中古アパート経営で失敗しないために知るべき減価償却の考え方を解説
2021年4月22日
利回りの高い中古アパートは、投資家にとっては魅力的に映るかもしれません。しかし、中古アパートは耐用年数が短いため、キャッシュフローが悪化しやすいことを理解しておく必要があります。
中古アパートに投資をするのであれば、減価償却が終わった後のことを考えて投資を判断することが失敗を防ぐポイントです。
この記事では、中古アパートの減価償却方法や中古アパートを購入する際の注意点について解説します。
1.減価償却とは
減価償却とは建物の取得原価を各会計期間において費用として配分する会計上の手続きのことです。減価償却の手続きによって生じる費用のことを「減価償却費」と呼びます。
建物購入額の全額を購入した年に費用計上するのではなく、耐用年数の期間にわたり、少しずつ分散して費用計上していく手続きが減価償却です。
例えば中古アパートの建物の取得価格が5,000万円で、残存耐用年数が10年だった場合、購入後、500万円ずつの減価償却費が10年間にわたり計上されます。
減価償却費は、計上される期に実際に支出が出る費用ではありません。会計の手続き上、生じているだけの費用であるため、キャッシュアウトがないことが特徴です。
ただし、費用であることから、減価償却費が計上されることで計算される会計上の利益は小さくなります。
税金は会計上の利益に対して課税されるため、利益が小さくなると税金も小さくなります。よって、利益を小さくしてくれる減価償却費には節税効果があるのです。
減価償却費は、実際のキャッシュアウトがないにもかかわらず、税金を少なくしてくれることから、アパート経営をする上で有益な費用となります。
2.中古アパートの減価償却方法
減価償却費は、耐用年数の期間において計上されます。新築建物の場合、耐用年数は建物の構造によって何年になるか定められています。構造別にあらかじめ法律で定められている耐用年数のことを「法定耐用年数」と呼びます。
新築建物の構造別の耐用年数は下表のとおりです。
建物構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
木造モルタル | 20年 |
鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 |
鉄骨造(4mm超) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
中古アパートは既に新築から一定期間を経過しているため、建物の残存耐用年数を求めることが必要です。
耐用年数の求め方には、「法定耐用年数を満了しているケース」と「法定耐用年数を満了していないケース」で計算方法が異なります。
それぞれの耐用年数の求め方は下表のとおりです。
【経過状況別の耐用年数求め方】
法定耐用年数を満了しているケース | 法定耐用年数 × 0.2 |
法定耐用年数を満了していないケース | 法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2 |
例えば、木造の築25年の中古アパートを購入するケースを考えます。木造の耐用年数は22年ですので、築25年のアパートは法定耐用年数を満了しているケースに該当します。
よって、木造の築25年の中古アパートの耐用年数は以下のとおりです。
中古アパートの耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2 = 22年 × 0.2 ≒ 4年(端数は切り捨て) |
次に木造の築15年の中古アパートを購入するケースを考えます。木造の耐用年数は22年ですので、築15年のアパートは法定耐用年数を満了していないケースに該当します。
よって、木造の築15年の中古アパートの耐用年数は以下のとおりです。
中古アパートの耐用年数 = 法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 0.2 = 22年 - 15年 + 15年 × 0.2 = 22年 - 15年 + 3年 = 10年 |
耐用年数を求めたら、償却率表により耐用年数に対応する償却率を求めます。建物の償却方法は、「旧定額法」と「定額法」がありますが、平成19年4月1日以後取得の建物は定額法を用いて計算します。償却率は、耐用年数が4年なら「0.250」、耐用年数が10年なら「0.100」となります。

2007年(平成19年)4月1日以後に取得した資産の定額法による減価償却費の計算式は以下の通りです。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率 × 業務に供された月数 ÷ 12 |
例えば、建物購入額が1,000万円で、償却率が0.250(耐用年数4年)、業務に供された月数が12か月の場合、減価償却費は以下のように計算されます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率 × 業務に供された月数 ÷ 12 = 1,000万円 × 0.250 × 12か月 ÷ 12 = 250万円 |
3.減価償却が終わったらどうなるか
中古アパートは新築アパートとは異なり、耐用年数の期間が短いことが特徴です。減価償却費は耐用年数の期間内にしか計上されないため、耐用年数が過ぎると減価償却費は計上されないことになります。減価償却費が計上されなくなると、会計上の利益が大きくなるため、一気に税金が増えます。
一般的に、新築アパートの場合には、アパートローンの返済期間は耐用年数で設定しますので、耐用年数の満了と同時に借入金の返済が終了します。
新築アパートで投資をした人は、耐用年数の満了によって税金は増えますが借入金の返済も終わっているため、耐用年数の満了がそれほど負担にならないことが多いです。
一方で、中古アパートを購入した人は、耐用年数満了以降も借入金の返済が残っているケースが多いことから、キャッシュフローが急激に悪化し、耐用年数満了以降のアパート経営が苦しくなることがよくあります。
中古アパートは、利回りは高いですがキャッシュフローが早期に悪くなるという点がデメリットです。
4.中古アパートを購入する場合の注意点
中古アパートは耐用年数が短いことから、購入後、キャッシュフローが早期に悪化します。そのため、中古アパートを購入する際は、以下の点を意識することが必要です。
・できるだけ耐用年数の長い物件を選ぶこと
・将来買い替えることも視野に入れること
1つ目は、できるだけ耐用年数の長い物件を選ぶことです。築年数はできるだけ浅い物件の方が減価償却費を計上できる期間が長く続きます。
2つ目は、将来買い替えることも視野に入れておくことです。中古アパートは、耐用年数が短いことから、耐用年数満了前に他の物件に買い替えてしまうこともキャッシュフローの悪化を回避する方法になります。
値崩れせずに売却しやすいアパートは、やはり立地がよく築年数が比較的新しいアパートです。
将来、売れるような中古アパートを購入し、耐用年数が満了する前に買い替えるような投資戦略も検討しておきましょう。
5.先を見据えた不動産投資を
以上、中古アパート経営の減価償却について解説してきました。減価償却は耐用年数の期間だけ生じる会計上の費用のことです。
中古アパートの耐用年数は、法定耐用年数を満了しているケースと満了していないケースで計算方法が異なります。
減価償却が終わってしまうと、減価償却費による節税効果がなくなるため、税金が高くなります。
中古アパートでは、耐用年数満了以降にキャッシュフローが極端に悪化しますので、できるだけ耐用年数の長い物件を選び、将来の買い替えも視野に入れて投資をすることをおすすめします。

竹内英二
不動産鑑定士・賃貸不動産経営管理士。不動産開発業務や不動産コンサルティング業務を経験し不動産投資の分野に精通している。代表取締役を務める(株)グロープロフィットは、不動産鑑定士事務所及び宅地建物取引業者であるため、最新の不動産動向も把握。
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