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融資戦略における物件売却の最適な立ち回りは何か? 3つのポイントと避けるべき行動を解説

2021年5月7日

半沢大家

2019年まで銀行員、現在は証券アドバイザーとして勤務する兼業大家。2018年以降、3年間で計7物件、融資を使って購入。現在アパート4棟、駐車場用地1筆、戸建て1棟、マンション1棟を保有し、家賃年収は3,600万程度。不動産購入での銀行融資付を得意とし、投資家からの個別相談を受け、銀行打診の指南を行っている。


こんにちは、半沢大家です。
今回の記事では、売却の融資戦略について解説したいと思います。

一般的に金融機関は自分達が融資している物件が売却されることを嫌います。
その後の金利収入がなくなり、支店にとっては融資残高の成績が下がるからです。

一方で、銀行(特に審査部)は貸したお金を回収するという業務も重視しており、売却によりバランスシートが改善し、融資先の信用力が向上するのは好ましいと考えています。

この2つの側面を持つ金融機関に対し、私達不動産投資家はどう立ち回ればよいのでしょうか?

今回はこのテーマについて深掘りしていきたいと思います。

売却は決算評価の向上になりやすい

まずは売却後の業績変化について、銀行の目線で解説していきます。基本的に売却は、決算書評価においては銀行に好まれます。売却で利益が出るとすればもちろんですが、売却により既存の借入が減るという効果が非常に大きいです。

以前の記事で債務償還年数について解説しました。
債務償還年数とは

「(有利子負債-流動資産余力)÷(当期利益+減価償却費)=債務償還年数」

で表され、銀行の企業分析の指標の中でも特に重視されている指標です。

この数式上で考えると「売却」により、「有利子負債」は減少し「当期利益」「流動資産余力」は増加しますので、債務償還年数の減少に大きく寄与します。

また、物件にもよりますが、日本の法定耐用年数が現実の耐用年数より短いことを考えると、売却で簿価上赤字になることは稀かと思います。特に築古物件等で建物の減価スピードが速い場合、簿価上の黒字は大きく出ることがほとんどでしょう。

上記の観点から、「売却」は銀行の評価を大きく変える一手になるケースがほとんどです。自己資本比率は大きく向上し、今まで取引をスタートできなかった銀行にアプローチするチャンスをつかむことができるでしょう。

また後程記載しますが、新規銀行開拓をするならこのタイミングだと思います。

銀行からの印象を悪くする売却行動とは?

売却により融資銀行(支店)の業績は低下します。銀行は支店同士で成績の競争を強いられており、その項目に「貸出末残(まつざん)」「貸出平残(へいざん)」という項目があります。

貸出末残は3月、9月末での融資の残高、貸出平残は半期での残高の平均値を表します。

この数字について各支店は一定のノルマが課せられており、支店長を中心に目標達成に向けて活動しています。

余談ですが、よく言われる2月、8月に持ち込んだ案件が通りやすいという理由は、3月、9月の末残を確保するため多少の事には目をつぶり支店長・担当者が頑張ってくれるからです。上記の時期は現場の熱意が上がる可能性があるので、少なくとも支店は乗り気で動いてくれます。

もちろんそれだけで全ての融資が通るわけではありません。審査部にとっては支店の競争など関係の無い領域なので、ダメな案件はダメ、と判断されることも多いです。しかし、銀行は縦社会なので支店長の地位が審査役より上だったり、かつての先輩後輩だったりするとパワープレーが通ることもあります。(銀行審査は外部から見ると公平に見えますが、意外と内部の様々な思惑が交錯して審査判断されているものが多いです。もちろん一部の話ですが。)

いずれにしても、銀行員は末残という概念を意識して動いているということを念頭に置いていただければと思います。

そして、上記を踏まえると支店に嫌われる行動というのは「予定されていない突然の売却(特に3月9月)」と言えると思います。月末や期末に近づけば近づくほど、担当者・支店長は業績の着地に狂いはないか、想定通りに数字が進むかをチェックしだしますので、ここでの不動産融資残高の一括返済は本当に嫌がられます。(自分の担当先でこういったことが起きると、寿命が縮みます。3月9月の期末にこんなことがあろうものなら「お前のせいで支店の目標が達成できなかったじゃないか!」という職場からの圧を感じます。笑)

当然銀行側に返済を止める権利はないので、こちらから強く主張すれば返済は受け付けられますが、多かれ少なかれ遺恨を残すことになると思います。不動産賃貸業において、銀行は必要不可欠なパートナーですから、長期での取り組みを念頭に置いている人ほど注意していただければと思います。

また、「長期融資を引いたうえでの短期売却」は更に嫌われます。先ほどまでの業績上の理由に加え、広義の資金使途違反と捉えられる可能性があります。銀行側からすると「この人はまた短期売却するかもしれないから次の融資は慎重にしよう」と考えます。

これも長期的な関係を目指す人は注意したほうが良いでしょう。

売却時に大切にしたい、3つの立ち回り方

では、物件売却においてどのように立ち回ればよいのでしょうか。

私が大事にすべきと考える事は以下の3つです。
①売却の方針が固まったら、事前に銀行に理由を含め通知する
②売却し融資残高が減る際は、その支店に別の案件を持ち込み、支店の末残減少を抑える気遣いをする
③(新規融資に向けて)売却の事実を当事者の銀行以外にアピールする

①は既存の銀行との関係性を維持しながら、新規の案件を取り込むという作戦です。これは私の感覚ですが、銀行は売却した顧客を嫌うのではなく、事前の対話なく一方的に話が進むことを嫌います。事前の根回しを行い、相手の状況も考慮したうえでの行動であれば心象が下がることはないでしょう。(ただし、長期融資の短期売却は例外ですが)

②のやり方は、言い方に気を付ければ納得して動いてくれるだろうと考えています。「手間をかけて申し訳ない」(銀行側とすると、新規融資が通っても売却もあるから残高の増加は少ない)「ただ、今回の売却でBSは大きく改善するからなんとかよろしくお願いします」という姿勢で対話に臨むのがいいのではと思います。

①、②は売却における回復の行動であるのに対し、③は攻めの行動です。返済に関係しない銀行からすれば、売却は財務状況の大幅な改善のみの事象であり、デメリットはありません。決算書や月次試算表で売却結果を数字に表し、新規銀行を含めた他の銀行にアプローチしに行くべきだと思います。

私もそうですが、一般的なサラリーマン大家で資産背景もない場合、スタートの取引銀行は限られています。その中でいかに融資を継続するかについて今までの記事で述べてきましたが、売却によりBSの大幅な改善が行われると、決算書のギアが1段変わります。そのギアが変わった段階で、もう一度銀行回りに行くのも良いと思います。以前断られた銀行や、敷居が高くて申し込みまで至らなかった銀行においても、売却を経て入口の扉が少し開いているかもしれません。

銀行への立ち回り方に気を付けてチャンスを最大限に活用しよう
今回は売却での立ち回りについて解説しました。

銀行融資における売却のメリットは財務状況の改善と、それによる新規銀行との出会いのチャンスを広げられること。

デメリットは既存銀行の心象低下の危険性がある事です。

不動産賃貸業を長い目線で捉えれば、既存銀行との関係悪化は避けるべきだと私は思います。よって売却についても出来る限りの注意を払い、取り組むべきだと考えます。

「既存銀行との関係は断ち切らず、それでいて新規銀行が融資したくなるような決算書を作る」

売却を行う際は、上記に注意して銀行との対話に臨みましょう。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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