負担にすることは可能です。

ただし、事前に更新料がかかることを通知しなかったり更新のタイミングになって更新料がかかることを通達したりするのでは、従業員の不満が溜まりトラブルに発展する可能性は高いでしょう。更新料については企業側の負担・従業員の負担、どちらの場合でも従業員への事前通達は必須です。

トラブルを未然に防ぐためにも、賃貸使用契約書や社宅規程に更新料を負担するのはどちらか明記するとともに、契約を結ぶ際に口頭でも従業員に説明しておきましょう。

社宅の更新料の相場はいくら?

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更新料の相場は、賃料の1ヶ月分程度と定めている物件が多いです。国土交通省の住宅局が発表している「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」」によると、更新手数料がある物件は賃貸物件全体の約40%、更新手数料なしの物件は約46%となっています。また、更新手数料が家賃の1カ月未満の物件は約14%、更新手数料が家賃の1カ月ちょうどの物件は約73%となっており、実に7割強の物件が更新料を賃料の1ヶ月分と定めています。

このように、半数ほどの物件で更新料は発生しますが、マンスリータイプの物件などでは、更新料が発生しない賃貸物件も存在します。今後社宅として賃貸物件の手配を考えている担当者は、「更新料がかからない賃貸サービスも存在する」と覚えておけば、社宅にかかるコスト削減の一助となるでしょう。

参考:国土交通省 住宅局「令和元年度 住宅市場動向調査報告書

社宅更新料の勘定科目は?

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社宅を管理する担当者のなかには、社宅の更新料の勘定科目が何に該当するかよくわからず、判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。更新料の勘定科目は、支払う期間や物件によって異なるので、実際の仕訳作業は自社の経理担当者と相談しながら行うのが無難です。

ただ、知識として社宅の更新料の勘定科目を理解しておくと、経理担当者とのコミュニケーションも円滑に進むためオススメです。

社宅の更新料は期間や金額などの条件によって、以下の勘定科目に分けられます。

1.前払地代家賃
2.長期前払費用
3.支払手数料
4.雑費および地代家賃


それぞれ詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。

1.前払地代家賃

家賃の更新料は仕訳の際に「前払地代家賃」という勘定項目で仕分け作業を行います。この「前払地代家賃」は、短期前払費用の範囲ですが、決算の翌日か次の決算末までに役務提供があるものに限られているのが特徴です。

ただし、1年以内の前払地代家賃は、「短期前払費用」として扱われることもあるので仕訳作業の際は注意しましょう。

2.長期前払費用

前払費用の中でも、1年以上の更新料を支払う場合は「長期前払費用」という科目で仕訳作業を行います。例えば、更新料を賃料1ヶ月分の100,000円分支払ったとします。仮に2年契約の場合は1年ごとに50,000円ずつ償却していくため、勘定科目は長期前払費用になるのです。また、長期前払費用は、決算日とともに償却し、費用にするのが特徴です。

3.支払手数料

支払い手数料は、「一般管理費」として分類される手数料です。社宅管理業務を行う上で発生する仕分け業務では、更新料が少額の場合、礼金や仲介手数料と一緒に「支払手数料」として計上することもあります。

支払手数料として計上できるケースは物件や賃料など、状況によって異なるため、社宅管理担当者の方は自社の経理担当者へ相談して仕訳作業の判断をすると良いでしょう。

4.雑費および地代家賃

会社が支払っている更新料が20万円以上の場合は「雑費」及び「地代家賃」として仕訳処理します。地代家賃は、企業が所有する事業所や店舗・事務所、事業用の月極駐車場の賃料などを管理する勘定科目で、経費に計上されると覚えておきましょう。

個人事業主も支払う更新料が20万円以上の場合に限り「雑費」及び「地代家賃」として仕訳処理できます。

社宅の更新料に消費税はかかる?

