住宅手当とは? 代表的な種類と導入するメリット・デメリットを紹介


thumbnail

この記事は6分で読めます

住宅手当は、企業が従業員に対して提供する福利厚生制度の一つです。
住宅手当の導入は、従業員の満足度向上につながるほか、新卒・中途採用においても重要なPR要素となります。

しかし、導入にあたっては企業の金銭的な負担や支給基準の検討など様々な課題を抱えていることも事実です。

今回は、そんな住宅手当の基礎情報や導入するにあたってのメリット・デメリットに加え、住宅手当の相場や導入検討企業が注意すべき点も紹介します。

住宅手当の概要をわかりやすく解説

 (2567)

そもそも住宅手当とは何なのか、他の住宅を支援する福利厚生は何があるのかについて解説していきます。

住宅手当とは?

住宅手当とは、企業が従業員に提供する福利厚生の一環で、家賃や住宅ローンなど主に住居にかかる費用の一部を補助をする制度のことです。
住宅手当は福利厚生の中でも法定外福利厚生(法律で定められていない、各企業独自の判断で提供する福利厚生)の一種に分類されるため、企業ごとに導入状況は異なります。

また、住宅手当は法定外福利厚生のため、導入に際して規程や条件の法的制限がありません。
そのため、企業にとって比較的取り入れやすく、条件面などのアレンジもしやすい福利厚生と言えるでしょう。

企業が住宅手当を導入する目的は様々ですが、大きな理由として従業員の生活にかかる金銭的な負担を軽減し、従業員満足度の向上を図ることが挙げられます。
特に、社会に出て間もない若い従業員や子育て世代の従業員からは、賃金と同じく現金支給される住宅手当は、非常に喜ばれる制度です。

社宅制度との違い

住宅手当と混同されがちな社宅制度ですが、大きな違いがあります。

社宅制度とは、「会社が用意した住まいを従業員に提供する制度」を指すため、賃金のように現金支給はありません。
また、社宅は従業員が滞りなく働くために必要な費用になるので、経費として計上することができるため節税対策としても導入する企業が多い制度です。

社宅制度には「企業が社員から受け取っている家賃が賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されない」ことが定められているため、従業員も税金面で優遇されます。
節税という観点では、住宅手当よりも社宅制度の方が企業・従業員双方にメリットが生まれることもあるので、導入の際は比較検討が必須となるでしょう。

住宅手当の相場は?

各企業ごとに支給金額が異なる住宅手当ですが、その相場はおおよそ17,000円前後となっています。
実際は、支給金額は企業規模によって2,000円〜3,000円ほど前後することも珍しくありません。
企業規模が大きくなるほど支給金額も大きくなっていく傾向もみられます。

参考:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」

住宅手当の支給条件

 (2576)

住宅手当を導入している企業の多くは、無条件ではなく支給にあたって条件を設けています。

多くの企業は、以下のように「会社と居住地の距離」をもとに条件を設定しているので、参考にしてください。

・会社から近い距離での居住(〇〇km、◯駅以内など)
・会社から近い距離に引っ越す際の引越し代金を補助
・会社から近い距離に住居を購入した場合にローンの◯%を補助

条件は「会社から15km以内」「会社最寄駅から2駅周辺居住に限る」など、現実的な数字にすることをおすすめします。
住宅手当の支給条件を設定する際は、従業員の働きやすさも重視しましょう。

住宅手当を支給するメリット

 (2579)

住宅手当を導入することにより従業員の生活が安定し、経済的・心理的にも負担を軽減できるだけでなく、会社への満足度が高まることによって業務の質も向上する効果も期待できます。他にも住宅手当を支給することによるメリットは以下のようなものがあるでしょう。
・企業イメージの向上
・人材の定着
・福利厚生の一つとしてアピール可能

それぞれ詳しく解説します。

企業イメージの向上

住宅手当を支給するメリットは、企業イメージの向上に結びつく点が挙げられます。

住宅手当は賃金と同じく現金で支給されるため、従業員の満足度が上がりやすい福利厚生です。業務に向かうモチベーションの向上にも結びつくため、業績アップの一助になるだけでなく、ポジティブな企業ブランディングにも繋がります。

また、住宅手当を支給しているという事実は従業員以外の求職者やユーザーにも「従業員を大切にしている会社」というイメージを持ってもらうきっかけにもなります。

中長期的な企業イメージの向上に課題を抱えている担当者の方は、住宅手当の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

人材の定着

住宅手当を支給するメリットの一つに、人材の定着を促す効果が挙げられます。

とくに、比較的賃金の低い、若い従業員や、子育て世代の従業員にとって、住宅手当は大きな生活の支えになります。
また、支給条件や金額を企業が決定できるため、競合他社との差別化も測りやすいのがポイントです。

会社が定める支給条件次第では、マネジメント層や会社のキーパーソンに対しても住宅手当の支給が可能なため、人材流出の防止にも役立ちます。
離職率に悩む企業にとっても検討すべき施策といえるでしょう。

