Z世代、入社1年未満で早期離職のナゾ!?~辞めない新人の育て方とは~
Z世代※1の新入社員の早期離職は企業にとって深刻な問題です。せっかく育てても、配属して間もないうちに退職されてしまっては、直接的なコストだけではなく、採用や育成に関わった社員や現場の士気が下がる、将来を担う人材が育たないなど、大きなダメージがあります。新卒媒体や大学への求人では離職率や定着率の開示が求められますが、早期離職が多いと「ブラック企業なのでは?」というイメージがつき、学生の志望者数にも影響しかねません。
新入社員のエンゲージメントを高め、長く働いてもらうためには、どういった施策が必要なのでしょうか。マイナビが実施した調査データをもとに考察します。
※1)Z世代は、1990年代後半〜2000年代初頭に生まれ。幼少期からインターネットが当たり前にあり、デジタル機器が身近な環境で育っている世代を指す。
”働きがい”がない新入社員の3割が「1年未満」で退職
2022年6月、マイナビが実施した新入社員対象の調査※2によると、今の会社を「3年以内に退職予定」としている人はおよそ3割、「10年以内」では半数という結果が出ており、ここ数年大きな変化はありません。
ところが、”働きがい”のある・なしのグループ別で調査すると、「ない」人の約3割が「1年未満」、全体では過半数が「3年以内」に退職を考えており、”働きがい”と早期離職の間には強い相関関係があることがわかりました。
退職を考えている人に離職理由を聞いたところ、男性は「キャリアアップしていきたい」「いろいろな会社で経験を積みたい」など、成長やステップアップに関する理由が目立ちます。対して女性は、「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最も高い結果に。結婚や出産をしても働き続ける女性が多くなり、ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるかどうかが、勤続年数を延ばす鍵になるかもしれません。
次に「会社・組織の一員であると意識するか」という問いでは、全体の7割近くが「意識している」と回答しており、特にフルリモート勤務の人の帰属意識は前年よりもスコアが伸びています。学生時代にオンライン授業を経験した新人には慣れがあり、対面でなくても比較的違和感が少ない傾向にあるのではないかと考えられます。さらに帰属意識に関係が深い職場環境や対人についての不安や悩みを尋ねると「苦手な人がいる」「同世代が少ない」が上位にあり、フルリモートの人については「コミュニケーションがしにくい」「相談できる先輩や上司がいない」があげられました。
これについても”働きがい”が「ない」と回答したグループでは、このほかに「社風が合わない」「孤独を感じる」などもほぼ同率であり、人間関係により深刻な問題を感じているようです。リモート・出社を問わず、新人のモチベーションがさがらないように気を配り、孤立させないことが、大事なポイントです。
理想と現実のギャップにストレスを感じやすい
また、入社後に理想と現実のギャップを感じる点についてきいたところ、労働時間や報酬などの定量的な違いよりも顕著だったのが、職場での自分の仕事の成果や評価が想像と違っていた場合です。アンケート結果によると、最も理想と現実のギャップを感じる項目は「人(顧客や同僚)の役に立てたと感じる」で、次に「自分の成長を感じる」「自身の働きに見合う評価が得られている」と続きます。
能力不足や職種の適性との不一致から与えられた業務で結果が出なかったり、スキルアップできる業務内容ではなかったり、同時に上司や先輩から放置されていると感じた時などに「こんなはずではなかった」と思い、理想と現実のギャップに「働きがいがない」と感じるようです。
先輩や管理職世代が「新人なのだから当然」と思うようなストレスでも「打たれ弱い」とされるZ世代は耐性が低く我慢が苦手。彼らのモチベーションを引き上げるには、成果物に対してのフィードバックを丁寧に行う、「役に立てた」「成長できた」と感じられる声掛けを心がけるなど、上司によるアシストを検討する必要があるでしょう。
テレワーク可否は関係ある?ない?
