【税理士コメント付き】借り上げ社宅の家賃の相場や負担するメリットを解説! 設定ポイントも紹介
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借り上げ社宅とは、会社が賃貸物件を借りて従業員に貸すことで住居の支援をする福利厚生の制度のことです。しかし、「負担する家賃をいくらに設定すれば良いかわからない」と悩む方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、借り上げ社宅の家賃相場や課税条件・設定のポイントを解説します。また、借り上げ社宅の家賃を会社が負担することで得られるメリットだけでなく、従業員が受ける恩恵についても紹介していきます。
ぜひ、この記事を参考に借り上げ社宅の家賃の仕組みを理解し、適正な家賃負担額を設定しましょう。
借り上げ社宅とは?
借り上げ社宅とは企業が不動産事業者や大家さんから賃貸物件を借り、一部家賃を会社負担することで従業員に低価格で貸し出す制度のことです。
賃貸物件を借りる必要のある従業員の生活を支援するため、福利厚生のひとつとして採用されています。
他にも社員の住居にかかる費用を支援する制度として、社有社宅と住宅手当があります。
社有社宅は、会社がマンションやアパートを購入し、従業員に貸し出す制度です。物件を保有する点が借り上げ社宅制度とは異なります。
住宅手当は住居にかかる費用を補助する制度です。物件の貸し出しはなく、給与の一部として手当が支給されます。
借り上げ社宅制度は、物件を保有しない分だけ社有車宅よりも自由度があり、現物の物件を提供する点が住宅手当とは異なります。
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借り上げ社宅のサービスと家賃の相場
借り上げ社宅の場合、従業員が支払う家賃の相場は、周辺地域の平均値に対して10〜20%程度です。
東京都のワンルームに住む人が支払っている家賃は5〜10万円というデータを元に計算すると、借り上げ社宅に住む場合に従業員が負担する金額は1〜2万円、企業が負担する金額は8〜9万円程度になります。
ただし、家賃以外にも以下のような初期費用の負担も必要になる点に注意してください。
・敷金
・礼金
・前家賃
・仲介手数料
・保証料
・引っ越し費用
これらすべてをまとめると、数ヶ月分の家賃が初期費用として必要になります。
参考:東京で一人暮らし、みんなの理想「1LDKで7万以内」で住める町ってあるの?
借り上げ社宅の家賃負担が課税される条件
借り上げ社宅の家賃負担が課税されるかどうかは、貸す相手や従業員との負担する割合によります。また、課税の対象になるのは家賃ではなく、賃貸料相当額です。
賃貸料相当額とは、国税庁が定めた条件や計算式に従って算出する、課税額を決めるためのものです。なお、課税される条件は、役員と従業員に貸す場合で異なります。
ここでは、社宅を貸す対象者が多い従業員から説明していきます。
従業員に貸す場合
従業員に貸す場合、賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば課税されない点がポイントです。賃貸料相当額は、以下3点を合計して計算します。
・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
このように、賃貸料相当額を算出するために基準となるのは固定資産税の課税標準額(以下、標準額)です。実際に支払っている賃料ではない点に注意しましょう。
また、アパートやマンションではほとんどのケースで賃貸料相当額が実際の賃料を下回ります。状況次第では相場の10〜20%以下になることもあるようです。
つまり、従業員に賃料の半分を負担してもらわなくても、毎月支払う金額の50%以上を経費として計上できるケースが多いということです。
ただし、実際に計算してみないと言い切れない点には注意してください。なお、標準額が記載された書類は物件が建っている市町村の役所で入手できます。
上の計算式に従い、自分で算出してみましょう。もし計算に不安があるならば、税理士に相談することをおすすめします。
引用元:国税庁 No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
役員に貸す場合
役員に社宅を貸す場合、賃貸料相当額のすべてを徴収しない限り課税されます。賃貸料相当額を算出するには、借り上げ社宅の床面積を算出し、小規模住宅とそれ以外の住宅に分けて計算する必要があります。
小規模住宅の定義は以下のように法定耐用年数で変わります。
・法定耐用年数が30年以下の場合:床面積が132平方メートル以下
