Z世代の早期離職にどう向き合う?“辞めない新人”を育てるためのポイントとは
Z世代※1の新入社員の早期離職は企業にとって深刻な問題です。せっかく教育しても、配属して間もないうちに退職されてしまっては、直接的なコストだけではなく、採用や育成に関わった社員や現場の士気が下がる、将来を担う人材が育たないなど、大きなダメージがあります。新卒採用において、入社後すぐに離職者が出ると、大学や新卒媒体の担当者から「職場環境に課題があるのでは」と懸念され、企業イメージに影響が及ぶ可能性もあります。採用活動においては、入社後の定着率も見られていることを意識する必要があります。
新入社員のエンゲージメントを高め、長く働いてもらうためには、どういった施策が必要なのでしょうか。マイナビが実施した調査データをもとに考察します。
※1)Z世代は1990年代後半~2010年頃に生まれた世代。幼少期からインターネットが当たり前にあり、デジタル機器が身近な環境で育っている世代を指す。
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”働きがい”がない新入社員の3割が「1年未満」で退職
マイナビ転職が実施した2024年の新入社員対象の調査(※2)によると、今の会社を「3年以内に退職予定」としている人は25.9%、「10年以内」では63.9%という結果が出ています。
今の会社で長く働き続けない理由を聞いてみたところ、男性は「給料を上げたい」「いろいろな会社で経験を積みたい」など、成長やステップアップに関する理由が目立ちます。対して女性は、「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最も高い結果に。結婚や出産をしても働き続ける女性が多くなり、ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるかどうかが、勤続年数を延ばす鍵になるかもしれません。
次に「今の会社を辞めたいと思ったことはあるか」という問いでは、入社2か月時点で「会社を辞めたいと思ったことがある」新入社員は33.4%。一方、そのうち転職活動をしている人は3.4%で、不満を持ちながらも勤務を続けている様子が伺えます。
なお、今の会社を辞めなかった理由は、「もう一度就職活動をしたくないから」(30.7%)が最多となり、次いで「辞めると言いづらいから」(24.7%)「上司や先輩、同僚に恵まれているから」(18.7%)が続きました。
この結果から見えるのは、辞めない理由の多くが“前向きな動機”ではなく、“消極的な事情”であることです。
上司や同僚との関係性をさらに強化したり、目的意識、キャリアパス、達成感を得られるように工夫するなど、働きがいを感じられる環境作りをし、消極的残留を積極的残留に変えるのがポイントかもしれません。
※2)マイナビ転職「新入社員の意識調査(2024)」
調査期間:2024年6月7日(金)~2024年6月9日(日)
調査方法:WEB調査
調査対象:2024年卒の新入社員
有効回答数:800名
※グラフの内訳は端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
理想と現実のギャップにストレスを感じやすい
マイナビ転職の調査(※2)によると、入社後に「仕事がつらい」と感じる理由として、最も多かったのは「仕事の内容が想像と違った」でした。次いで「人間関係がうまくいかない」「仕事の成果が出ない」が挙げられています。
これらの結果から、新入社員が入社前に抱いていた期待と実際の業務内容や職場環境とのギャップが、ストレスの大きな要因となっていることがわかります。
特にZ世代の新入社員は、自己成長や社会貢献を重視する傾向があり、「自分の成長を感じる」「誰かの役に立てたと感じる」といった実感が得られない場合、仕事に対するモチベーションが低下しやすいとされています。また、上司や先輩からの適切なフィードバックやサポートが不足していると感じると、職場への帰属意識が薄れ、早期離職のリスクが高まる可能性があります。
このような状況を防ぐためには、新入社員が業務を通じて成長を実感できるような環境づくりが重要です。具体的には、定期的なフィードバックの実施や、上司・先輩とのコミュニケーションの機会を増やすことが効果的です。また、新入社員が自らの業務の意義や成果を理解しやすいように、業務内容や目標設定の明確化を図ることも求められます。
能力不足や職種の適性との不一致から与えられた業務で結果が出なかったり、スキルアップできる業務内容ではなかったり、同時に上司や先輩から放置されていると感じた時などに「こんなはずではなかった」と思い、理想と現実のギャップに「働きがいがない」と感じるようです。
先輩や管理職世代が「新人なのだから当然」と思うようなストレスでも「打たれ弱い」とされるZ世代は耐性が低く我慢が苦手。彼らのモチベーションを引き上げるには、成果物に対してのフィードバックを丁寧に行う、「役に立てた」「成長できた」と感じられる声掛けを心がけるなど、上司によるアシストを検討する必要があるでしょう。
“働きがい” がある職場とは?
