社員寮の規程や規則はどう決める? 必要事項と策定の注意点を徹底解説


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社員寮を運営するにあたって、規程をどう決めれば良いか悩む担当者は少なくないでしょう。しかし規程がなければ社員寮内の秩序が乱れてしまいトラブルにつながる可能性もあります
従業員の安全を守り、安心して生活してもらうには一定の制限を設けつつ、プライベートにも配慮したルールが必要です。

この記事では社員寮の規程で決めるべき内容や作成・運用のポイントを解説します。規程を通じて快適な暮らしを提供し、従業員のモチベーションを高めましょう。

社員寮の規程とは? 規定・規則との違い

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そもそも規程とは、一定の目的のために定められた条項のまとまりです。社員寮における規程は寮を運営・使用するうえでの基本的なルールです。

規程と似た言葉に規定や規則があります。規定とは規程にある個々の条文のことであり、規則とは業務や手続きなどを行う際の決まりごとを指します
似た意味で使われることが多いですが、社内で意味を確認し共通の認識を作るとトラブルが減るでしょう。

社員寮において規程を定めることは法的に必須ではありません。しかし規程がなければ寮内での秩序が乱れてしまい、従業員同士、または従業員と企業でトラブルになることもあります。
従業員が安心して社員寮で過ごせるよう、さまざまな事態を想定した規程を作成しましょう。

社員寮の規程・規則で決めるべき内容

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規程・規則は社員寮におけるさまざまな生活シーンを想定して作成する必要があります

また入寮・退寮に関するルールも必要となるため、従業員が入社してから社員寮に入り、退寮するまでの流れを具体的にイメージして規程を作りましょう。ここからは社員寮の運営に必要な規程・規則を詳しく解説します。

社員寮の定義

何を社員寮とするかは個人によって異なります。規程・規則適用の前提として、社員寮の定義を決めておきましょう。1つの例として、社員寮は従業員に提供されている住居のうち単身者向けのものを指す、という考え方があります。

しかしこれまで社内でファミリー向けの住居も社員寮と呼んでいた場合、定義を変えると混乱が生まれる可能性があります。現状の呼び方を意識しながら、どの住宅に規程・規則を適用するか明示しましょう。

入寮できる従業員

従業員のうち、誰が社員寮に入寮できるのかも明記しておきましょう。

誰でも自由に入退去できる、という条件でも問題ありませんが、出入りが自由だと必要な部屋の数が予想しにくくなります。どのような従業員が社員寮を求めているか調査し、条件を考えましょう。

入寮条件の例は、次のとおりです。

・独身者
・入社して◯年以内の者
・自宅から職場までの通勤時間が◯分を超えている者

従業員間で不公平感が出ないようにすることも必要です。
また入寮届を提出する、連帯保証人を立てるなど、入寮に必要な手続きについても合わせて記載しておくのがおすすめです。入寮条件を満たしていても、社員寮を利用しない従業員もいます。
入寮する従業員の数を早めに確定させるため、入居の条件を満たしてから◯日以内に入居する、といったルールも決めておきましょう。

寮費

寮費として、社員寮で暮らすに当たって必要なお金を明記しましょう。家賃、光熱費、駐車場代、修繕費など内訳を詳しく書く必要があります。また建物に従業員が損害を出した場合の対応も入れておくとよいでしょう。
一般的なハウスクリーニングで清掃できない汚れや破損については、従業員に修理修繕費用を負担してもらいましょう。修理修繕費用を自己負担とすることで、きれいな状態で社員寮を利用しようという意識も生まれます。

管理の体制

もしものときに備え、誰が社員寮を管理しているか明確にしましょう。また管理者がいつ寮にいるのか、管理者不在のときはどこに連絡すればよいかも記載してください。

生活するうえでのルール

社員寮を利用するうえでの基本的なルールも明記してください。記載すべきルールには、次のようなものがあります。

・門限
・消灯時間
・外泊する場合の手続き方法

門限に遅れる場合、どこに連絡すればよいのかも記載しましょう。従業員のプライベートに干渉するようなルールを作る際は、理由を説明し従業員に理解を求めることも必要です。

また従業員自身で掃除や管理を行う場合、担当者の決め方や業務の範囲を明文化しておきましょう。誰が担当なのかお互いに把握しておかなければ、清掃や管理が行き届かず衛生面での問題が発生しやすくなります。

