
「急な転機がきまった」「親から物件を相続した」「いま物件管理をお願いしている管理会社を変更したい」など、自身の物件を賃貸物件として運用したいが、何から始めていいのか分からない方も多いのではないでしょうか? ここでは、”初心者オーナー”が始めて物件を貸しに出す際の手順や仕組みや、入居者募集について、具体的事例を交えて公開。失敗しない賃貸経営を実現するノウハウを紹介します。
第5回:社宅として貸し出すメリットとは?
2020年12月8日
~不動産管理のポイントをもう一度おさらい~
はじめてアパート・マンションを貸す時に疑問や不安はつきないもの。考えるべきポイントについて創業1985年、管理戸数は38,000戸を超える物件管理のプロ・住友林業レジデンシャル株式会社 プロパティ事業本部上原祐介さんに話を伺った。
社宅として貸し出すという選択肢もある
――オーナーが物件を貸す場合、「個人」に貸し出すケースのほか「社宅」として法人に貸し出すケースもありますよね。社宅にする場合、オーナーが意識しなくてはいけないこと、気をつけないといけないことはあるのでしょうか?
上原:社宅の場合、「女性社員の住居はオートロックや2階以上でなくてはいけない」など、会社ごとの決まりがあるケースも多いですね。ただ、当社のように社宅についての実績やノウハウのある管理会社にお任せいただければ、特にオーナー様がすべきことはなく、個人の方に貸す場合と同じように考えていただいて大丈夫です。
ただ、社宅の場合、「連帯保証人は付けられない」というのと、オーナー様が決めた期日までに入居者の方が退去しなくてはならない「定期借家」の物件は難しいという違いはあります。
――オーナーにとって、個人に貸し出す場合と比較して「社宅として貸し出すメリット」はどこにあるのでしょうか?
上原:まず会社に貸すので安心感があるというのはありますね。管理会社を使わずにオーナー様ご自身で物件を管理される場合、苦労されるのが家賃未収時の対応と退去時の精算です。しっかりとした会社さんに貸すことができれば、こういったトラブルを抑えられるというのは大きいですね。
あと、社宅の場合は会社から家賃補助が出るケースが多いですので、借りる社員さんにしてみれば、「会社が出してくれるのだから、その分いい物件に住みたい」と思われるケースも多いです。一人暮らしでも1LDKで暮らしたいなど、条件のいい物件が決まりやすいというのはありますね。
――なるほど。逆に「築年数が経っているがリフォーム費用をさほどかけられない」など、条件で若干課題のある物件の場合、どういった解決策がありますか?
上原:その場合は前回事例として紹介しました留学生会館という方法も当社でしたらご提案できます。
賃貸住宅は供給過多と言われる中、築20年が過ぎた3点ユニットのワンルームなどもリフォーム費用をほぼかけずにそのまま留学生会館として再利用できることもありますので。

――条件のいい物件、苦戦しそうな物件、双方で解決策を提案していただけるのは助かりますね。
もう一度おさらいしたい、はじめてのオーナーが知っておきたいこととは?
――連載1回から4回までで、はじめて物件を管理されるオーナーが気を付けることについて、事例も踏まえお話しいただきました。
上原:そうですね。まず管理の前に物件に借り手さんに入ってもらう「仲介業務」があり、その後にクレーム対応、家賃の集金、退去、更新時手続きを行う「物件管理業務」があります。
――住友林業レジデンシャルさんの場合、仲介業務も行っていますよね。
上原:はい。オーナー様からお預かりしました物件の情報やお写真は速やかに、各種不動産ポータルサイトへ配信しています。
――古い物件の場合、リフォームをどこまでするかというのはオーナーにとって頭の痛い問題だと思います。
上原:水回りは効果がでるところではありますが、費用もかかるところです。当社ではオーナー様のご予算、ご希望に応じてご提案しており、リフォーム事例についても当社WEBサイトで紹介しております(http://www.sumirin-residential.co.jp/owner/reform/)。
――先に費用をかけてリフォームし、それでも借り手さんがつかなかったら不安だから、借り手さんがついてからリフォームをしたいというオーナーも少なくないかと思います。
上原:確かに不安ですよね。ただ、借り手さんにしてみれば、「あとでリフォームするから」と聞いていても、やはり古い物件を契約するのは不安なものですので、借りるのに躊躇してしまうケースが多くみられます。
そこで当社では「リフォームなど初期コストをかけた場合の長期的な収支計画が心配」というオーナー様に向け、「Re:スタート+(リスタートプラス)」というプランをご用意しております。こちらのプランでは、オーナー様の賃貸経営状況をエリアの需要変化や、建築士による建物診断など、さまざまな角度からチェックするだけでなく、リフォームやリノベーションも含めた経営改善についての提案と、中長期の収支計画も出させていただきます。
――足元だけでなく、将来までを見据えた計画もいただけると安心ですね。借り手さんがついたら次は管理になりますが、管理会社を通さず自身で管理するオーナーもいます。管理会社に依頼するメリットはどこにあるのでしょうか?
上原:やはりトラブル時ですね。機器の故障時など、オーナー様ご自身で管理されていると、まず、どこに連絡すればいいのかというところから考えなくてはいけません。
――機器の故障などいつ起きるかわかりませんから、たまたま自分の用事で忙しい時期にトラブルが重なると、大変でしょうね。
上原:そうですね、エアコンが真夏に壊れ長期間そのままになっていたり、緊急時の水回りトラブルにすぐ対処できなかったなどのケースは入居者さんの不満につながり、最悪の場合は退去になってしまうこともあります。
また、管理会社に依頼した場合でも、エアコンなどの室内設備に不具合が生じた際は、オーナー様側のご負担になるのが一般的ですが、当社の場合はオプションとして「あんしんサポートパック2」というプランをご用意しております。エアコン、給湯器、換気扇、多機能便座、浴室乾燥機をはじめ、主要な住宅設備機器11項目は、メーカー保障終了後も保障期間を無期限で延長し、修理と交換まで行っております。
――大型設備の故障や交換になる不意の出費を心配しなくていいのは、とても助かりますね。
上原:当社の「あんしんサポートパック2」のような保証サービスを提供している管理会社は他にもありますが、一部商品については「保証対象外」と契約書に明記されているケースもありますので、契約時にチェックしておきたいところですね。
ついつい目先の借り手さん探しや、管理に目がいってしまいがちになりますが、オーナー様の本当の目的は資産のよりよいご活用になりますよね。当社ではファイナンシャルプランナー保有者も多くおり、オーナー様の資産状況を把握の上、必要に応じて提携している税理士や弁護士、銀行も紹介させていただきます。5年後、10年後、さらにその先の資産の、よりよいご活用のために、ぜひご相談いただければと思います。
住友林業レジデンシャル株式会社
上原祐介(うえはらゆうすけ)さん
1997年から住友林業レジデンシャル株式会社勤務。賃貸不動産経営管理士。入社後7年程は本社にてパーキング事業を担当し、コインパーキング・月極駐車場の運営管理に関わる。その後東京で建物の賃貸管理業務を経て、さいたま営業所に6年半勤務。2015年7月に住友林業グループの住友林業ホームサービス株式会社の賃貸部門(社宅業務含む)が事業譲渡され、社宅代行業務が始まり、同年10月に現在の社宅センター長に就任。
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