Z世代の早期離職を防ぐカギは「人間関係」と「成長実感」
Z世代が求める「働きがい」とは、単に高給与や福利厚生だけではありません。彼らが重要視するのは、人間関係の質と成長実感です。これこそが「働きがい」の本質であり、これらを重視することで、企業は若手社員の早期離職を防ぐことができます。
新入社員の約3人に1人が入社2か月で「辞めたい」と感じているというのは、多くの企業にとって見過ごせない事実です。しかし一方で、実際に転職活動を始めている人はわずか3.4%。このギャップは、「すぐに辞めるほどではないが、現状に満足しているわけでもない」という不安定な心理状態を表しています。
この“モヤモヤ”を放置してしまうと、やがては離職という形で表面化しかねません。だからこそ今、企業側が注力すべきなのは「働きがい」を実感できる環境づくり。中でも「人間関係の良さ」や「成長実感のある経験」は、Z世代にとって重要な定着要因となります。
働きがいの要素は「人間関係」と「自己成長」
新入社員のキャリア意識調査(※3)では、「職場で働きがいを感じるために必要なこと」として、新入社員の60.9%が“良好な人間関係”を最も重視していると答えました。また、「プライベート優先の生活を送りたい」と考える割合は72.1%にのぼり、ワークライフバランスへの意識も一層高まっています。
さらに、働きがいを感じる要因としては「自身の成長を実感できる」「誰かの役に立てたと感じる」「上司や先輩に褒められる」といった精神的充足感や承認体験が挙げられており、Z世代にとっては昇給や昇進よりも“心の満足感”がモチベーション維持に欠かせないことが分かります。
新入社員のモチベーションを高めるために
企業側に求められるのは、「適切なフィードバックを行う上司」「質問しやすい空気感のあるチーム」「明確なキャリアビジョンの提示」など、日々の人間関係と成長支援の積み重ねです。
特に配属に対する不安を軽減するためにも、事前の情報共有や説明を丁寧に行い、納得感のある配属を目指すことが重要です。新入社員のキャリア意識調査(※3)では、勤務地・配属先が希望通りだった新入社員は6割弱にとどまる一方、「納得していない」と感じている人は1割程度と少数でした。Z世代の多くは、配属先に完全な一致を求めるよりも、その後のフォローや育成方針を重視していることを示しています。
※3)マイナビ研修サービス「新入社員のキャリア意識調査(2024)」
調査期間:2024年3月21日(木)~2024年4月12日(日)
調査方法:記入選択式アンケート
調査対象:当社が提供する新入社員研修に参加した新入社員
有効回答数:6,692名
“働きがい” と社風理解の深い関係
社風=企業のビジョンや存在意義を研修で共有
SNSネイティブであり、広く情報を集める手段に長けたZ世代は、世界情勢や環境など社会課題にも関心が高い世代と言われています。そうした若者にとっての“働きがい”のもう一つの側面は社会貢献度です。SDGsなど企業の社会責任を問われることが多い昨今、自社の社会貢献度がそのまま自分の社会貢献度につながると捉えていることから、所属している組織のビジョンを認識しているかどうかも、継続勤務の一因になると考えられます。
そのためにはまず、所属している会社がどういうビジネスモデルで業績を上げ、それがどういうビジョンに基づくかを理解することです。そうした自社理解が進めば、会社全体の大きな目標を、目の前の業務にブレイクダウンすることで、自らの社会貢献度が考察でき「人の役に立っている」という“働きがい”の実感に結びついていきます。
新人時代に自社の社風(ビジョン、経営理念)を理解することと、使命感をもって業務に向かえるようになることの相関はそこにあります。
社風理解とビジョナリーなリードが“働きがい”を生む
Z世代の社員が働きがいを感じるためには、日々の業務を通じて「自分がどのように社会に貢献しているか」を実感できる環境が重要です。そのためには、企業のビジョンや価値観が社員一人ひとりに浸透していること、そしてリーダーがそれを体現していることが欠かせません。
