海外駐在員の給与・手当はどう決める?税金・保険についても解説


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海外駐在員は、海外での事業推進において非常に重要なポジションとなる人材です。特に、これから海外事業を推し進める場合や国内でのみ業務を担当していた場合は、海外駐在について制度などを確実に把握しておく必要があります。

本記事では、海外駐在員の給与の決め方や手当、税金や社会保険の適用などに加え、企業がすべきことも解説します。ぜひ最後までご覧ください。

海外駐在員の給与相場

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海外駐在員の年収は、国内に対して額面で約1.5倍、手取りが約1.8倍が相場とされています。特に、国内と比べて手取り額が増えているといえますが、考えられる理由は以下の通りです。

・現地の税制が適用され企業側が税金を負担することが多い
・現地の税制に基づく「みなし税」が適用される
・手当や福利厚生が手厚い

海外駐在員には、現地の税制が適用され企業側が税金を負担するケースが多くあります。また、海外駐在員ならではの手当や福利厚生があることで、国内に比べて当人の負担が小さくなるのです。

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海外駐在員の給与の決め方とは

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国内で働く以上、海外駐在員の給与は国内と同じというわけにはいきません。特に、海外駐在員にとってもっとも気になる点だといえるため、企業の規模や状況にあわせて厳格に決める必要があるでしょう。海外駐在員の主な給与の決め方は以下の3つです。

・購買力補償方式
・別建て方式
・併用方式

それぞれの特徴について詳しく解説します。

1.購買力補償方式

購買力補償方式とは、海外でも国内と同等かそれ以上の購買力を補償するという考え方のことです。物価が異なる海外でも従業員が快適に過ごせるようにするためのもので、多くの企業が採用しています。

購買力補償方式では、国内の給与に、本国と現地の相対的な物価差を表す生計費指数(生計費インデックス)と為替レートをかけ合わせて給与を算出します。客観的かつ合理的な給与決定方法のため海外駐在員の理解を得やすいのが特徴です。

なお、生計費指数は民間機関などから提供されています。

2.別建て方式

別建て方式とは、海外企業の給与体系にのっとり給与を支払う方式です。現地企業の給与体系に合わせるだけとわかりやすく導入しやすいメリットがあります。

しかし、日本国内の給与体系とはまったく別物で、国内の給与との整合性が取りづらい点がデメリットとして大きく立ちはだかるため、採用する企業は少なくなっています。

3.併用方式

併用方式とは、購買力補償方式と別建て方式を組み合わせた給与決定方式です。日本国内の給与と海外企業に合わせた給与を合算して支給する方式で、中小企業で採用される傾向にあります。

海外駐在員への手当

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海外駐在員には、国内の従業員にはないような手当が支給されます。手当は企業ごとの規定に沿って決められますが、決め方や考え方に大きな差はありません。海外駐在員に支給される主な手当は以下の通りです。

・海外赴任手当
・ハードシップ手当
・その他手当

それぞれ順番に解説します。

1.海外赴任手当

海外赴任手当とは、海外駐在員に対してインセンティブを与えるための手当です。海外駐在員を派遣するほとんどの企業が支給しているもので、 海外勤務を大きく手助けする手当だといえます。

海外駐在は、企業と従業員どちらにとってもポジティブな意味があるため、インセンティブとして支給する必要があるのです。

2.ハードシップ手当

ハードシップ手当は、海外での地域による危険を金銭で保障するための手当です。駐在先の国や地域によって気候や治安は大きく変わるため、日本にいるときと同じような生活ができるとは限りません。

駐在先が日本ほど安全に暮らせるとは限らないため、従業員を守るためにも必要な手当です。また、手当の金額は現地の治安や情勢などによって変動します。

3.その他手当

海外駐在員に対して支給される手当は、海外赴任手当やハードシップ手当が主ですが、その他にも従業員やその家族などに対して支給される手当がいくつかあります。

・単身赴任手当
・帯同家族手当
・住宅手当
・子女教育手当

上記以外にも、企業によってさまざまな手当が支給されるケースがあります。海外駐在は、駐在する本人だけでなく、配偶者や子どもなど家族の人生にも関わる大きな出来事です。そのため、皆が安心して生活できるように企業がサポートやケアをしなければならないといえるでしょう。

海外駐在員の税金

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ここでは、海外駐在員の税金について詳しく解説します。給与や手当とあわせてしっかりと把握しておきましょう。

1.海外駐在員の所得税

海外駐在員の所得税は、海外に居住する期間によって日本の所得税が課税されるかどうかが変わります。所得税法上、国内に住所がある、またはか1年以上国内に居所(現実に居住している場所)があるを有する個人を「居住者」、それ以外を「非居住者」と呼びますが、海外の在留期間が1年未満であることが明らかな場合を除き、海外駐在員は原則非居住者となります。

非居住者の場合は原則として日本の所得税が課税されません。つまり、1年以上海外に駐在する場合は、海外勤務で得た給与に対して所得税は課税されず、海外駐在期間が明らかに1年未満である場合は、従来通り日本の所得税を納める必要があるのです。

2.海外駐在員の住民税

海外駐在員の住民税は、その年の1月1日現在に海外転出手続きがとられているかどうかで課税が決まります。1月1日時点で日本に住所がある場合は通常通り課税、すでに海外に居住している場合は原則課税されないことになるのです。

つまり、年末の時期に海外駐在が決まった場合、年内に出国し居住地を移していれば、出国した年の所得にかかる住民税を納める必要がなくなります。住民税は、前年度の所得に対して課税されますが、出国する時期によって納税すべきかどうか変わるのです。

