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賃貸オーナーが押さえておきたい国づくりのビジョン ~『国土のグランドデザイン2050』と『立地適正化計画』とは?~

3日前

アパート・マンションなどの賃貸住宅(以下アパート)の大家さんにとって気になるのはやはり入居率。せっかくのアパートも入居者が入ってくれないと賃貸経営が成り立ちません。しかし、人口減少や高齢化が進むわが国で、将来も安定した入居率を維持しながらアパート経営を続けていくことは可能なのでしょうか。

今回は、大家さんが賃貸経営を行うにあたって、知っておきたい国のビジョンと具体的な政策をご紹介します。競争力の強いアパート経営を目指すためのヒントにしてください。

入居率を左右する要因とは?

入居率を左右する大きな要因は、「立地」「プラン」「家賃」の3つです。そのなかでも「立地」は他の2つの要因とは異なり、大家さんが後から変えることができないため、はじめにしっかりと調べておくことが大切です。

長期のアパート経営に適した立地条件のひとつは、将来的に入居世代の人口が増加あるいは維持されるエリアにあるかということです。その点をあらかじめ押さえておくことにより、その立地でアパート経営を始めるかどうか、また今行っているアパート経営を将来もその場所で続けるかどうかという判断材料になります。立地の選択については、参考になるデータを国土交通省が公表しています。

国づくりのビジョン『国土のグランドデザイン2050』とは?

将来も人口減少が進行することを前提に、2014年に国土交通省が公表したビジョンが『国土のグランドデザイン2050』です。このビジョンでは、『コンパクト・プラス・ネットワーク』をキーワードに、都市のコンパクトシティ化と人・モノ・情報のネットワークの再構築を目指しています。

コンパクトとは「ぎっしり詰まった」という意味ですが、コンパクトシティ化は、居住や都市機能を集積することにより都市の密度を高め、生活利便性の維持・向上や地域経済の活性化、行政コストの削減を実現するための有効な手段とされています。

国土のグランドデザイン2050を策定するにあたり、国土交通省はさまざまな調査を行っていますが、そのなかで注目すべきデータがあります。それは、日本全国を1km×1kmの正方形で囲まれた地域(1kmメッシュ)に細かく分割し、それぞれのメッシュのなかの人口が、2010年から2050年の40年間にどの程度の増減があるかを試算したものです。なお、本記事でご紹介する試算は、その後2015年に実施された国勢調査の結果をもとに2016年に新たな分析資料として加えられたもので、さらに詳細な500mメッシュ単位で作成されています。

試算では、2010年に全国で人が住んでいたメッシュの内、19%のメッシュが2050年には全く人が住まない無居住化地域になり、44%のメッシュでは人口が50%以上減ってしまうと予測されています。合わせるとなんと全国の6割を超える地域が2050年までに人口が半数以下になってしまうと予測されているのです。

図表1は、都道府県別のメッシュ割合の抜粋です。例えば、2010年から2050年の人口減少が最も大きいとされている秋田県では、無居住化地域が17%、人口50%以上減少の地域が62%、あわせて約8割のメッシュの人口が半数以下に減ってしまうという衝撃的な予測結果となっています。(※1)

【都道府県別・人口増減率別メッシュ割合(対居住メッシュ)】

立地選びの判断にあたり、より興味深い資料となるのが、都道府県別に各メッシュの人口増減の割合を色分けで示した地図です。

秋田県を見ると、ほとんどのメッシュが濃い青(無居住化地域)や青(人口50%以上減少の地域)になっています。一方、ごくわずかですが、赤(人口増加地域)や黄色(人口が30%未満減少の地域)もあります。つまり同じ秋田県内でも大きく人口が減少する地域と、あまり減らない、あるいは反対に増加する地域があるということが分かります。