とくにZ世代は、トップダウンではなく「共感」によって組織の一員としての帰属意識を高める傾向があります。リーダーが自身の言動で会社の価値観や方向性を示し、それを共有し続けることが、若手社員の納得感やモチベーションにつながります。
“働きがい” 育成は入社前から始める
社風理解の第一歩は、入社志望者に対するプレゼンテーションから
そもそも入社後のミスマッチを未然に防ぐ努力が、早期離職低減の第一歩。応募してくる学生に自社のビジネスモデルやビジョンを十分理解してもらい、納得してから入社してもらう必要があります。ビジネスモデルを理解していなければ、自分がそこで働くイメージがもてず、モチベーションも持てないということも起こりかねません。企業と学生のマッチングとは、そうした理解の上で初めて成り立つものだと言えます。
同様に企業が業績を訴求する場合も、シェアNO.1ということだけではなく、どういった沿革があり、どうやって達成したのか、企業の強みを分解して解説する必要があります。
また、就職活動に関する調査(※4)では、新社会人の約半数が、入社前に勤務先のインターンシップや仕事体験に参加していたことが分かっています。この割合は、2020年の調査開始以降、年々増加傾向にあります。
また、インターン参加経験者の方が入社半年後の満足度が4.2pt高い結果がわかりました。インターンシップなどを通して、入社前になるべく多くの社員と交流してもらうことが、入社後の勤務継続に益する大きなファクターだと言えるでしょう。
インターンシップ・仕事体験に複数日程で参加したり、実際の業務に近いプログラムを経験したりすることで、企業理解が深まり、その後の勤務先満足度にも影響していると考えられます。
※4)マイナビキャリアリサーチラボ「2024年卒 入社半年後調査」
調査期間:2024年10月25日(金)~2024年10月31日(木)
調査方法:WEB上のアンケートフォームより入力
調査対象:2024年卒業予定として就職活動を行い、その状況をモニター調査で回答した方
有効回答数:398名
入社前に確認する人事制度の情報とは
マイナビの内定者意識調査(※5)によると、人事制度などに関する情報の中で「入社意欲を高めると思うこと」および「入社予定先企業が持っていること」の第1位は「福利厚生の充実」でした。特に「入社意欲を高めると思うこと」として、実に74.1%の学生が福利厚生の充実を挙げており、今後もその重要性は高まっていくと考えられます。
安心して働きがいを感じるには、「日々のやりがい」だけでなく、「生活の安定」も欠かせません。そのため、住環境の整備も重要な定着施策の一つです。福利厚生が充実しているかどうかは、新入社員にとって「この会社で長く働いていけそうか」という安心感の指標になります。
しかし、それだけではZ世代の定着には不十分です。
働きやすさを支える制度や環境づくりに加え、新入社員一人ひとりに向き合った育成施策が、より実践的な対策として求められています。
住まいの不安が解消されることで、仕事に集中できる環境が整い、結果として早期の活躍や定着にもつながります。安心して働ける生活基盤の提供は、働く意欲を増加させ、実力を発揮するための土台ともいえるのではないでしょうか。
※5)マイナビキャリアリサーチラボ「2024年卒 内定者意識調査」
調査期間:2023年6月16日~2023年7月5日
調査方法:Web上のアンケートフォームより入力
調査対象:2024年卒業予定の全国大学4年生及び院2年生
有効回答数:2,851名(内々定保有者)
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「辞めない新人育成」のための実践的アプローチ
せっかく入社してもらった新入社員には、長く働き続けてもらいたいものです。しかし、いざ現場に出ると、様々な課題や不安を抱える新入社員も少なくありません。そのため、企業としては、新入社員が定着し、安心して働ける環境作りが重要です。
