<23新卒>学生が内定辞退する理由 ~データから読み解く、いま企業がやるべき内定者フォローとは~


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目次
  1. 学生が内定辞退・内々定辞退をする理由とは?
  2. 学生と企業、ギャップはこんなところにあった
  3. 今、内定者に対して企業がするべきことは?
  4. 10〜12月に行うべき、内定者との関係構築のためのコミュニケーション
  5. 不安は心では解決しない。経済的な不安・生活面での不安もある
  6. コミュニケーション機会を増やす&入社したい理由を増やしていくのがポイント

2020年からのコロナ禍の就職活動では、思い通りに対面でのコミュニケーションが取れないなか、内定者が不安に感じることは少なくありませんでした。コロナ禍が日常となったいま、内定者の心はどのように揺れ動いているのでしょうか。
企業は内定辞退を防ぎたい。しかしどうすれば? マイナビのアンケートをもとに、企業がすべき学生へのアプローチについて考察しました。

学生が内定辞退・内々定辞退をする理由とは?

学生の間で内々定辞退、または内々定の承諾を保留する事態が増えています。2020年からの就職活動で、当初は「他の内々定者と会う機会がない」「保留の態度を取ると、内々定の取り消しがあるかもしれない」といった、対面がままならないコロナ禍ならではの不安を感じる学生も多かったものの、コロナ禍が日常となった2022年も内々定辞退や保留の数は増え続けています。

内々定辞退割合、内々定承諾を保留する割合が、ともに前年より増加

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内々定を辞退する具体的な割合を聞いたところ、5〜10割と答えた学生が年々増加傾向にあります。同様に内々定承諾を保留する割合も、増加の一途をたどっています。これは複数の内々定を持つ学生が増えたことを背景に、企業側は学生から入社予定先として選ばれるかどうかで、多くの企業がフラれる状況に陥ったからだと思われます。

不安の理由、「コロナ禍の影響」は徐々に減少

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コロナ禍が日常になるにつれ、学生に「入社予定先企業を決めた後、不安になった理由」を尋ねると、「社会人としてやっていけるのか」がもっとも多く、その割合は年々増えていました。学生が抱える不安の1つは社会人としての自分の準備状況にあったのです。

学生と企業、ギャップはこんなところにあった

なぜ学生と企業のミスマッチが起こってしまうのでしょうか。その理由は学生が企業に求めていること、企業が学生に求めていることに大きな隔たりがあるからでした。

【企業が考える「内定フォローを通じてどうなってほしいか」】

●学生自身のこと
・社会人に意識をしっかり持ってほしい。不安を解消するまで学生の方から質問してほしい
・学生気分をなくして、社会人として仕事をする覚悟を持ってほしい
●企業に対すること
・企業の目指すビジョンや目標を知って、自分がどのように関わっていけるかを感じてほしい
・実際に働いてみないとわからない部分は、働いている先輩社員と対話をして、自ら聞き出してほしい
・企業理解を深めて、確実に「入社したい」と思ってもらいたい
●仕事に対すること
・日々の業務をイメージして、入社までに自分で足りないと思ったことをキャッチアップしてほしい

企業が求めているのは、まず学生にステップアップして会社に入ってきてほしいという思いです。そして企業のビジョンを知り、社会人への覚悟を持ってほしいということでした。欲しい情報は自分で掴んで欲しい。かなり学生への要求が高いことが伺えます。

一方で、学生の場合はどうでしょうか。

【学生が考える「内定者フォローを通じてどうなりたいのか」】

●自分自身のこと
・ここで働きたいと再確認できる状況にしてほしい
●企業に対すること
・まだ対面で社員の方とお会いしていないので、実際に働く環境を自分の目で見てから入社後のイメージを掴みたい
・キャリアプランや配属についての不安をなくしてから入社したい
・その企業が学生に嘘の情報を伝えたり、都合の悪いことを隠したりしていないと、信じたい
●仕事に関すること
・自分がどのような仕事をする可能性があるのか。そしてその仕事にやりがいを持って取り組めそうか、しっかり判断したい
・4月入社までに、配属される部署や具体的な仕事内容について知りたい