【秋田県 2050年の人口増減状況(2010年との比較)】

(出典:国土交通省「メッシュ別将来人口推計」

同じように、現在は人口増加が続き、一般的にアパート経営も安心と言われている東京を見ると、西部の市部では人口減少が大きい地域も広く分布していますが、23区でも人口が50%以上減少する地域があるのが分かります。23区にある立地だからといっても、将来もアパート経営が安泰とは必ずしも言い切れません。

【東京都 2050年の人口増減状況(2010年との比較)】

(出典:国土交通省「メッシュ別将来人口推計」を加工して作成)

このように、同じ都道府県のなかでも、人口の増減予測は地域によって異なります。人口予測から立地を判断する際に、何県だからアパート経営は安心、何県はダメ、という一律の判断ではなく、エリアの中での立地をよく見極める必要があるということを示しています。

国が策定するビジョンとともに、策定のためのデータ・基礎資料をチェックすることは、大家さんのアパート経営戦略に役立ちます。

さらに立地選びに影響する『立地適正化計画』とは?

国土のグランドデザイン2050の理念を具体的に進めるために、国土交通省は2014年に改正都市再生特別措置法を施行し「立地適正化計画」を制定しました。立地適正化計画とは、コンパクトシティ化を進めるためのそれぞれの市町村が策定するマスタープランのことです。

立地適正化計画では、区画整理や駅前再開発のような一部地域の開発ではなく、都市全体を見渡しながら、コンパクトシティの範囲を決め、そのなかに「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」を指定します。

都市機能誘導区域には、医療・福祉施設、商業施設、文化施設などの都市機能を誘導・集約させます。また、居住誘導区域とは、今後人口が減少しても、一定エリアの人口密度を確保することにより、日常生活サービスの利便性や公共交通が維持できるように居住を誘導する区域のことです。

【立地適正化計画のイメージ】

一方、居住誘導区域から外れてしまった区域では、一定規模以上の住宅建設に対して規制が設けられます。また、今後はインフラの整備・維持も居住誘導区域が優先されることになります。

現在、各市町村で立地適正化計画の策定を進めていますが、2020年4月1日時点において、全国で522の市町村が具体的な取り組みを進めており、そのうち311の市町村ではすでに都市機能誘導区域・居住誘導区域を定めています。(※2)今後、立地適正化計画が進行すれば、入居者も利便性の高い居住誘導区域内の賃貸アパートを求めるようになることが予測されます。

また、立地適正化計画の策定にあたり、多くの自治体が、土砂災害の危険性が高い地域を居住誘導区域から外しています。さらに近年の浸水被害の増加により、今後は浸水の危険性が高い地域も居住誘導区域から除外される方向になるでしょう。そうなれば、入居者は居住誘導区域内の物件を選ぶことで、少なくとも台風や大雨の際の浸水被害や土砂災害の被害に遭う可能性は低くなり、安心して住むことができるようになります。このように災害の面でも、居住誘導区域内の賃貸物件の優位性が増すと考えられます。

まとめ:アパート経営を「鳥の目」「魚の目」で見る

すでに、新築住宅の購入を検討している人のなかには、ハザードマップに加え、立地適正化計画もチェックする方が増えています。今後は、入居者がアパート選ぶ際にも、立地適正化計画やハザードマップが判断材料のひとつになっていくでしょう。

成功する経営に必要な視点として、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」があげられます。国や自治体のビジョンや情報を取り入れて活かすことは、鳥の目(全体を俯瞰すること)、魚の目(潮の流れを読むこと)を持つことになります。虫の目と合わせて、成功するアパート経営に結びつけてください。

※1国土交通省「メッシュ別将来人口推計のさらなる充実と活用の展開・参考資料1」
https://www.mlit.go.jp/common/001194066.pdf
※2国土交通省「立地適正化計画作成の取り組み状況」
https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_fr_000051.html


橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー(CFP® 1級FP技能士)、終活アドバイザー
長年、住宅メーカーで顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。また、自らも在職中より不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、相談、実行支援などを行っている。
共著に「日経MOOK よくわかる相続2020年版」

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