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税務の観点からみた不動産経営を副業にするメリット

2021年6月4日

2017年に閣議決定された働き方改革実行計画により副業や兼業などの柔軟な働き方の実現が目標となり、2020年9月には副業に関するガイドラインが改定され、副業に関する労働時間の管理などに関するル―ルが明確化されました。

最近では、大企業を中心に週休三日制も取り入れられており、副業を始める人がさらに増加することが考えられます。

本コラムでは副業の種類に応じた所得税法上の取扱いや、不動産経営を副業にする場合のメリットやその他の副業との違いについて解説します。

※所得税の計算の全体像については、「サラリ-マン大家さんのための令和2年分所得税確定申告の注意点」で解説しています。

1.副業から生じる所得

一言で副業といっても、不動産投資や株式投資などの投資ビジネスや、ブログ・Youtubeなどのネットビジネス、個人の専門知識を生かしたビジネス等、内容は多種多様です。

そのなかでも、上場株式や投資信託などの有価証券取引、FX取引、商品先物取引、ビットコインをはじめとする仮想通貨取引などは金融関連の分野においてインターネットを通じたオンライントレ―ドサービスが普及し、自宅にいながらにして金融商品等の取引が可能であるという利便性から注目を集めています。さらに、手数料が安価であるという要素も加わり今後もますます拡大することが予想されます。今回は、この金融関連分野の副業と不動産経営を対比してそれぞれの税務上の取り扱いやメリットを見ていきたいと思います。

2.金融関連分野の副業の所得税法上の取り扱い

まずは、金融関連分野の副業の所得税法上の取り扱いについてみていきます。

(1)上場株式等の取引による所得

オンライントレ―ドを利用した上場株式等から生じる所得には、譲渡益と配当があります。 

譲渡益は、原則として他の所得と分けて税金を計算する「申告分離課税」となり、税率は20%(所得税15%。住民税5%。復興特別所得税を除きます。以下同様)です。

配当は原則「総合課税」です。上場株式の配当に関しては、20%の源泉徴収のみの申告不要制度が認められたり、税率20%の申告分離課税を選択することができるなどの措置が設けられています。上場株式等の譲渡損失は、一定の要件のもと申告分離課税を選択した上場株式等の配当等との同じ所得区分内での損益通算が認められます。しかし、引ききれなかった譲渡損失は、翌年以後3年間において各年分の上場株式等の譲渡所得の金額に順次繰り越して控除することとなります。給与等の他の所得との損益通算は認められません。

(2)FX取引や商品先物取引による所得

外国為替証拠金(FX)取引や商品先物取引の所得も上場株式等と同様に20%による申告分離課税が採用されます。損失が生じた際、他の先物取引等による所得の金額と同じ所得区分内の損益通算は認められますが、引ききれなかった損失は翌年以後3年間繰越して他の先物取引等の所得から控除をすることなります。上場株式等の損失が生じた場合と同様に、給与等の他の所得と損益通算することはできません。

(3)仮想通貨取引による所得

ビットコインなどの仮想通貨取引による所得は原則として、雑所得とされ総合課税の対象となります。総合課税は給与等の他の所得と合算され、所得税であれば5%~45%の税率で課税されます。

一方で、ビットコインの運用による損失が生じても給与等の他の所得と損益通算ができず、翌年以降へ損失を繰り越して控除することもできません。

3.不動産投資の所得税法上の取り扱い

ここからは不動産投資の所得税法上の取り扱いについてみていきます。

(1)損益通算

不動産を他人に貸し付け使用させることによる所得は、原則として不動産所得となり総合課税の対象となります。

不動産所得は損失が生じた場合は、貸付規模の大小に関わらずその損失を給与等の他の所得と通算することができる損益通算が認められます。これにより税金の還付を受けることができるのです。

ここまでみてきたように、金融関連分野の副業と異なり給与等の他種類の所得と損益通算が認められるのは、不動産所得の大きなメリットとなります。

さらに不動産所得の計算上、必要経費に算入できるものにキャッシュの支出を伴わない建物などの減価償却費部分が全体の経費の中で多額になるケ―スが多いため、税務計算では損失でもキャッシュフロ―上は損失とならない場合が多くあります。(減価償却については「サラリ-マン大家さんのための令和2年分所得税確定申告の注意点」の「7.不動産経費の留意点②で解説しています)