まず、その企業は自分が成長できる環境なのか。そして最終的に自分がきちんと1社に決められるように、会社の側が自分に自信や覚悟を持たせてほしいと思っているようです。どこか疑心暗鬼で、どこか過保護を求める様相も伺えます。

企業側は飽くまでも会社が主体で、学生を「会社に参加する人」と見ています。一方、学生は自らが主体で、企業の側が自分に対して「入っても大丈夫な会社なのか、丁寧にアプローチしてほしい」と心の中で思っているのです。

今、内定者に対して企業がするべきことは?

すでに企業に入社している人は、自社のよいところを知っています。しかし学生は「この企業は学生に嘘の情報を伝えたり、都合が悪いことを隠したりしていないか」と、内々定が出たとしても疑念が晴れてはいません。

企業側は、面接を通じて学生が会社を理解してくれていると思いがちです。しかし基本的に学生は、内々定後も企業に対して納得しているわけではないのです。むしろ企業に対して、とてもドライに考えているのです。

自社の理解度を深めるナマの情報提供と、期待感の提示が不可欠!

学生に対して必要な企業のアプローチは、まず自社への理解度を高め、納得させられるだけのコミュニケーションです。

その際、必要なのは、自社のよさだけでなく、弱みや現在抱えている課題も正直に伝えられるかどうか。すでに面接をくぐり抜け、企業のHPもくまなく見ている学生たちです。欲しているのは、表に出ている情報ではなく、より生っぽい情報なのです。

そのうえで内々定者に対して、企業からの期待感を率直に示して、具体的な目標を示す。キャリアプランをどのように考えているのか、またどのような配属ルートがあるのか。そして、怖がりで不安な学生たちの心の困り感を取り除けるか。そのためには、企業からの定期的な接触が必要なのです。

10〜12月に行うべき、内定者との関係構築のためのコミュニケーション

それでは、企業は内定者とのコミュニケーションをどのように取ればいいのでしょうか。下のアンケートは内々定者に対して行ったものですが、オンラインツールが発達したコロナ禍でも、学生たちはできるだけ対面でのコミュニケーションを求めています。

対面での内々定フォロー実施を望む声が増加

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具体的に「内定式」「内定者懇親会」「職場見学」に関しては、23年卒の対面希望の数字が大きく増加 しました。

「内定式」の対面希望は22年卒が45.2%だったのに対し、23年卒は57.4%と大きく飛躍しています。また「内定者懇親会(食事会等)」の対面希望は22年卒が41.0%のところ、23年卒は55.3%と14%もアップ。そして「社内見学・工場見学・施設見学」の対面希望は22年卒が61.6%のところ、23年卒は71.3%と約10%も増えています。

デジタルネイティブの学生たちだけに、対面で伝わる情報とそうでない情報がはっきり区分けできているのかもしれません。同期はどんな人たちなのか、実際の職場はどのような環境なのか、内定式は昔ながらなのか、時代に合わせてひと工夫しているのか。それらは生でしか味わえない情報です。一方、「人事との面談」については、対面希望もWEB希望もそれぞれ微増していました。

実際に企業側が内定者辞退対策として、実施して効果があったと感じたことと、その実施予定は下記のようなアンケート結果が出ました。

企業側が効果を実感している内定者フォローは?

22年卒、23年卒のいずれも実施して効果があったと企業が感じたのは、内定者懇親会でした。23年卒に至っては、60.9%の企業が食事会を含む内定者懇親会に意義を感じています。新型コロナウイルスの感染状況によって、実施を予定してもままならない事態も起きますが、内定者同士の交流の機会を設けることで内定辞退を防げると実感している企業が多いようです。万が一感染状況が悪化したとしても、学生たちも望む内定者懇談会は、WEB開催に切り替えるなどして、何らかの形で実施をしたほうがよいでしょう。

とはいえ、対面での内定者懇親会を行ったからといって、企業は安心してはいけません。先にも述べたように、企業と学生の間では相手に求めていることに大きなギャップがあります。その隔たりを埋めるためには、「人(社員)」を介した様々な形のアプローチが必要です。

