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競合の少ない物件に付加価値をつけて差別化を図る。投資弱者なりの戦略で挑む元サラリーマン大家さん【夏山栄敏さん】

2020年7月29日

ランチェスター戦略を投資に活用! ワケあり築古アパートが人気物件に。

自宅マンションのローンを抱えていた50歳の時に、若い友人の影響で初めて不動産投資にチャレンジした夏山栄敏さん。投資をスタートして約10年間、現在は、中古から新築まで合わせて14棟126戸を保有しています。最近は、築古のワケあり物件を再生し、「賄い付きアパート」という新たな価値観を創出。仕事のために身に付けたランチェスター戦略を活用した賃貸経営術をお聞きしました。

【夏山栄敏さんの著書】
【夏山栄敏さんの所属するランチェスター協会】


スーパー大家ヒストリー

2007年 50歳直前にして、1棟目のRCマンションを三重県松阪市に購入
2009年 2棟目のRCマンションを埼玉県所沢市に購入
2010年 3棟目のRCマンションを千葉県松戸市に購入
2012年 4棟目のRCマンションを東京都葛飾区に購入
2015年 東京都文京区小石川に新築RCマンションを建設
2016年 埼玉県川口市に新築重量鉄骨造マンション2棟を建設
2018年 神奈川県川崎市に築古アパートを購入
2019年 著書『投資オンチでもできた弱者逆転の「ランチェスター式不動産投資成功術」』(セルバ出版)を上梓。


投資オンチが老後を見据えて不動産投資に挑む

企業に勤めていたときは、主に営業の教育を担当しており、研修に役立てるために販売心理学などのセミナーに参加していました。そこで知り合った若い友人が、九州に古いアパートを購入して大家業を始めたというのです。その頃の私は定年まで残り10年となりながら、購入した自宅マンションのローンも残っていたため、老後の生活に不安を感じていました。株やFXなどに手を出したこともありましたが、うまくいかず、妻からは投資オンチとからかわれる始末です。ところが友人の話から、賃貸経営は不況になっても賃料がほとんど変わらない堅実な投資だということがわかり、自分も挑戦してみようと思いました。

とはいえ、いきなり不動産屋で物件を紹介してもらっても、言っていることが全然理解できません。ですから、そこからは猛勉強です。まず、不動産関連の書籍を読み、単発のセミナーだけではなく、有料の不動産投資の学校にも通いました。ただ、知識をつけても不動産屋で「まだ物件を持っていない」と言うと素人扱いされ、まったく相手にしてくれないのです。だから、実は自宅マンションのことだったのですが、「物件を持っています」と言っていました。

1年近くは買い付けを入れても、なかなか購入まで至りませんでしたが、その間に物件を見る目を鍛えることができました。また、自分は、資金が潤沢でない状況で、自分なりの戦略を考えていくうちに、長いローンが組めるRCの一棟ものが合っていると思ったのです。ただし、都心では予算に合う物件がほとんどないので、日本全国をターゲットにしました。地方の物件は土地が広く建物が大きいため、積算評価が高いというメリットもあります。ようやく購入できたのは2007年、三重県松坂市のRCマンションでした。築5年で2LDKのファミリータイプ住戸が12戸、駐車場が1戸につき2台あるという好条件の物件で、利回りも10%以上です。その代わり、融資特約なしという条件はありましたが、メガバンクでフルローンを組むことができました。

成功者の戦略はそのまま真似できない。弱者なりの戦略が必要。

私が自分なりの不動産投資をする上で軸にしたのは、仕事で身に付けたランチェスター戦略です。ランチェスター戦略とは、戦力に勝る「強者」と戦力の劣る「弱者」に分け、それぞれがどのように戦えば有利に運べるかを考えるための理論です。マーケティングや経営戦略にも用いられている手法です。これを不動産投資に置き換えると、強者は資金力も経験もありますから、なにをやっても成功します。不動産投資で成功した方のセミナーでお話を聞くとうらやましくなりますが、そのまま真似しても決してうまくいきません。ですから、初心者である私の場合は、弱者としての自分の戦略を立てて、それ以外のことには手を出さないことに決めました。

私が立てた戦略は、できるだけ人がやらないところを狙うことです。1億円以内の物件は競争が激しい一方、2億円を超えると競合は一気に少なくなります。区分所有も魅力がありましたが、長期のローンが組めるRCのファミリータイプ一棟物件にターゲットを絞りました。2009年には2棟目として埼玉県所沢市にRC8階建て21戸のマンションを購入しました。今でも所有していますが、賃料を上げることで利回りも良くなり、とても安定している物件です。