・法定耐用年数が30年を超える場合:床面積が99平方メートル以下
区分所有の建物は別途条件がつく点に注意してください。
役員に貸与する社宅が小規模住宅である場合、次の3点を合計した額が賃貸料相当額になります。
・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・ 12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
従業員と同じように、賃貸料相当額は実際の賃料より低くなるケースがほとんどです。上の計算式で正確な金額を把握してから負担額を決めましょう。
引用元:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき
小規模住宅の場合
建物の固定資産税の課税標準:400万円
建物の総床面積:70㎡
敷地の固定資産税の課税標準:600万円
1 400万円×0.2%=8,000円
2 12円×70㎡/3.3㎡=255円
3 600万円×0.22%=13,200円
賃料相当額=1.+2.+3.=21,455円
上記のケースでは賃料相当額21,455円以上を毎月役員から徴収すれば、所得税の課税は行われません。
渋田貴正氏(税理士・司法書士)※計算式も含む小規模でない住宅の場合
役員に貸与する社宅が小規模住宅に該当しない場合には、その社宅を会社で保有しているのか、他から借り受けた住宅等を提供しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が変わります。
自社所有の社宅の場合、以下に記載してある計算式の1と2を足した額の12分の1が賃貸相当額になります。
小規模でない住宅で、他から借りた物件を役員に貸与する場合、会社が家主に支払う賃料の50%の金額、もしくは以下の合計金額と比較して多い金額の方が賃貸料相当額になります。
・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%:ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく、10パーセントをかける
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
参考:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき
建物の固定資産税の課税標準:2,000万円
敷地の固定資産税の課税標準:3,000万円
A 2,000万円×10%=200万円
B 3,000万円×6%=180万円
賃料相当額=(A+B)/12=316,667円
上記のケースでは賃料相当額316,667円以上を毎月役員から徴収すれば、所得税の課税は行われません。
渋田貴正氏(税理士・司法書士)※計算式も含むお問い合わせは簡単60秒!
借り上げ社宅の家賃を企業が負担するメリット
借り上げ社宅を提供することで企業が得られるメリットを解説します。借り上げ社宅制度を福利厚生に導入するかどうかを検討するため、ぜひ参考にしてください。
税金の負担額を小さくできる
借り上げ社宅の賃料相当額を50%以上徴収していれば、会社が負担する金額を経費として計上でき、税金の負担額を軽減できます。
さらに、従業員から住居費を徴収する分、給与を少なくできるため、従業員と折半して支払っている社会保険料の負担額が低減します。
なお、住居にかかる費用を支援する住宅手当は給料として扱われるため、税金や社会保険料の負担が増加します。したがって、住宅手当を支給している会社は、借り上げ社宅に移行することでコスト削減が実現可能です。
【税理士によるコメント】 借り上げ社宅方式と住宅手当方式とで、従業員の実質的な収入(給与額面-家賃負担額)が変わらないとしても、会社には社会保険料負担の面でメリットがあります。 借り上げ社宅を導入して会社が全額家賃を支払って従業員から一部を徴収する形であれば、住宅手当を支給する形に比べて、給与額面が減る分社会保険料がダイレクトに低減できます。これによって、会社は社会保険料が少なくなった分を更なるヒトやモノに投資することが可能となります。
渋田貴正氏(税理士・司法書士)採用のPRになる
借り上げ社宅は採用のPRにもなります。
マイナビキャリアリサーチが就活生にアンケートをとった結果によると、企業の福利厚生をチェックする時に注目したポイントで「社宅・社員寮」と答えた人は51.8%にも上ります。
借り上げ社宅があることで、就活生に対して福利厚生が充実していることをアピールできます。