2020年春から急速に進んだテレワークの影響はどうでしょうか。今年の調査では、テレワークを実施していない人の、2人に1人が「働けるならテレワークがいい」と回答しています。テレワークを実施している人で、「テレワークが廃止されても働き続ける」は約半数にとどまりました。現在テレワークを実施していない人に対して、テレワークができる環境で働きたいと思うかを聞いたところ、「働けるならテレワークがいい(50.0%)」「思わない(43.7%)」と分かれています。
22年度の新入社員は大学3年生の4月に全国的な緊急事態宣言を経験した世代。大学の授業や、就活の面接などでオンラインを経験し、入社時点ですでに「オンライン慣れ」しているため、コロナ禍での働き方の一つの判断基準として、就職先を選んだと考えられます。「テレワークを廃止しても働き続ける」新入社員が半数にとどまったのも、その現れとみられます。
ただし、業種や職種によってはリモートではなかなか習得できないノウハウも多々あり、教育面での必要性も出てくるでしょう。対面で交流する機会が少ないことでチームとしてうまく関係構築ができないケースもあるかもしれません。彼らは「出社ありき」の感覚は薄く、フル出社に戻す場合も「以前そうしていたから」という理由だけではなく、出社勤務の利点を丁寧に説明し、理解を得ることが勤続意向に関わってくる可能性があります。
※2) マイナビ転職が2022年4月に入社した新入社員(正社員)に実施したWEB調査
【調査概要】マイナビ転職 『新入社員の意識調査』 調査期間:2022年6月17日(金)~6月20日(月)
調査方法:2022年卒の新入社員を対象にWEB調査を実施/有効回答数:800名(内訳:22歳~23歳の男性400名、女性400名)
※グラフの内訳は端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
“働きがい” がある職場とは?
Z世代の早期離職を防ぎ、勤続率をアップするために有効なキーワード“働きがい”ですが、彼らはどんな時に”働きがい”を感じるのでしょうか。
“働きがい” は周囲のケア次第
職場で “働きがい”を感じていると答えたグループに上司や先輩との関係性を問うと、「話しかけてもらった」「OJT」「ランチ・食事に誘ってくれる」などを経験しています。また職場でのやりとりでも、「1日1回は声に出してコミュニケーションをとる」「ありがとうと言う」「上司に報告相談しながら進める」などコミュニケーションが頻繁に取られていることがわかっています。人間関係が良好な職場では、周囲への期待値も高くなり、帰属感が高まると考えられます。
Z世代のモチベーションは昇給や昇進よりもむしろ精神的な充実度が重要。
「自身の成長を感じる」「誰かの役に立てたと感じる」「褒められる」などの機会があると“働きがい”を実感するという結果が出ています。特に“働きがい”を感じている人の4割が「自分の成長を感じる」と答えているのに対し、ない人ではわずか5%。この職場にいればスキルアップできる、成長できると感じる業務内容であることなど、育成面でのサポートが新人のやる気を左右していることがわかります。若手にとっての理想の職場とは、チームの一員として評価され、人間関係が円滑な職場だということに総括されるでしょう。
“働きがい” と社風理解の深い関係
社風=企業のビジョンや存在意義を研修で共有
SNSネイティブであり、広く情報を集める手段に長けたZ世代は、世界情勢や環境など社会課題にも関心が高い世代と言われています。そうした若者にとっての“働きがい”のもう一つの側面は社会貢献度です。SDGsなど企業の社会責任を問われることが多い昨今、自社の社会貢献後イコール自分の社会貢献度につながることから、所属している組織のビジョンを認識しているかどうかも、継続勤務の一因になると考えられます。
そのためにはまず、所属している会社がどういうビジネスモデルで業績を上げ、それがどういうビジョンに基づくかを理解することです。そうした自社理解が進めば、会社全体の大きな目標を、目の前の業務にブレークダウンすることで、自らの社会貢献度が考察でき「人の役に立っている」という“働きがい”の実感にむすびついていきます。
新人時代に自社の社風(ビジョン、経営理念)を理解することと、使命感をもって業務に向かえるようになることの相関はそこにあります。
新人教育ではビジョナリーなリードを心がける