入社のきっかけは「人」~学生は就活中に出会ったさまざまな社員の影響を受けている~

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上記のアンケートでは、入社半年後に「勤務先満足度」が高い新入社員は、「就活中に入社を決めた理由になった人がいた割合が高い」という結果が出ました。具体的には満足度5は文系で79.8%の新入社員が、そして理系で66.9%の新入社員が就活中に入社を決めた人に出会っていることがわかりました。

また「就活中に入社を決めた理由になった人の立場」を聞いてみると、「面接官(WEB)」と答えた満足度5の新入社員は、文系で16.7%、理系で11.6%もいました。その他「インターンシップに参加していた社員」と答えた満足度5の新入社員は、文系で10.7%、理系で14.9%。また「OB・OG訪問で会った社員」と答えた満足度5の新入社員は、文系で11.9%、理系で12.4%もいました。

情報不足とミスマッチを避けたい「リスク回避」が得意なZ世代。「多様性」もキーワードに

満足度の高い新入社員は、インターンシップや面接で会った様々な社員に影響を受けていたことがわかります。例えば下記のようなものです。

・面接で逆質問する際、「ウチの会社は隠すことが何もないので、何でも聞いてください!」と言われたのがかなり衝撃的で、信頼して働くことができそうだと感じた

・入社を決める際に面接のフィードバックをいただいた。私のエピソードに対して、お褒めの言葉や人柄に対して、たくさんの良い言葉をかけていただき、入社してほしいという気持ちがとても伝わった

よって人事担当者からの定期的な連絡はもとより、先輩社員との交流やざっくばらんな座談会の実施が非常に大事になってきます。その際聞きたいことは「具体的な仕事内容」以外に、聞きづらい「年収」「残業や休日出勤の実情」。内定者は本音の部分が知りたいのです。

体験入社・インターンに効果あり、同期との交流が心の支えに

体験会や体験入社、インターンなどを実施する企業は、学生自身が直接体感する機会をできるだけ持てるようにしたほうがよいでしょう。また現場と経営層の意識にズレがないか、経営陣からの明確なメッセージやちょっとした交流も必要です。そして内定者の心の安全を担保するために、同期同士の交流を密にすること。コロナ禍であるからこそ、同期交流が内定者の心の支えになります。

そのほか企業と学生の間で定期的な面談を行い、意識をすり合わせることも大切です。そこで重要なのは、どれだけ忌憚のない意見交換ができるかです。その精度如何で、入社後のミスマッチによる退職を防げるかが決まってきます。

さらに特別なケアが必要なのは、上京する地方出身者や長距離転居予定の内定者です。新天地の土地勘がないため、「社会人として通用するだろうか」という心の不安だけでなく、生活そのものへの漠然とした不安感を抱えています。ネットでは得られない実は住みやすいエリア情報や、地方出身の先輩社員の生の声を直接届けると、より内定者たちは安心するでしょう。

不安は心では解決しない。経済的な不安・生活面での不安もある

Z世代の学生の特徴に、就職に関する意思決定に親が絡んでくるというものがあります。

意思決定に6割が親の助言を聞く~親の納得度も重要に~

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「意思決定を行う際に助言をもらった人」を問うと、学校内の友人が29.1%であるのに対し、父親・母親が64.1%と圧倒的でした。学生自身の意思だけでなく、入社予定先に関して両親も納得しているかも重要な要素となっているのです。

またブラックな環境下で働くことは社会問題であり、休暇や企業から与えられる手当を上手に使いながら、継続的に働ける環境かどうかも学生からチェックされています。

あったらうれしい「福利厚生」は休暇、手当、学習の機会

あったらうれしい福利厚生は、以前は高かった「社員旅行などのレクリエーション」や「保養所」などが鳴りを潜め、学生の81.0%が「休暇制度」、78.7%が住宅手当などの「諸手当」を求めています。ライフワークバランスに直結する項目や、生活費の負担軽減となる項目に注目が集まりやすく、一方で「自己啓発」も半数を超えているのがZ世代らしさを見せています。

