不動産投資家が注目するべき住宅ローンの活用と落とし穴
2021年3月5日

半沢大家
2019年まで銀行員、現在は証券アドバイザーとして勤務する兼業大家。2018年以降、3年間で計7物件、融資を使って購入。現在アパート4棟、駐車場用地1筆、戸建て1棟、マンション1棟を保有し、家賃年収は3,600万程度。不動産購入での銀行融資付を得意とし、投資家からの個別相談を受け、銀行打診の指南を行っている。
こんにちは、半沢大家です。今回の記事では、住宅ローンについて解説したいと思います。
住宅ローンは「自分が住む家を購入するための借入」であり、賃貸用物件のための融資とはロジックが全く異なります。
基本的には、重視される内容は「年収」「勤続年数」であり、融資3原則(使途、財源、保全)でいうところの「財源」により重きを置いた審査が行われます。
これまで解説してきた事業用融資のロジックからするとあまりにも異なる(というか大雑把)であるため、逆に混乱してしまうかもしれませんが、「資金調達」という目的自体は同じですし、正しい戦略で取り組んでいただければ賃貸業にもプラスに働きます。
また自宅を保有していない人、今後買い替えを検討している人向けの内容になると思いますが、今日は「住宅ローンの戦略」について、深掘りしていきたいと思います。
住宅ローンをどう捉えるべきか
今回の記事では「持ち家か賃貸か」の議論は言及しないこととしますが、「持ち家」を選択した場合、必ず考えるべきは「住宅ローン利用における最善の動きは何か?」を考えることです。
この場でわざわざ説明するまでもないかもしれませんが、住宅ローンというのは世界でも類を見ないほどの好条件の資金調達方法です。
金利は変動0.5%程度、年数は最大35年程度まで引くことができ、団体信用生命保険(万が一があったら借金がチャラ)まで保険料無料で付いてきます。築年数がそこそこ経過していても35年貸してくれますし、ましてや住宅ローン取得控除を適用すれば残高の1%は戻ってきます。
※細かい諸条件はご確認ください。
つまり住宅ローンは支払金利よりも得られるメリットの方が大きい、言わば完全に“逆ザヤ”の状態です。
また、審査についても非常に寛容です。(今まで解説してきた不動産向け事業融資の基準は何だったのか!と感じるほど優しく、大雑把です)住宅ローンは国の景気刺激策の一つでもあり、ある意味では住宅を買う人だけがもらえる補助金のようなものです。
つまり住宅ローンで考えるべきは
「少しでも多くの資金を、より長い期間で借りること」
に尽きます。
これは不動産投資家でなくても同じです。今の時代においても、リスクを抑えた資産運用を行ったとしても、年率3%程度のリターンを得ることは出来ます。間違っても頭金を投入することの無いように、意識してください。(金利0.5%の借金を怖いと思わないで、浮いたお金を有効活用しましょう)
さらにお話しすると、目指すべきはフルローンではなくオーバーローンです。理想としては購入諸費用・引っ越し費用・家具家電購入費用の支払いを全て終えても、まだお金が余っている状態です。
「そんなことしていいの?」と感じた方は銀行の住宅ローンの商品概要書を見てみてください。借入の対象となる諸経費支払がどこまで含まれるか書いてあります。(問い合わせれば「使いきれなかった融資金が何万円以下なら、繰り上げ返済に充てなくていいか(預金で持っていていいか)」も教えてくれる可能性が高いです)
自己資金の温存が必要とされる不動産投資家の人は、間違っても住宅ローンで得られる利益を見落とすことの無いよう、お気を付けください。
(住宅ローンの優位性を述べましたが、住宅ローン利用であればどんな高額物件を買ってもいいということではありません。この記事を読む皆様においては、マイホームにおいても一歩進んだ仕入れを行うのもよろしいかと思います。)
マイホームが先か、マイアパートが先か
住宅ローンに求めるのは「オーバーローン」で間違いありませんが、もう一つ頭を悩ませる問題があります。
それは「マイホームが先か、マイアパートが先か」という問題です。
よほど上手な物件仕入を行わない限り、借入の残高を増やすという行為は、次の融資の足かせになります。つまり持ち家を検討する人にとって、融資の観点からも「どのタイミングでマイホームを買うか」というのは考えるべき課題になります。
この問題、絶対の正解はないのですが個人的には「マイアパート優先」でよろしいかと思います。
最初の一物件目の融資は一番ハードルが高いので、この戦いでは万全の状態で臨みたいと考えるからです。まずは飛行機を離陸させることに専念し、その後自宅を買うというのが個人的な考え方です。
しかし、融資を引き、物件を買い進めていくと少なからず住宅ローン審査へ悪影響も出始めます。自身の人生においてマイホームを持つことの優先度が高い人は、この悪影響を軽視することの無いようお気をつけください。(また、持ち家を持つことにより地場の金融機関の門が開かれるのであれば、これまた悩みどころです)
不動産投資家にとっての住宅ローン攻略
では、既に多くの物件を保有し、銀行の開拓も進んでいる不動産投資家は住宅ローンを引くことは出来ないのでしょうか?
もちろん突破口はあります。状況にもよりますが、もし壁にぶつかったときは試してみてください。
①フラット35・ネット銀行を利用する
まずは比較的審査が優しいと言われているフラット35や、保証会社を持たず審査方法に個性があるネット銀行を試してみてください。すんなり通ることもあります。
ただし、ネット銀行などは商品規定によりオーバーローンが難しいことが多いです。また、土地から建築する場合のつなぎ融資なども融通が利かないこともあるのでご注意ください。(オーバーローンや融通を考えると、少し金利が高くても地場の金融機関の方が良いと私は思います。)
②不動産融資で取引がある(すでに実態を把握してもらっている)金融機関にプロパー住宅ローンを依頼する
通常であれば住宅ローンが通る属性の方が審査に落ちる場合、基本的には借入金額・または信用情報チェックによる否決です。信用情報には借入の内容や保証額も記載することがありますので、個人での借り入れがなかったとしても、否決となることがあります。(特に地場の金融機関だとこのチェックで不審な点があると否決となる確率が高いです。)
この場合、既に実態を把握してくれている金融機関に理由を話し、プロパー審査を行ってもらうという方法もあります。
金利は少し高くなるケースが多いですが、実態に合わせて審査をしてくれます。ただし、この場合は住宅ローンのように財源評価だけで完結することは少ないので、ハードルは高くなると考えたほうがいいです。
・支払家賃がなくなり、全体の収支がプラスになる
・この家を買うことにより、今後の賃貸経営にもプラスに作用する(エリア性など)
など、ストーリーの構築も行った方が良いかと思います。
まとめ
以上が不動産投資家向けの住宅ローン解説です。
マイホームの購入を検討されている方は「極力多くの金額を借りる」を目指し、自己資金は温存してください。(できれば1円も使わないでください。むしろ預金を増やしてください。)
そして家を買うタイミングについては、自身の目標と照らし合わせて考えましょう。タイミングを誤ると「不動産に集中しすぎて住宅ローンを借りられなくなる」という結末を迎えてしまいます。(私も危うくそうなりかけました!)
次回は「ドミナント戦略の是非、立ち回り方」について書きたいと思います。お楽しみに!
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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