指導する上司や先輩が、常に自らの価値観を企業のビジョンに照らし、一貫した方針でリードすることも、新人との信頼関係構築には大切なことです。その上で、率先して若手が話しやすい雰囲気をつくり、声掛けの工夫をすることで風通しの良い職場環境を醸成すること。新人でも意見が言える、組織の一翼を担っているという意識がもてる安心安全な人間関係なくして“働きがい”は生まれません。
最近ではGPTW※3など、労働者目線の価値基準が話題にのぼりますが、新人に限らず、働き方改革により、企業を評価する指標は変化しています。特に女性を中心に、転職市場での企業の評価指針は報酬やブランド力に加えて、D&Iや人的投資、ハラスメントがなく自由に意見が言える安全安心な職場環境など、社員満足度に即した項目が重要度を増していることは明らかです。
※3)Great Place to Workの略称。働きがいに関する調査の結果が一定水準を超えた企業を「働きがい認定企業」、さらにその上位企業を「働きがいのある会社」ランキングとして発表している。日本でも500社以上が参加
“働きがい” 育成は入社前から始める
社風理解の第一歩は、入社志望者に対するプレゼンテーションから
そもそも入社後のミスマッチを未然に防ぐ努力が、早期離職低減の第一歩。応募してくる学生に自社のビジネスモデルやビジョンを十分理解してもらい、納得してから入社してもらう必要があります。ビジネスモデルを理解していなければ、自分がそこで働くイメージがもてず、モチベーションももてないと言うことも起こりかねません。企業と学生のマッチングとは、そうした理解の上で初めて成り立つものだと言えます。
同様に企業が業績を訴求する場合も、シェアNO1ということだけではなく、どういった沿革があり、どうやって達成したのか、企業の強みを分解して解説する必要があります。
就活に関する調査で、入社半年後に満足度が高い新入社員は、入社の決め手になった人がいる割合が高く、インターンシップや、面接などで出合った社員の影響を受けていることがわかっています。学生は就職活動で出合った人を通して企業理解を深めるため、採用担当以外の社員にも広く協力を求め、先輩の体験談のヒアリング、インターンシップなどを通して、入社前になるべく多くの社員と交流してもらうことが、入社後の勤務継続に益する大きなファクターだと言えるでしょう。
※3)マイナビ調べ・2021年卒 入社半年後調査(2021年10月~11月)
勤務先満足度別 「入社を決めた理由になった人」がいた割合・その立場
配属ガチャと言われない辞令とは?
晴れて入社した後、新人にとっても企業にとっても最初の関門が配属です。配属先の決め方についての調査では「勤務地・職種ともに自分で適性を判断して、選びたい」が全体の5割以上というデータもあります。従来、新人の配属先は会社が決めることが多いものですが、一方的な辞令はコントロールされることを嫌い、自分の意思で物事を決めたいと考えるZ世代にとっては理不尽な状況と感じられ「配属ガチャ」と呼ぶ不安原因になっています。人事担当者や上司は新人に対して「志望通りではなくても成長できる」「適性にマッチしている」と納得するまで丁寧に説明することでモチベーションを保てれば、早急な離職を避けることができるのではないでしょうか。
こうしたプロセスを経て入社した新入社員が、現場でさらに自社の社風やビジネスへの理解を深め、帰属意識を持てれば、社員個人のキャリアパスと働き方を、自社事業としっかり連関させて考えることができるようになるでしょう。
厳しい職場で鍛えられてキャリアを積み上げてきた管理職世代には不甲斐なく映るかもしれませんが、丁寧な教育とリードで、新人を戦力に育てあげることが、生産性人口が減少していく、これからの時代の重要な生き残り戦略であることは必定と言えるでしょう。
【企業事例に学ぶ】Z世代のエンゲージメントを高めるには
マイナビBizご利用企業インタビュー
キリンホールディングス株式会社さま
「自ら成長していける基礎をつくる。キリンホールディングスの新入社員育成への想いとは」
<内容>
食にはじまり、ヘルスサイエンス、医領域まで、さまざまな価値を社会に提供するキリンホールディングス株式会社。多様性を持った社員が集まる同社の人材育成プロセスや、育成において大切にしていること、会社と社員の関係性についての考えを伺いました。
・入社3年目で到達してほしい「社会人としてのあるべき姿」とは
・コロナ禍での2021年新入社員研修の狙いと成果
・研修中の環境・住まいに求める条件とその理由
・会社が “自律した個”である社員を尊重するために
キリンホールディングス株式会社 のインタビューを読む
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