不動産所得は仮想通貨取引の場合と同様に総合課税されますが、不動産所得の場合は建物等の減価償却費という多額の経費が認められます。言い換えれば支出を伴わない多額の経費計上が認められ、損失となった場合は損益通算が可能となることに他の副業等による所得に比し税務上は大きなメリットがあります。(損失が生じた場合の借入金の利子の扱いは「サラリ-マン大家さんのための令和2年分所得税確定申告の注意点」7.不動産経費の留意点①で解説しています)

(2)青色申告特別控除

不動産所得の場合は他の副業等の所得と異なり、青色申告特別控除という制度が認められ一定の要件のもとに年額10万円または55万円もしくは65万円の控除が認められるという税務上のメリットもあります。

(3)青色申告の3年間の繰越控除

不動産所得の場合、損失が生じても3年間繰り越して翌年以降の黒字の所得と相殺することができます。

4.不動産所得が事業的規模の場合のメリット

不動産所得の税務上のメリットは、不動産の貸付規模が大きくなると更に大きくなります。

不動産所得が事業的規模として認められますと下記の4つのメリットが税務上認められます。

事業的規模に該当するか否かの基準は、一般的には貸家やマンション等の建物がおおむね5棟以上またはアパ-ト等の部屋室がおおむね10室以上あるかどうかで判断します。この基準は通称「5棟10室基準」とも呼ばれます。

メリット①

事業的規模に満たない場合は、青色申告控除の金額が10万ですが、事業的規模となる場合は一定の要件のもとに55万円または65万の控除が認められます。

メリット②

事業的規模の場合は、一定の要件のもとに青色事業専従者給与という制度の適用を受けることによって、配偶者などの家族に税務上適正な給与支払うことが認められます。

メリット③

賃貸用不動産を取り壊したり、除却した場合には多額の損失(資産損失)が生じる可能性がありますが、事業的規模の場合は当該損失を全額必要経費に算入することができます。不動産所得が赤字となった場合は他の所得と損益通算でき、それでも損失が控除しきれなかった場合は、翌年度以後3年間繰り越して控除することができます。

事業的規模に満たない場合は、その損失を差し引く前の不動産所得の金額までしか経費に算入することができません。

メリット④

事業的規模の場合は、家賃が回収不能となった場合、貸倒損失として回収不能額を経費に算入することができますが、事業的規模に満たない場合は、回収不能額は収入に計上した年度まで遡り、その収入がなかったものとして修正することになります。

具体的には更正の請求という手続きを行うことになりますが、これは手間がかかり、税務署の職員による過去の申告内容が正しいか否かという税務調査を受ける可能性があります。

最後に

現在既に副業にトライしている方、これからトライしようと考えている方は、是非税法上のメリット・デメリットにも注力してください。財産だけではなく普段仕事では得られないスキルや経験値を上げることができると思います。


小野 優(おの まさる)

税理士、経営コンサルタント。
大手監査法人系列国際会計事務所勤務、主に事業承継対策、組織再編などに従事。平成5年独立。企業の経営、税務、個人地主の事業承継指導に携わる傍ら、全国展開を図るスポ-ツ施設運営会社代表取締役社長、ワンルームマンションデベロッパー老舗会社取締役社長兼同系列不動産賃貸管理会社取締役社長、その他多くの中堅中小企業の役員を歴任。
ゆう総合会計事務所 所長、YOU Consultant株式会社 代表取締役。

※本コラム記事は、掲載時点または公開日において適用される法令等を前提として執筆しています。また本コラムは一般的な税法その他の関係法令や会計基準を分かりやすく説明することを目的としています。

そのため極力専門用語を避け細部にわたる事項は省略しています。内容の正確性の確保には努めていますが、その内容については一切の保証を行うものではありませんし、本コラムの利用により利用者が如何なる損害を受けた場合であっても、全ての損害が免責され、何らの責任を負いません。したがって、実務を行う場合には顧問税理士等に相談するとともに十分に検討して実施してください。なお、本コラムに記載されている内容は私の個人的見解を含みます。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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