そこで、「辞めない新人育成」に必要な要素として、以下の3つのポイントが挙げられます。
心理的安全性の確保
マイナビキャリアリサーチの「第1回 新入社員を「即」戦力化することってできるの?」では、新入社員の58.1%が「上司・先輩・同僚との人間関係」に不安を感じているという結果が出ています。この不安が新人社員の離職に繋がる可能性が高いため、心理的安全性の確保が最も重要です。
具体的な方法としては、以下のような取り組みが有効です。
- 新入社員を含めた全員に均等な発言機会を提供
- 受け入れ態勢を整え、社員全員がサポートし合う雰囲気を作る
- 問題や課題に対してポジティブに反応し、全員で解決策を考える
- 新入社員の発言や行動を否定せず、存在自体を尊重する
働きがいやキャリア形成の支援
新入社員の中には、業務内容に対する希望よりも収入を重視する傾向があることが分かっています。しかし、働きがいや自己成長を感じられる環境が整えば、社員のモチベーションは大きく向上します。
そのためには、仕事の目的や背景をしっかりと共有し、社員自身がキャリアを自律的に形成できるように支援することが重要です。新入社員には、仕事を通じて自分の成長を実感できるように、定期的にフィードバックを行い、キャリアアップの道を示していきましょう。
個別最適化された育成アプローチ
Z世代の新入社員は、多様性を重視し、画一的な指導に耐性が低い傾向があります。そのため、個別に対応した育成が求められます。
具体的には、個々のニーズや特性に合わせた柔軟な育成計画を作成し、対話を通じて社員一人ひとりの課題を理解することが重要です。また、定期的に進捗を確認し、必要なサポートを提供することで、社員が成長し続けるための支援が可能になります。
柔軟な働き方は、定着にどう影響する?
コロナ禍を経て一気に普及したテレワークですが、2023年以降は出社回帰の傾向も強まり、現在は「ハイブリッド型勤務」を採用する企業と、原則出社に戻した企業とで対応が分かれています。
パーソル総合研究所の2024年の調査(※6)では、正社員全体のテレワーク実施率は22.6%と微増にとどまり、特に大手企業(従業員1万人以上)では38.2%と比較的高い実施率を維持しています。
また、自宅勤務制度を利用できない人のうち「テレワークができる環境で働きたい」と回答したのは36.9%にとどまり、希望しない人が63.1%と上回る結果に。必ずしも「柔軟な働き方」が全社員に求められているわけではないことも示されています。
こうした中、新入社員の定着において重要なのは、勤務形態そのものよりも、「自分の働き方に納得できているか」という点かもしれません。ハイブリッド勤務や在宅ワークの有無にかかわらず、業務の進め方に透明性があり、定期的なコミュニケーションやフィードバックが得られる環境を整えることが、エンゲージメント向上や離職防止のカギとなりそうです。
※6)パーソル総合研究所「第9回・テレワークに関する調査」
調査期間:2024年7月12日(金)~2024年7月16日(火)
調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査対象:全国の就業者(20~59歳男女、勤務先従業員人数10人以上)
有効回答数:31,321名
長期的な定着に向けた取り組み
新入社員が辞めないようにするためには、心理的安全性の確保、働きがいやキャリア形成の支援、そして働きやすい環境作りが不可欠です。これらを実行することで、新入社員は安心して成長できる環境を実感でき、長期的に企業に貢献する存在となるでしょう。
会社としては、これらの取り組みを一つ一つ実行し、より良い職場環境を提供することが、新入社員の定着に繋がります。あなたの会社でも、ぜひこのアプローチを実践して、優秀な人材を長く支え続けましょう。
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