海外駐在員の社会保険の適用

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海外駐在員の社会保険は、多くは基本的に雇用主が変わらない限り継続となる一方で、労災保険のみ適用外となります。ここでは、継続となる保険と労災保険についてそれぞれ詳しく解説します。

基本的に雇用主が変わらない限り社会保険は継続

前述の通り、海外駐在をする場合でも雇用主が変わらなければ基本的に社会保険は継続となります。継続となる社会保険は以下の通りです。

・健康保険
・介護保険
・雇用保険
・厚生年金保険

上記のうち、介護保険は、非居住者となった場合に保険料を支払う必要がなくなりますが「介護保険適用除外該当・非該当届」を保険者に提出しなければなりません。日本に住民票が残っている場合や、加入している保険の規約によっては介護保険料の支払いが引き続き発生することがあるため事前に確認すべきだといえます。

労災保険の特別加入制度

労災保険は、日本国内で働く労働者が対象の保険であるため、海外駐在の際には退会となります。しかし、国や地域によっては保障内容が十分でない可能性があるため、海外赴任者には特別加入制度が設けられており、任意で加入が可能です。

短期的な海外出張者や現地採用者、留学生は特別加入者になることはできません。しかし、生活の拠点を海外に移しているかどうかなどの実態で判断されるため、海外出張者でも加入できるケースがあります。

なお、特別加入制度を利用する場合、加入を希望する日の30日前までに「特別加入申請書」を管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。

海外駐在員のために企業がすべきこと

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海外駐在は、本人と企業どちらにとっても大きな意味のあることです。しかし、生活の拠点を海外に移すことになるため、本人が希望したことであっても負担は大きいでしょう。そこで、海外駐在員のために企業がすべきことを解説します。

・病気やケガなどの危機管理
・事故や犯罪被害などの危機管理
・海外駐在員やその家族のメンタルケア
・いつでもサポートできる体制の構築

駐在員が安心して業務に励めるよう、事前に把握しておきましょう。

1.病気やケガなどの危機管理

まずは、駐在先での病気やケガに対する危機管理を徹底する必要があります。駐在先にもよりますが、海外は日本と医療レベルや衛生観念が少なからず異なるため、思わぬところで病気にかかったりケガを負ったりしてしまう危険性があるのです。

海外赴任者向けの保険や予防接種などの方法で事前に手を打っておく必要があるといえます。

海外赴任者向け保険

駐在員の万が一の病気やケガに対応するための方法として、海外赴任者向け保険があります。海外旅行用のものをベースとして、海外赴任者向けにアレンジした内容のものがほとんどです。

加入は任意ですが、日本とは環境が異なる海外ではイレギュラーな事態も起こりやすいといえるため、駐在員に対して周知しておく必要があるでしょう。

予防接種

感染症対策として予防接種も重要です。海外では、肝炎や狂犬病、黄熱病など、日本にはないものも含めさまざまな感染症に罹患するリスクがあります。

駐在先の国や地域によって対策すべき感染症の種類や数は大きく異なりますが、いずれにしても事前の対策は必須だといえるでしょう。前もって駐在先の情報を調べ駐在員に共有しておく必要があります。

2.事故や犯罪被害などの危機管理

病気やケガだけでなく、事故や犯罪被害などに対する危機管理も重要です。駐在先が日本ほど治安がよいとは限らず、場合によっては命の危険にさらされてしまうことがあるかもしれません。

駐在先の情報を詳細に調べて駐在員と共有したり駐在先における規定を設けたりと、交通事故や窃盗・テロに加え、天変地異や大気汚染などさまざまな可能性について考慮し対策を練る必要があります。

3.海外駐在員やその家族のメンタルケア

駐在員やその家族に対するメンタルケアも徹底すべきだといえます。海外駐在は、企業や従業員にとってポジティブな意味がある一方で、負担も大きくストレスがかかります。

特に、配偶者や子どもの生活も大きく変えてしまうことになるため、徹底して配慮しなければならないでしょう。業務に関すること以外にも密にコミュニケーションを取るなどのフォローが重要です。

4.いつでもサポートできる体制の構築

上記の内容を含め、駐在員をいつでもサポートできる体制を構築すべきだといえます。従業員やその家族の安全を守る危機管理なども企業の責務として、国内外問わずフォローできる体制を作る必要があるでしょう。

しかし、海外駐在にあたって企業がしなければならない手続きなどは多く複雑なため、必要に応じて外部の専門機関を頼るのも有効だといえます。また、駐在前や駐在中だけでなく、任期満了や緊急時などで帰国した場合の滞在先手配についても考えなければなりません。

前述の通り、海外駐在員は基本的に非居住者となり日本に住所や居所がない状態です。駐在員にとっては、帰国した際に滞在する場所の手配も大きな負担となります。海外駐在が決定してから任期を終えて帰国するまで徹底的にサポートする必要があるのです。

体制を整え海外事業を成功させよう

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海外駐在は、駐在員本人にとっても企業にとってもポジティブな意味があるといえます。しかし、その分、互いの負担も大きいといえるため、駐在員やその家族に対する危機管理やケア、各種手続きなど、前もって徹底的に準備を進めておく必要があるのです。

また、駐在中はもちろん、任期満了や緊急時などで帰国した場合のサポートも必須です。海外駐在員は、基本的に日本に住所や居所がない非居住者となるため、帰国時には滞在先を確保しなければなりません。

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(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2023年4月時点のものです。


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