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更新料に消費税がかかるかどうかは、賃貸物件をどのような目的で借りるかによって異なります。社宅のように「従業員が住んで生活すること」を目的としている場合、賃貸物件の更新料に消費税はかかりません。また、上記のように住居目的で使用される物件は、家賃や敷金・礼金、共益費・管理費、保証会社に支払う保証料も非課税対象となります。

ただし、仲介手数料や鍵の交換費用・そのほか管理会社の物件整備にかかる費用などは、課税対象となるので留意してください。

住居用の物件に対し、事務所や店舗のように事務利用する物件は、更新料にも消費税が課税されます。また、事業用として物件を利用する場合は家賃や敷金・礼金、共益費・管理費なども課税対象となります

このように、用途によって消費税の課税・非課税は異なります。しかし、物件の管理会社に支払う「更新事務手数料」は住居用・事務用どちらの場合も消費税がかかるので注意しましょう。

更新事務手数料を削減したい場合は、社宅を自社管理して運営するか、マンスリーマンションのようなそもそも更新料がかからないタイプの社宅を選択すると良いでしょう。社宅は個人入居と違い複数の部屋を賃貸したり、アパート・マンションを一棟丸ごと利用したりすることが多いので更新料も高額になりがちです。

また、社宅を自社運営する場合は管理や運営の業務に当たるスタッフの部署整備も必須となるので、人件費など他のコストがかさんだり、スムーズな運用を行うまでに時間がかかったりと思わぬハードルの発生も考えられます。社宅の更新料をスマートに削減したい担当者は、マンスリーマンションなどそもそも更新料のかからないタイプの賃貸物件を選択するのがオススメです。

上記のほかに、オフィスなど法人が事業用で借りる物件については、あらかじめ敷金の数か月分の償却(敷金償却)を契約書で取り決めていることがあります。このような敷金償却についても経費にできますが、その敷金償却も事業用の賃貸であれば課税対象となります。 一般的に不動産賃料や共益費、礼金、更新料などに消費税が課税されるかどうかは、賃貸契約書上の目的が居住用と事業用いずれで記載されるかということで判断します。賃貸契約書上居住用と記載されていて実際は事業で使用しているケースでも、賃貸契約書居住用である以上は課税対象とはなりません。 なお、敷金については、いずれの契約形態であっても、償却される金額以外は消費税の課税対象にはなりません。不動産賃貸に関する消費税の取り扱いについては、契約書の確認など専門的な知識を要する面も多いので、税理士に相談するなどして慎重に処理するようにしましょう。

渋田貴正氏(税理士・司法書士)

まとめ:社宅の更新料の負担は社宅規定に明記の上、正しい社宅運用をしましょう

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今回紹介したように、社宅の更新料は企業側の負担となるケースがほとんどです。オーナーから社宅用に物件を賃貸している社宅管理の担当者は、自社の社宅の更新料がどれくらいかかるのか、必ずチェックしておきましょう。また、社宅の更新料の負担者は社宅規程に盛り込み、従業員が入居する際に口頭でも説明しておきましょう。

社宅にかかる更新料など、コストの見直しを図りたい社宅管理の担当者は、マンスリータイプの社宅を検討してみるのも一つの手です。マンスリータイプの社宅であれば更新料がかからない物件も多く、社宅運営にかかる費用の削減も可能です。マイナビBizではさまざまな立地・賃料のマンスリー賃貸物件を提供しています。オフィスに近い都心部の物件も多く保有しているため、従業員の働きやすい環境づくりにお役立てください。

まだ具体的なマンスリー賃貸物件の条件などが固まっていない社宅管理の担当者の方も、豊富な実績を持つマイナビBizスタッフが課題に合わせた賃貸プランを提案するので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

マンスリータイプなど、更新料がかからない物件を選択することで、更新料の支払いというコストを抑えられます。また更新料以外でも、このほかにもマンスリータイプには家財が備え付けられているものも多く、従業員の引っ越しコストの低減も可能です。し、物件探しや物件契約の事務負担も軽減することができます。

渋田貴正氏(税理士・司法書士)

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(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2023年12月時点のものです。

【コメント専門家プロフィール】
渋田貴正 氏
税理士・司法書士
大手食品会社や外資系専門商社で経理部、人事部などで勤務後独立。その後V-Spiritsに合流し税理士・社会保険労務士登録。会社設立から設立後の税務までの実務を手掛ける。複数の資格を生かして、税務から登記など会社経営に関するさまざまな業務をワンストップで手掛けている。
https://v-spirits-startup.com/
https://www.pright-si.com/


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