住まいは安心して生活するための基本項目のひとつです。就活生に安心して会社生活を過ごせるイメージを持ってもらうためにも、借り上げ社宅の導入を検討してみてください。
【税理士による事例の紹介】 東京都にある、とある飲食店運営会社では全国から求職者を募集しています。そのほとんどが高校卒業や大学卒業したてで、初めて東京で生活する新卒社員です。そのようなケースでは本人もご家族もどのような生活環境になるのかということも非常に不安なものです。 そこで、その企業では地方から引っ越してくる全従業員のために借り上げ社宅を用意しています。働く場所の近くに住むことができて、通勤などに時間を使うこともありません。また、同じく地方から就職した同期も近くに住んでいるといったことも、慣れない環境の中の一つの緩和剤になっています。 また、ご家族にとっては保証人不要だったり、家賃滞納の心配がなかったりといった点も安心できるポイントとなっています。
渋田貴正氏(税理士・司法書士)借り上げ社宅の家賃負担により従業員が受けるメリット
借り上げ住宅は従業員にとっても以下のようなメリットがあります。
・入社や転勤時に新居手続きが少なく、仕事に支障がかからない
・自分で賃貸契約するよりも住居にかかる初期費用や家賃が安くなる
・給与から家賃が引かれるので節税になり手取りが増える
入社や転勤時には新しい業務への準備や資金が必要です。そんな時に住居手続きが少なく、低コストで利用できる借り上げ社宅は魅力的です。
また借り上げ社宅の家賃を支払うことで、見かけの所得額が小さくなり、税金や社会保険料の負担が小さくなります。月給35万円相当でシミュレーションした結果は以下の表のとおりです。
給与支給 | 35万円 | 30万円(家賃相当額5万円をマイナス) |
社宅提供 | × | 〇(5万円を会社負担) |
家賃 | ▲10万円 | ▲5万円 |
社会保険料 | ▲5.1万円 | ▲4.2万円 |
各種税 | ▲2.4万円 | ▲1.9万円 |
手取り | 17.5万円 | 18.9万円 |
家賃を差し引いた分の給与は月あたり25万円と同じですが、年間で約16.8万円も所得が増える点は、従業員にとって大きなメリットです。
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借り上げ社宅の家賃負担額を決めるポイント
借り上げ社宅を従業員に貸し出す場合、徴収する金額は賃貸料相当額の50%以上に設定することをおすすめします。
なぜなら、家賃の半分以上を徴収することで、会社が負担する金額を経費として計上できるからです。たとえば、賃貸料相当額が10万円の社宅を従業員に貸し出す場合、課税の対象になる金額は以下のとおりです。
賃料相当額 | 従業員から徴収する金額 | 課税対象になる金額 |
10万円 | 5万円 | 0万円 |
3万円 | 7万円 |
徴収する金額は自由に決められますが、従業員の負担を大きくしすぎると社宅のメリットが小さくなる点には注意しましょう。
借り上げ社宅の家賃負担を適切に決めて運用しよう
借り上げ社宅は会社が賃貸物件を借りて従業員に貸し出す制度です。相場よりも安く住まいを提供することで、従業員の満足度を向上できるだけでなく、節税や手取額のアップも実現できます。
ただし、課税される条件に該当してしまうと経費として計上できない点には注意してください。ぜひ、この記事を参考に借り上げ社宅の家賃について理解を深め、会社と従業員がお互いメリットを得られるように家賃負担額を設定しましょう。
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【税理士によるコメント】 借り上げ社宅制度を導入することで、会社が支払う家賃分を主に社会保険料負担を低減できるほか、求人を行う場合の大きなPRポイントになります。 特に求職する側も福利厚生を重視する現代では、借り上げ社宅制度の導入は重要な経営資源であるヒトやカネの充実の一助になる、非常に有効な制度です。
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(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2023年11月時点のものです。
【コメント専門家プロフィール】
渋田貴正 氏
税理士・司法書士
大手食品会社や外資系専門商社で経理部、人事部などで勤務後独立。その後V-Spiritsに合流し税理士・社会保険労務士登録。会社設立から設立後の税務までの実務を手掛ける。複数の資格を生かして、税務から登記など会社経営に関するさまざまな業務をワンストップで手掛けている。
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