社宅に必要な契約書とは? 内容や作成時の注意点を紹介
従業員に社宅を提供する場合、一般的には社宅使用契約書を作成する必要があります。作成する際には、基本項目とトラブルを未然に防ぐためのポイントを把握しておくことが肝心です。しかし「どのような事項を記載すればよいのか分からない」「契約時に注意すべき事項を知りたい」と悩む方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、社宅使用契約書に盛り込むべき内容と、契約書作成に当たって気をつけるべきポイントを説明します。ぜひ本記事を参考に、契約書で明記すべき事項を理解し、有効な契約書を作成しましょう。
社宅に必要な契約書とは?
社宅に必要な契約書は、「社宅使用契約書」と呼ばれています。社宅使用契約書は、社宅を提供する企業と社宅を利用する従業員の間で取り交わす契約を、書面に落とし込んだものです。基本的には、企業・従業員双方が本書及びデジタルデータで保管する場合が多く、社宅利用における契約内容を網羅的に明記した内容となります。
「使用」という名称がついている社宅使用契約書ですが、すべてのケースで企業と従業員が使用貸借の関係になるとは限らず、実質「賃貸借契約」として取り扱われるケースも珍しくありません。特に、社宅の使用料が賃料の相場と近いケースだと、契約書の表題に「賃貸借契約」と明記があるかどうかに関わらず、「当該社宅使用契約は賃貸借契約にあたる」と判断されます。
社宅使用契約書を作成する際は、そもそも社宅制度は従業員の働きやすい環境を整えるための福利厚生であることを認識しておきましょう。内容に矛盾や間違いが無いよう推敲するのはもちろんのこと、従業員も理解しやすい内容となるよう心がけてください。
社宅は一般的な賃貸物件と比べ、安く住居できることも多いので従業員のモチベーション維持工場や離職率の低下の一助にもなる福利厚生です。制度を最大限に活かすためにも、従業員にとってわかりやすい社宅使用契約書にする必要があります。
社宅使用契約書に盛り込むべき内容
社宅使用契約書に盛り込むべき内容は以下の3つです。
・対象の物件
・賃料やその他費用、支払い方法
・入居する従業員の義務
・契約解除に関する取り決め
・退去時の対応
上記ポイントを抑えて社宅使用契約書を作成すれば、企業・従業員双方にとってわかりやすい内容となります。ぜひ参考にしてください。
対象の物件
社宅使用契約書を作成する際は、対象となる物件の情報を間違いないように明記しましょう。物件情報で代表的なものは、以下のとおりです。
・物件名
・住所
・郵便番号
・管理者
なお、物件情報は正しい表記で記載するよう心がけてください。物件の名称にローマ字とカタカナのどちらが使用されているのか(ex.「コーポマイナビ」「コーポMynavi」)など、信頼できる書面と相違がないかを確認しましょう。部屋番号・階数の表記方法なども社宅によって特殊な場合もあります。社宅使用契約書を作成する際は、こういった細かなポイントにも気を配る必要があります。
賃料やその他費用・支払い方法
賃料やその他費用、支払い方法も社宅使用契約書へもれなく明記しましょう。特に、徴収する家賃や共益費は、社宅規程で定めている内容と矛盾がないかを確認してください。月の途中で退去する場合に日割りにするのか、1か月分を負担する必要があるのかを明確にしておくとよいでしょう。また、支払い方法はあらかじめ指定しておくことをおすすめします。家賃を給与から控除する形にしておくと管理工数を少なくできるメリットがあります。社宅管理の担当者がスムーズに業務を進められるような内容を心がけて検討してみてください。
入居する従業員の義務
社宅使用契約書を作成する際は、入居する従業員の義務を明記しておくと良いでしょう。例えば、「契約者以外の同居は原則禁止とする」など、社宅でしてはならないことを明記しておくことで未然にトラブルを防げます。
禁止事項の他にも、婚約者と同居するなどの例外的に認められる条件を明記しておくと、業務の属人性が改善され、誰が対応しても正しい判断ができます。
契約解除に関する取り決め
社宅の契約解除に関する取り決めも、社宅使用契約書へ盛り込んでおくべき項目の一つです。契約解除に関する取り決めとして盛り込まれる代表的な項目は以下のとおりです。
・一定期間の支払いを遅滞した場合
・故意に社宅設備を損傷・破壊した場合
・他入居者に危害を加えた場合
・虚偽の申告をしていた場合
・会社が破産した場合
明らかな不正があった際に契約解除できずトラブルにならないよう、基本的な項目を網羅しておきましょう。
退去時の対応
退去時の対応を社宅使用契約書に盛り込むことで、企業・従業員双方にとってスムーズな社宅利用が実現します。例えば、社宅退去時にかかる費用がある場合は契約書に明記しておくと良いでしょう。請求できるとは限りませんが、修復費用などを事前の取り決めなく通達すると混乱を招くことにもなりかねません。