禁止事項

社員寮でどういった行為が禁止とされているか明確にすることで、トラブルを防ぎましょう。禁止事項の例としては次のとおりです。

・部外者の立ち入り
・ペットの飼育
・部屋の転貸
・部屋の勝手な改装
・危険物の持ち込み
・所定の場所以外での喫煙

禁止事項に違反した場合の対処法も明記し、禁止行為については厳しい対応を取ることをあらかじめ伝えておきましょう

そして騒音を出さないようにすること、共有スペースで迷惑行為をしないことなど、他の入居者との揉め事を防ぐためのルールも明文化してください。

入居者同士のトラブルがあった場合、規程・規則を根拠としたスムーズな対応が取れるようさまざまなケースを想定しましょう。

退寮の条件

規程に違反する事項があった場合、企業側の判断で退寮させることができるよう定めておくのがおすすめです。
退寮に当たって必要な手続きと退寮の流れも合わせて記載しましょう。退職や転勤などで社員寮を出る場合、何日以内に準備を済ませる必要があるのかも明記してください

社員寮規程(規定)の参考例

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社員寮の規程・規則に法的な定めはないため、書き方は自由です。しかし具体的な例がないと作成イメージが湧かないと悩む担当者は少なくありません。規程・規則は次のような流れで記載しましょう。

・規程を作る目的
・社員寮の定義
・入寮できる従業員
・入寮の方法
・管理体制
・禁止事項
・生活するうえでのルール
・退寮の条件
・退寮の方法
・寮費

記載の順序は自由ですが、従業員にとって読みやすい流れになっているか意識して作成すると良いでしょう。
「その他」として、定めのない事態が発生した場合は担当部署において協議のうえ対応を決定する旨も記載しておくと安心です

またいつから規程・規則を実施したかわかるよう、規程を定めた日時も記載してください。変更があった場合、規程の変更をした日時・変更内容が実施される日時も追加しましょう。

社員寮の規程や規則を作成・運用する際のポイント

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社員寮において規程や規則を作成・運用する場合は慎重な判断が必要です。程や規則の内容によっては法律に関連する場合もあるため、運用の前にしっかりと確認しておきましょう。

ここからは社員寮の規程・規則に関して意識すべきポイントを3つ解説します。

労働基準監督署への届出が必要か確認する

社員寮の規程を定めることで賃金や賞与に変化が起こる場合、労働基準監督署に届け出る必要があります。

参考:総務省「e-Gov法令検索 労働基準法」・https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

ただし賃金や賞与などに影響しない規程の場合、社内に周知すれば問題ありません。届出が必要な内容か判断できないときは、総合労働相談コーナーに相談しましょう

総合労働相談コーナーでは、法令に直接違反しない労働条件の変更に関して聞くことができます。相談窓口は各都道府県にあるため、事業所のある都道府県で確認してください。

参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」・https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

従業員の意見を反映して決める

規程・規則で従業員のプライベートに干渉しすぎると、大きな不満に繋がります。退寮者が増えた場合、社員寮そのものが維持できなくなる可能性も少なくありません。アンケートを実施し、従業員の意見を取り入れた規程・規則を作りましょう。

感染症流行の影響もあり、集団生活に不安を感じる従業員は多くいます。また個人の意見や生活スタイルを重視する社会的な流れもあるため、個人の暮らしが守られているか意識して規程を作ることが重要です。

集団生活を前提とする社員寮の運営が難しい場合、設備の整った個室を持つ借り上げ社宅も検討しましょう。

規程の内容は従業員に周知する

社員寮の規程・規則を定めたら、規程の内容がしっかりと守られるよう従業員に周知しましょう。周知が不足していると、規程・規則が守られずトラブルに発展する可能性もあります。規程・規則をまとめた冊子や社員が閲覧できるウェブページ等を作成すると良いでしょう。

もし規程を変更した場合は、変更点をわかりやすく記載して周知してください。入居誓約書も変更し、変更後の規程・規則で問題ないか確認してもらいましょう。

まとめ:時代に合った規程でトラブルを減らそう

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トラブルを防ぐため、社員寮の運営には規程・規則が必須です。ただし時代に合わないもの、厳しすぎるものだと不満を持つ従業員は増えます。時代の流れや従業員のニーズに合わせて、規程・規則の内容は適宜見直すことが必要です。

社員寮は築年数が古いものが多く、維持管理にコストがかかることから、2020年以降は借り上げ賃貸住宅へ移行する企業が増えています

借り上げ社宅は家賃以外の維持管理コストが小さいうえ、築年数や広さなどの選択肢が豊富です。またプライベートな時間を重視する従業員のニーズにも、借り上げ社宅ならすぐに対応可能です。
従業員がより満足して暮らせるよう、社宅の種類、借り上げ社宅のメリットについて改めて確認しましょう。

社宅制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事「【社宅制度を徹底解説】制度の仕組み、メリット・デメリット、契約・手続き方法まで」もぜひチェックしてください。

(マイナビBiz編集部)
※本記事内の情報は2022年12月時点のものです。


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