社宅に消費税はかかる? 課税・非課税になる費用や仕訳処理を解説


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これから社宅制度の導入を検討している担当者にとって「社宅の賃料やその他費用のどこまでが消費税の課税対象となるか」はとても重要な情報です。

社宅制度は企業・従業員双方にとってメリットがあり、知る人の多い制度ではありますが、社宅の費用に係る消費税の範囲まで詳しい方は多くはないでしょう。この消費税がかかる範囲をきちんと理解しておかないと、社宅使用契約書などの書類作成時に、間違った情報を記載してしまう恐れもあります。

今回は、そんな社宅にかかる消費税について、かかる項目や仕訳処理の方法など様々な視点からわかりやすく解説します。社宅契約に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

社宅で消費税が非課税になる費用

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社宅にかかる費用(賃料など)は国が定めた消費税法で非課税取引の対象となっています。そのため、基本的には消費税がかかることはありません。非課税となる社宅に係る費用で、代表的なものは以下となります。

・社宅の賃料
・敷金や礼金
・共益費


それぞれ例外もあるので、詳しく解説していきます。

なお、社宅にかかる消費税が非課税となる消費税法については、国税庁HP「法令解釈通達-第13節 住宅の貸付け関係」をご覧ください。

社宅の賃料

先述した通り、国が定めた消費税法により社宅の賃料は非課税取引の対象となっています。企業が借り上げた賃貸物件を従業員に貸し付ける際に発生する賃料及び、従業員の自己負担分を給与から天引きする場合も非課税となります。どちらの場合も、金額の大小にかかわらず消費税はかからないのがポイントです。

ただし、社宅維持費や仲介手数料は課税対象となるほか、利用期間が1ヶ月未満の場合や旅館業に該当する施設の賃料は課税の対象となります。旅館業に該当する施設(旅館、ホテル、貸別荘、リゾートマンション、ウィークリーマンション等)は、利用期間が1か月以上となった場合でも非課税対象にはならないので注意が必要です。従業員に貸し出す施設が旅館業に該当する場合、消費税が必ずかかることを認識しておきましょう。

敷金や礼金

住宅用建物の賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金または更新料などのうち、返還しないものは非課税となります。また、敷金とセットで発生することも多い礼金も、社宅のように居住用で利用する場合は非課税となります。

ただし、賃貸物件の利用用途が事業用の場合は、礼金が課税対象となるため注意が必要です。住居用として賃貸契約を結ぶ場合は問題ありませんが、覚えておくと良いでしょう。

共益費

国税庁の「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」によると、ほとんどの共益費が非課税の対象です。社宅の管理・保全以外にも入居者が共同で利用するのに必要な費用であれば、名目が「管理費」となっていても非課税となります。

なお、共益費が使われているのは、社宅の共用部分の維持管理に対する費用です。たとえば、共用部分(廊下やエレベーター、階段など)の電気料や水道料、屋上などに設置している浄化槽の保守点検などが共益費から捻出されています。各戸に請求する共益費は、社宅の共用部分の維持管理に掛かる費用の合計額を面積の割合の分だけ負担する形で算出します。そのため、社宅の共用部分の規模や設備内容により維持管理コストは異なるといえるでしょう。戸数の多い住宅(大型マンションや団地など)を扱う企業は、借りた分だけ設備維持にかかるコストも大きくなります。

社宅で消費税が課税される費用

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社宅で消費税が課税される費用は、以下の通りです。自社に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

・仲介手数料
・社宅の管理にかかる費用
・駐車場

それぞれ詳しく解説します。

仲介手数料

不動産業者を挟んで社宅を運営している場合に発生する仲介手数料には消費税が課税されます。仲介手数料は、消費税法に準じて「不動産会社が提供するサービスへの対価」であるため、非課税にすることはできません。不動産業者を挟んで社宅を運営している企業が、仲介手数料にかかる消費税を削減したい場合は、仲介手数料自体をゼロ円にしてもらう必要があります。

ただし、不動産会社にとって仲介手数料は利益の大部分を占める重要なものなので、いきなりゼロ円にしてくれる可能性は低いでしょう。そのため、仲介手数料をゼロ円にしてもらう場合は社宅以外での取引を提案したり、継続的な取引の確約をしたりと交渉材料を用意しておくことをおすすめします。

社宅の管理に係る費用

清掃・修繕・入居者募集の宣伝など、社宅の管理に関係する費用は消費税の課税対象です。たとえば、台風によって社宅の共有部分が損傷してしまった場合、修繕のために施工会社へ支払う費用は社宅の管理にかかる費用と見なされて消費税がかかります。また、社宅入居者を募集するためのポスター・チラシ作成費用など、宣伝にかかるコストも課税対象です。