しかし、中古物件を2棟買った後、2013年頃から次第に中古RC物件の価格が高騰してきました。そこで、土地を仕入れて新築を建てる方向に戦略を転換。新築は時間も手間も掛かりますが、自分で家賃を高く設定できるため、利回りは高くなります。加えて、今までの経験を活かした物件にできる魅力もありました。東京都文京区に土地を購入し、2015年にワンフロア1戸のみの贅沢な間取りにバイクガレージを兼ね備えるという差別化を図ったマンションが完成しました。

ワケあり築古物件に入居者食堂をプラス。キャンセル待ちの出る人気物件に。

近年は中古物件と土地の価格が高止まりし、購入が難しくなっています。そこで、2018年に購入したのが神奈川県川崎市の“ワケあり築古物件”です。約850平米の土地に、築50年ほどのアパートが2棟建っていました。建物は傾き、擁壁は崩れていましたが、とにかく安いのが魅力でした。民泊に利用しようと思い、修繕に加えて非常用の照明などを取り付けましたが、役所で相談すると法律上できないと言われて断念。シェアハウスへの転用も考えましたが、見積もりを取ってみるとまったく採算が合いません。

途方に暮れていた時に、セミナーでご一緒した不動産屋の社長さんから、入居者向けの食堂の話を聞きました。学生向けの賃貸物件に食堂を運営し、低価格で提供しているのです。これは面白いと思い、同じようなことができたらと考えました。義理の妹の夫が調理師だったために声を掛けたところ、とんとん拍子に話が進み、住み込みで管理と調理をしてくれることに。2階にあった前オーナーの住居のうち、一部を管理人住居として使い、残りを食堂とレンタルのコワーキングスペースにしています。

こうして、建物も部屋も新築同様の「賄い付きアパート」が完成したのですが、築年数と間取りだけで判断されてしまうために、不動産屋はまったく客付けしてくれません。困り果てて、シェアハウス紹介サイトを運営する知人に相談したところ、アパートを記事として取り上げてくれました。そこから数人が入り始めたと思ったら、一気にブレークです。初めはまったく見向きもされなかった物件なのに、不思議なものです。

外国人の入居者も多く、食堂ではみんなが集まってワイワイとにぎやかですよ。月に1回程度、庭でバーベキューパーティーなども開いています。これはランチェスター戦略で言うところの接近戦。入居者とのコミュニケーションを重視しており、基本的に物件の掃除も私と家内でしています。また、ハロウィーンやお歳暮などの入居者へのプレゼントも欠かせません。入居者と親しくなることで、要望もつかめますし、長期の入居にもつながっているようです。

築古物件では工事も業者に頼むだけでなく、漆喰塗料を塗ったり、水回りを替えたりするなどのセルフリノベーションにもチャレンジしています。自分が勉強になる以上に、楽しみながらやっています。現在、新たな土地も入手しているので、さらに大規模な新築を計画しています。単に規模を追い求めるというのではなく、新しい生活様式を見据えながら、これからの賃貸に求められるのはどんなものなのかを考えています。限界点はありません。チャレンジしていくたびに、さらにその先に新しい可能性が見つかっています。


明日から真似したいスーパー大家の裏技

自分なりの戦略をしっかり持つ

成功した人のやり方をそのまま真似してもうまくいきません。立ち位置によって、とるべき戦略は180度違うのです。成功者は強者の戦略で勝てる一方、初心者はまったく逆の弱者の戦略を考えるべきです。私の場合はローンが組める中古RC一棟ものに照準を合わせて、最初はそれ以外のものには手を出しませんでした。

必ず現地で物件を確認する

実物を見ることは重要です。土地や建物だけでなく、必ず周辺も見ています。最寄り駅の影響は大きいですから、車で行くよりも電車で行くのがおすすめ。実際に歩いてみて、どれくらいの感覚なのかをつかんでおくことは大切です。自分の目で見て、経験しておかないと失敗につながります。

管理を任せっきりにしない

物件管理は管理会社にお願いしていますが、妻と二人で物件の掃除を行なっています。掃除をしていると、入居者からニーズや困りごとを直接聞くことができますし、物件に愛着もわきます。また、入居者を集めてイベントを開催したり、入居者へのプレゼントをしたりもしています。入居者と良い関係性を築くことで、マナーを守って物件に入居してくださいますし、長期入居にもつながっています。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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