福利厚生の一つとしてアピール可能

住宅手当は、福利厚生の一つとしてアピール可能なことも大きなメリットです。

特に、新卒採用・中途採用に取り組んでいる企業は福利厚生の一つとして住宅手当をアピールすると、競合企業との差別化が図れます。
リファラル採用など、従業員に人材紹介を依頼するケースでも、給与以外の支給はわかりやすくアピール可能な、福利厚生です。
遠方から親元を離れて就職することを考えている方にも興味を持ってもらえるので、より良い人材を獲得する施策として活用する企業も多くあります。

住宅手当を支給するデメリット

 (2588)

続いて、住宅手当を支給するデメリットを紹介します。

・企業の負担が大きい
・社員の不満につながる可能性もある
・一度導入すると廃止が難しい

それぞれ詳しく解説します。

企業の負担が大きい

住宅手当は、企業の負担が大きいことがデメリットです。
導入こそ簡単な住宅手当ですが、給与と同じ扱いとなるため、課税対象となり法人税や社会保険料の負担額が増えてしまいます。

法定外福利厚生の構成費でも約50%を占めるなど、企業の大きな負担となっていることが伺えます。
住宅手当を導入する際は、課税額が上がることも踏まえた検討が必須となるでしょう。

社員の不満につながる可能性もある

住宅手当を支給するデメリットの一つに、社員の不満につながる可能性が挙げられます。

住宅手当は法定外福利厚生のため、支給条件や支給額の内容は企業が自由に決定できます。
しかし、きちんと従業員が納得する条件を整えていないと「なぜ〇〇さんには住宅手当が支給されているのに、私は支給されないんだ」「〇〇さんと私で支給額が違うのはおかしい」など、不満が発生する可能性もあります。

また、一般的と考えられる支給条件を設定しても、社会の状況が変われば問題が発生する懸念はあるでしょう。
コロナ禍や働き方改革を経て、企業が集中する都市部から離れたり遠方からリモート勤務をする社員も増えているため、制定当初は予想していなかった住宅手当への不満が生まれることも考えられるでしょう。

住宅手当を支給する際は、従業員から不満が溢れないような条件を設定するのはもちろんのこと、導入の是非についてもよく検討する必要があります。

一度導入すると廃止が難しい

住宅手当を支給する際のデメリットとして、一度導入すると廃止が難しい制度であることが挙げられます。

住宅手当は、若手社員や子育て世代の社員にとって現金支給の福利厚生としてとても喜ばれますが、反面、一部の社員からの不満を受けるなどして支給を廃止すれば、それまで住宅手当の恩恵にあずかっていた社員からは不満の声が挙がる可能性もあります。

住宅手当を導入する際は従業員にアンケートを取る、競合他社の事例を参考にするなど、徹底した事前準備が欠かせません。
これから住宅手当の導入を検討している方は、一度導入すると廃止が難しい福利厚生制度であることをしっかり認識しておきましょう。

住宅手当は減っている!?

 (2597)

これまで、企業が取り入れやすい福利厚生制度として注目されていた住宅手当ですが、昨今の働き方改革やコロナ禍を経て支給する企業は減少傾向にあります。

学習院大学名誉教授の今野浩一郎氏が発表した論文「労働者の居住地選択をめぐる人事施策とその人事管理への影響」によると、2021年に住宅手当を提供した従業員規模 1,000 人以上の大手企業の割合は、2002年のほぼ半分の水準となっています。

一方、企業都合による転勤や遠方でのリモートワーク対象者支援のために、社宅制度を利用する企業の割合は今後も変わらないと予想されています。

今後福利厚生制度を整える予定がある担当者の方は、住宅手当の導入が従業員満足度向上につながるか、今一度考える必要があるでしょう。

住宅手当を導入する前に社宅制度も検討しよう

 (2600)

住宅手当は導入が簡単で社員満足度が向上するケースも多くみられますが、その分企業の負担が増えたり一度導入したら廃止するのが難しいなど、多くのデメリットも抱えています。

特に、住宅手当の導入により課税金額が増えるため、企業の負担が重くなることは見逃せません。

住宅手当を検討する際は、節税効果の大きい社宅制度を検討するのも一つの手です。
転勤者や働き方改革によるリモートワーカーを支援できる社宅制度は、今後も利用し続ける企業が多い制度です。

ただし、社宅制度は建物や居住者の管理など総務・人事担当者の負担が増えることや、空室の賃料負担・解約時の違約金などを管理しなくてはならないデメリットもあります。

マイナビBizでは社宅探しから入居サポート・アフターサービスまで一括対応が可能です。
各企業担当者のニーズに合わせ、最適なプランをご提案いたしますので、住宅手当と社宅制度のどちらにするかお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2022年12月時点のものです。

マイナビBizに相談する


その他のおすすめ記事

マイナビBizが選ばれる理由
詳細はこちら