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定期借家のメリットとデメリットとは? 貸主が知っておくべき基礎知識

2020年7月17日

賃貸借契約の種類のひとつに定期借家契約があります。定期借家契約は、貸主にとって有利な契約ですので、特徴をしっかり理解すれば有益な契約として使うことができます。

では、定期借家にはどのような特徴があるのでしょうか。この記事では、「定期借家のメリットとデメリット」について解説します。

1.定期借家とは

賃貸借契約には「普通借家」と「定期借家」の2種類があります。普通借家とは契約期間満了時に更新できる契約であり、定期借家とは更新できない契約のことです。

普通借家契約では、借主が更新の意思を示せば更新することができ、貸主が更新をしたくない場合には正当事由と立ち退き料が必要となります。正当事由とは、借主を退去させるための正当な理由のことです。

賃貸借契約書の中に、更新に関する定めがある場合には、その契約は普通借家契約に該当します。

一方で、定期借家契約では更新という概念がなく、期間満了時に確定的に賃貸借契約が終了します。もちろん、契約終了時における貸主からの立ち退き料も不要です。

仮に定期借家契約で、借主との賃貸借契約を継続したい場合は、「再契約」となります。再契約とは更新とは異なるため、新たに賃料や契約期間等を取り決める新規の契約と同じ扱いです。

普通借家契約は、契約を解除しようとすると貸主に立ち退き料が必要とあることから、借主の権利が強力に守られている契約となります。

それに対して、定期借家契約は立ち退き料が不要であることから、貸主に有利な契約と位置付けられています。

2.定期借家のメリット

この章では定期借家のメリットについて解説します。

2-1.立ち退き料が不要となる

定期借家では立ち退き料が不要となる点が最大のメリットです。立ち退き料とは、普通借家契約において貸主の都合で賃貸借契約を解除したい場合に生じる金銭のことです。

そもそも、貸している不動産は賃貸人にとって自分のものですが、借地借家法では自分のものを返してもらうのに借りている人にお金を払わなければいけないということを定めています。

常識的に考えて、自分のものを返してもらうのに、借りている人にお金を払うというルールはかなり不合理です。

普通借家契約は、このような不合理なルールを貸主に課すことで、借主の権利を強力に守っています。

定期借家契約では、立ち退き料がないため、契約期間が満了すれば自分のものがお金を払わずに返してもらえるという契約となっています。

2-2.「1年未満」の契約ができる

定期借家契約では、賃貸借契約の期間を1年未満とすることができます。一方で、普通借家契約で契約期間を1年未満とすると、「期間の定めのない契約」となってしまいます。

定期借家契約では、例えば1か月とか6か月といった短期の賃貸借契約を定めることができ、マンスリーマンション等の契約にも利用することが可能です。

2-3.家賃減額請求権を排除できる

定期借家契約では、特約によって借主からの家賃減額請求権を排除できる点がメリットです。

例えば、定期借家契約では「借主からの賃料減額は請求できないものとする」といった特約が有効となります。借主からの家賃減額請求権を排除するような特約を「不減特約」と呼びます。

一方で、普通借家契約では、賃貸借契約書上に貸主と借主の合意の上で不減特約を入れて締結したとしても、その不減特約は無効です。

不減特約は借主にとって不利な特約であることから、普通借家契約では無効扱いとなります。

そのため、不減特約を有効に機能させたい場合には、定期借家契約で締結することが必要です。

3.定期借家のデメリット

この章では定期借家のデメリットについて解説します。

3-1.住居系は賃料が安くなる

定期借家契約では、住居系の場合、賃料が安くなるという点がデメリットです。定期借家契約は借主側に不利な契約であるため、創設当初は店舗や事務所、住居等、全ての用途で賃料が安い傾向にありました。

しかしながら、特に店舗では早くから銀座等の一等地で定期借家契約の利用が進んだため、普通借家契約と賃料相場が変わらない状況が浸透しました。

店舗では、立ち退き料が法外となるため、オーナー側が自らを守るために積極的に定期借家を取り入れた結果、今では多くの店舗で定期借家契約が採用されています。

一方で、住居系ではまだまだ普通借家契約が多く、借主に不利な定期借家では相場賃料でなかなか貸せないのが実態です。

立地や契約期間にもよりますが、住居系の定期借家の賃料相場は普通借家の50%~80%程度となります。

3-2.契約締結時と終了時の手続きが煩雑となる

定期借家は契約締結時と終了時の手続きが煩雑となるという点もデメリットとして挙げられます。

契約締結時には、貸主は借主に対し定期借家である旨を記載した「書面」を交付して説明することが必要です。この書面交付をうっかり忘れてしまうと、普通借家契約となります。

また、契約終了時は期間満了の1年前から6か月前までの期間に賃貸借が終了する旨を通知することが必要です。

この通知は、法律上は書面の必要性は義務化されていませんが、実務上は証拠を残しておくため書面で行うことが一般的となっています。

これらの書面通知は、普通借家契約にはない手続きであり、煩雑で忘れやすいという点がデメリットです。

3-3.貸主からの中途解約はできない

定期借家契約は、借主との合意解約の場合を除き、貸主からの中途解約はできない点がデメリットです。

例えば、海外転勤中に自宅を定期借家で貸すようなケースがあります。想定外に帰国が早まってしまい、契約期間内に賃貸借契約を中途解約したいようなケースもありますが、このようなケースで中途解約できないのが定期借家のデメリットです。

貸主からの中途解約はできないため、借主と合意解約できない場合には、貸主は契約期間が満了するまで待つことになります。

まとめ

以上、定期借家のメリットとデメリットについて解説してきました。定期借家契約とは、更新ができない賃貸借契約のことです。

定期借家のメリットには、「立ち退き料が不要となる」、「1年未満の契約ができる」、「家賃減額請求権を排除できる」といった点があります。

デメリットは、「住居系は賃料が安くなる」、「契約締結時と終了時の手続きが煩雑となる」、「貸主からの中途解約はできない」です。

定期借家の特徴をよく踏まえ、利点を生かしてうまく活用しましょう。


竹内英二

不動産鑑定士・賃貸不動産経営管理士。不動産開発業務や不動産コンサルティング業務を経験し不動産投資の分野に精通している。代表取締役を務める(株)グロープロフィットは、不動産鑑定士事務所及び宅地建物取引業者であるため、最新の不動産動向も把握。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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