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賃貸マンションの建て替えで生じる立ち退き料の基礎知識と相場を解説

2週間前

賃貸マンションの建て替えには立ち退きという悩ましい問題が存在します。立ち退き料は金額が決まっているものではなく、妥結には一定の交渉も必要です。実際問題として、立ち退きはマンション建て替えの大きなハードルとなっています。

では、マンション建て替えに必要な立ち退き料は、いくらくらいなのでしょうか。この記事では「マンション建て替えの立ち退き料と相場」について解説します。

1.立ち退き料とは

入居者と普通借家契約で賃貸借契約を締結している場合、賃貸人から契約の更新を拒絶するには「正当事由」と「立ち退き料」の2つが必要です。普通借家契約とは、更新のある契約になります。

正当事由とは契約を解除するための正当な理由のことです。立ち退き料とは、正当事由を補完するために支払われる金銭になります。

立ち退き料とは弱い正当事由を補完するための金銭であることから、正当事由と立ち退き料の関係を示すと以下のような関係になります。

正当事由が強いと立ち退き料は安くなりますが、正当事由が弱いと立ち退き料が高くなる関係です。

強い正当事由には、「自己使用の必要性」が考慮されます。例えば、不動産を1つしか持っておらず、やむを得ない事情でどうしてもその家に住まなければならないようなときは、正当事由が強く、立ち退き料は相対的に安くなります。

一方で、マンションの立て替えのように、老朽化した賃貸物件の単なる建て替えは弱い正当事由に該当します。

老朽化した物件でも、建物が耐用年数に達しており、朽廃、破損が甚だしく、早晩朽廃を免れない状態が明らかである場合は、強い正当事由として認められます。

しかしながら、現実的には早晩朽廃を免れない状態になるまでマンションを建て替えないことはないことから、多くのケースではマンション建て替えの正当事由は弱い部類となってしまいます。

老朽化した賃貸物件の建て替えは、それだけでは借主を退去させるだけの十分な理由にならないため、結果的に相応の立ち退き料を払う必要があるのです。

なお、立ち退き料の法的根拠は、借地借家法第28条に定められています。条文上の「財産上の給付」立ち退き料に該当します。

借地借家法第28条

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件) 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

2.立ち退き料の求め方

立ち退き料に関しては、一定の算式が存在するわけではなく、以下の3点が考慮されて決定されます。

【立ち退き料の構成要素】

1.「移転費用」の補償
2.「消滅する利用権」の補償(借家権価格のこと)
3.「営業権」の補償

1つ目の「移転費用」の補償とは、いわゆる引っ越し代や新しい物件の仲介手数料等です。立ち退き料としては、最低限、引っ越し代等は払う必要があります。

2つ目の「消滅する利用権」の補償というのは、「安く借りている権利」のような価値を数値化したものです。

例えば、今のマンションを相場の賃料よりも安く借りている場合、「借り得感」という価値が発生します。

立ち退きによって借り得感という利用権が消滅することから、それを補償してあげるという考えが消滅する利用権の補償です。

「消滅する利用権」は、別名、「借家権」とも呼ばれており、不動産鑑定評価基準においては、以下のように求めるものと定められています。

【不動産鑑定評価基準による借家権の求め方】

当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との差額の一定期間に相当する額に賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額

少し長い文章ですが、簡単な式で表すと以下のような式で計算されるものになります。

借家権 = (移転先の賃料 - 今の賃料) × 1.5~2年程度

算式からも分かるように、借家権は今のマンションを安く貸していればいるほど、高くなります。

立ち退き料は「恩を仇(あだ)で返す」と表現されることもありますが、安く貸していると立ち退き料が高くなるのは、補償の中に借家権価格が含まれているからです。立ち退き料を安くするには、今の入居者の賃料を上げておくことがポイントとなります。

3つ目の「営業権」の補償というのは、店舗等の営業用の賃貸物件で発生する補償です。マンションのような居住用物件では、営業権の保証は不要となります。

営業権の補償は、一般的に相当な高額となり、物件によっては億単位となるようなこともあるため、裁判になることも多いです。

仮に、賃貸マンションの1階部分に店舗が入っている場合には、その店舗の立ち退きには営業権の補償も必要となります。

3.立ち退き料の相場

賃貸マンションの場合、立ち退き料の相場は50万円~100万円程度です。

マンションの居住用部分では営業権の補償は発生しませんので、立ち退き料は以下の算式で求められることになります。

立ち退き料 = 移転費用 + 借家権価格

賃貸マンションの場合、相場で貸しているケースが多いため、明確に「借り得感」が発生している物件は少ないと思われます。

そのため、実質的には借家権価格はゼロの物件が多く、「ほぼ移転費用のみ」が立ち退き料に相当することになります。

移転費用としては、主に以下のものが挙げられます。

・引っ越し代
・新たな物件を借りる際に発生する仲介手数料
・新たな物件の礼金
・今の物件の返還敷金と新たな物件の差額

その他として、実際には話を早くまとめるために、引っ越し代等にも「多少の色」を付けてあげることが一般的です。

よって、「移転費用+α」が立ち退き料となることが多く、立ち退き料の相場としては50~60万円、高くても100万円程度となるイメージになります。

まとめ

以上、マンション建て替えの立ち退き料と相場について解説してきました。

立ち退き料とは弱い正当事由を補完するための金銭のことです。一般的な市場賃料で貸し出しているマンションの立ち退き料の相場としては、「移転費用+α」となります。立ち退き料を決める考え方の参考にしていただければ幸いです。


竹内英二

不動産鑑定士・賃貸不動産経営管理士。不動産開発業務や不動産コンサルティング業務を経験し不動産投資の分野に精通している。代表取締役を務める(株)グロープロフィットは、不動産鑑定士事務所及び宅地建物取引業者であるため、最新の不動産動向も把握。

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