また、社宅の原状回復が必要な場合は合わせて契約書へ明記しておくと良いでしょう。細かい項目を一覧表にしておけば、チェック作業もスムーズに進められます。退去時の対応を盛り込んでおくことで得られる企業側のメリットは多いため、必ず記載しておきましょう。
社宅使用契約を結ぶ際の注意点
社宅使用契約を結ぶ際注意すべきポイントは、以下の通りです。
・社宅規程を整備する
・口頭でも説明する
・多言語で用意する
・平等性を重視する
・改訂する場合はきちんと通達する
以上の注意点を覚えておけば、社宅の運用がスムーズになる契約書を作成できます。それぞれ詳しく解説します。
社宅規程を整備する
社宅に関する細かい取り決め事項は、社宅規程に記載するようにしてください。社宅使用契約書は、社宅を提供する企業と従業員間で「大前提」となる契約内容を記載し、社宅の利用ルールその他細かい事項は社宅規程に明記する、と認識しておけば問題ありません。社宅規程に記載すべき代表的な事柄は、以下の通りです。
・共用部分の扱い
・ゴミ出しルール
・ベランダや駐車場など、住宅敷地内でのルール
また、社宅規程を整備する際は入居者が平等に扱われるよう内容に配慮が必要です。社宅使用契約書を作成する際と同様に、複数人で平等性がある内容かを確認しながら社宅規程を作成しましょう。
口頭でも説明する
社宅使用契約を結ぶ際は、契約書を送付するだけではなく口頭でも説明するようにしてください。社宅使用契約書を送付するだけだと、入居者が目を通さなかったり、内容をきちんと理解できなかったりすることもあり認識の違いが生まれる可能性があります。
また、社宅使用契約について口頭で説明する際は、説明を受けたと確認するためのサインをもらっておくことをおすすめします。どうしても口頭で説明するタイミングがない入居者に対しては、問い合わせ窓口の連絡先を渡しておきましょう。質問しやすい環境を整えておくことで、トラブルを未然に防止できます。
平等性を重視する
社宅使用契約を結ぶ際は、すべての従業員にとって平等な内容であるかを重視しましょう。正当な理由がないまま従業員ごとに差のある契約内容で作成すると、企業に不信感を抱かせてしまいます。
社宅使用契約の平等性を担保するには、複数人での契約書作成が有効です。作成内容のダブルチェックも合わせて導入することで、抜け漏れや誤記の可能性を低減できます。社宅使用契約書は、社宅を利用する従業員全員にとって平等な内容になるよう徹底して作成しましょう。
変更する場合はきちんと通達する
社宅使用契約書を変更する場合は、きちんと通達しましょう。賃料の値上げやその他やむを得ない事情で契約書を改定しないといけない場合は、速やかな事前通達を行うことがポイントです。
契約書は双方の合意のうえに成り立つものです。事前に変更案を説明しておき、質疑にもしっかり回答しておくことで大きな混乱なく合意を得られます。特に、賃料・その他費用が発生する項目に関しては、「事前通達のない内容変更は受け入れたくない」「そんな改訂があるならもっと早く教えて欲しかった」のように反対意見が多く出ることが予想されるため、時間に余裕を持って変更を進めましょう。
地域習慣に沿った契約書にする
社宅使用契約書は地域習慣に沿った内容となるように気をつけましょう。例えば、地域によって敷金や更新料の相場が異なる場合もあるので、契約書作成前に確認しておくことをおすすめします。特に、全国に支部を持つ企業の場合、支部社員と連携して地域習慣情報を調査しておいてもらうと良いでしょう。
多言語で用意する
外国人従業員の多い企業であれば、多言語の社宅使用契約書を準備しておきましょう。日本語の契約書だと詳細をチェックしたり、後から見返したりするのに通訳を挟む必要があり、対応に時間と工数がかかります。
英語で字幕をつけた説明動画を作成することも検討してみましょう。毎回社員に通訳を依頼しているのであれば、かなりの工数を削減できますよ。
その他トラブルに繋がりそうな項目はもれなく明記する
社宅使用契約書を作成する際は、社宅規程と合わせてトラブルに繋がりそうな項目を網羅的に盛り込むと良いでしょう。過去にあったトラブル事例を参考に契約書をブラッシュアップするのもおすすめです。
まとめ:社宅使用契約書でトラブル時の責任を明確にしておこう
社宅使用契約書は、企業・従業員双方が内容を理解し、締結することで初めて期待される効力を発揮します。万が一、社宅を巡ってトラブルが発生したとしても、契約書があれば責任の所在を明確にできます。社宅管理業務の判断基準となる役目もあるため、細かな部分まで作り込んでおきましょう。
なお、マイナビBizでは、社宅業務に携わる担当者の業務負担を軽減するサービスを提供しています。社宅規程の範囲内で従業員の希望に近い物件を提案することが可能です。社宅管理全般のサポートも提供しているので、退去時の対応もお任せください。社宅探し・社宅管理業務のアウトソーシングを検討される際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2023年1月時点のものです。