ただし、清掃・修繕に係る費用を共益費・管理費から捻出する場合は非課税となります。社有社宅の場合は、共益費・管理費で処理することをおすすめします。借り上げの場合は共益費・管理費の利用を不動産会社や大家さんに提案してみるのもよいでしょう。

駐車場

駐車場は一定の条件を満たさない限り、課税の対象となります。集合住宅に付設しており、家賃または共益費として駐車場代金を支払う場合のみ非課税となるので、社宅管理者は自社の社宅が対象となるかチェックしてみてください。これらに該当する住宅の空きスペースがあれば、駐車場として運用し消費税を削減することも可能です。

そのほか、駐車場として定義されていない空き地を借りる場合は非課税となるので、社宅の運用状況に合わせて青空駐車場も検討してみるのも良いでしょう。

社宅ではなく住宅手当を支給している場合の消費税はどうなる?

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企業が社宅を貸し付けるのではなく、住宅の契約締結・家賃支払いを従業員が各自で行い、家賃の一定額を「住宅手当」として支給する場合があります。この場合の住宅手当は、直接的な家賃の支払いではなく、従業員の「給料の一部」として支払っているものであるため、「給料手当」などの「給与に関する勘定科目」で処理されます。給料支払いは消費税法で課税対象外取引とされているため、非課税となります。

消費税算出に重要!社宅にかかる費用の仕訳処理

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消費税には課税・非課税・不課税があります。そのため、消費税を正しく算出するにはそれら3つの科目を正しく分類する必要があります。ここからは、以下のケース別に仕分処理の方法を紹介します。

・社宅の借り上げ料を支払う場合
・家賃を従業員の給与から天引きする場合
・社宅の費用が給与課税される場合

自社のケースと照らし合わせながらチェックしてください。

社宅の借り上げ料を支払う場合

社宅の借り上げ料を支払う場合は、以下のように仕分け処理を行うと良いでしょう。今回は、家賃8万円を支払うケースを想定しています。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
地代家賃 80,000円 現金 80,000円

上記の仕分け処理では地代家賃の税区分は非課税仕入として計算しています。

家賃を従業員の給与から天引きする場合

続いて、家賃を従業員の給与から天引きする場合の仕分け処理方法を紹介します。今回は、家賃負担額4万円を天引きするケースを元に仕分け処理を行います。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
給料手当 295,000円 普通預金 200,000円
預り金(所得税・社会保険料) 55,000円
受取家賃 40,000円

こちらの処理では、受取家賃の税区分は非課税売上で仕訳しています。

社宅の費用が給与課税される場合

最後に、社宅の費用が給与課税される場合の仕分け処理を紹介します。社宅の費用は、賃料相当額の50%以上を徴収していないと給与課税の対象となるので注意が必要です。社宅の費用と課税条件については、こちらの記事「借り上げ社宅の家賃の相場や負担するメリットを解説! 条件設定ポイントも紹介」で詳しく解説しているので参考にしてください。

実際に、給与課税の対象として仕訳処理を行うと、以下のような結果となります。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
給料手当 335,000円 普通預金 200,000円
預り金(所得税・社会保険料) 55,000円
受取家賃(※1) 10,000円
受取家賃(※2) 70,000円

税区分の仕訳処理は、(※1)の従業員から徴収した金額は非課税売上、(※2)の会社が負担した分は不課税売上として処理します。

社宅の消費税は費用の種類で正しく分類しよう

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社宅の消費税は費用ごとに正しく分類して仕訳処理を行う必要があります。今回の記事では、網羅的に課税・非課税対象の仕訳処理について解説しています。社宅の管理を担当している方は、消費税になる費用の見極めや仕訳処理の参考にしてみてください。

社宅の消費税について考える上で注意したいのは、社宅に関わる費用は物件ごとに集計する必要があり、件数が多いと支払い業務が煩雑になることです。少人数で社宅制度を管理していたり、社宅制度を導入して間もなかったりすると、思わぬトラブルが起きた時に正しく対処できないことも考えられます。また、社宅は経年劣化していくものなので、修繕にかかる費用も増えてくるとその分消費税も多くかかってしまいます。どこまでを共益費や管理費に含めて良いのか、迷う場面も多くなるでしょう。ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

なお、マイナビBizでは、社宅業務に携わる担当者の業務負担を軽減するサービスを提供しています。たとえば、支払い業務を一本化して煩雑な業務の負担を軽減したり、物件や入居者の管理など社宅業務全般を請け負うサービスも提供したりしているため、社宅に関するあらゆる課題を抜本的に解決できます。社宅に関する業務負荷の増大にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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