また少子化の日本において、企業が育児休業をどのように考えているかも厳しく見られています。

「育児休業をとって積極的に子育てしたい」の男女差は1割未満に

育児・介護休業法の改正により、「男性育休」が2022年4月から段階的に施行されることになりました。Z世代は男性の育児参加を特別と感じていないようで、「男子の『育児休業を取って積極的に子育てしたい』理由の推移」では、「育児休業を取るのは当然の権利だと思うから」が「子供が小さいうちはできるだけそばにいてあげたいから」の意識を約5%ほど上回りました。また「『育児休業を取って積極的に子育てしたい』の割合推移」でも、男子が59.9%、女子が68.0%と、回答割合の男女差が一気に縮まっているのがわかります。特に男子の場合、20年卒では43.6%と過半数を割っていたにもかかわらず、23年卒では59.9%と6割に迫る勢いです。この数年で「男性育休」の意識が一気に根付いてきました。

プライベートを犠牲にして働く時代ではない。このようなZ世代の意識により、ライフワークバランスが保て、就職した後の長期的な生活イメージが描ける説明も、企業側は丁寧に行う必要があるでしょう。

コミュニケーション機会を増やす&入社したい理由を増やしていくのがポイント

企業が思っているよりも、内定者は就職先の判断をかなり迷っているものです。情報が多い社会ゆえ、比較できる企業情報はいつも傍らに横たわっています。商品を物色しているときに、買うべき理由を的確に伝えてくれる店員さんに出会うと、思わず商品を購入してしまうように、内定者の側も自分が入社してもよいと思える理由を納得のできる先輩社員から伝えてほしいのです。

企業と内定者とのコミュニケーション機会を数多く持ち、内定者の心に直接コミットする。それと同時に、男子育休や休暇、手当は時代の流れに沿って充分であるか。内定辞退は企業にとって悔しい一面ではありますが、世間からそのように見えているという表れでもあります。人事担当者が10月からやるべきアプローチを、今一度見直してみませんか?

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【内定者フォローの企業事例】

ここ数年の学生の傾向として顕著なのが
・信頼できると感じるかが重要
・リスクはあらかじめ回避する・多様性を重んじる
正直で柔軟であり、不安を感じやすいZ世代の傾向と重なる部分も多々あります。

学生の不安を解消し、企業への信頼感を高めるポイントは
・企業の良さ・課題も含めた<イマ>の情報を発信する
・内定者の不安を解消する
・効きにくいこと(待遇・手当・将来設計)は企業側から伝える
・地方出身者の生活・住居への不安を早めに取り除き、上京後の生活のイメージをつける
・本人だけでなく親御さんの安心・納得を促す

環境の変化をとくに不安視する学生の気持ちをよく理解し、内定者フォロー方法を工夫している一例を紹介します。

株式会社SHINKO
(人財開発推進室 副室長・佐々木俊行さん)

「新入社員研修は3か月弱の住まいですが、研修中の生活環境は重要」と語る佐々木さんは、地方から内定者を送り出した親御さまに心配させないようマイナビBizを選んだと言います。その理由は、騒音や設備トラブルなどがないこと、立地のよさ、そして清潔感。研修時の住まいのよさが、地方の親御さまへの企業アピールにつながったと振り返ります。
「マイナビBizはインターネットの速度も速く、オンライン研修においても支障が全くありませんでした」「親御さまから『こんなきれいなマンションに住めるんですか? 心配しなくてよかったです』と言っていただけたのはうれしかったですね」。

地方出身者の住居の準備も、企業は怠るべきではありません。マイナビBizでは、入社前に行われる長期滞在の研修も難なく行えるのが特徴です。

親御さまに安心してもらえる要素は、インターンシップなどの直接企業体験や対面での内定者懇親会だけではありません。我が子が知らない土地で温かく迎えてもらえているのか。この企業は学生たちをどのような環境で預かるつもりなのか。こういった家族の不安を解消する丁寧な準備・アプローチが、企業の信用に関わる重要なファクターになり得るのです
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