安定した生活と事業家としての成功を目指して。大手メーカーサラリーマンからの転身【安藤新之助さん】
2019年9月12日
「不動産投資」ではなく、「事業」ととらえ、事業家目線の運営を

愛知県を中心に不動産賃貸事業を行う安藤新之助先生。20代の建築現場左官職人、住宅営業、現場監督 外資系IT関連メーカーを経て、30歳で業界最大手ハウスメーカーに入社。30代半ばから不動産投資を開始し、43歳でサラリーマンをセミリタイアしています。サラリーマンとして活躍しながらも、不動産事業家の道を選んだ歩みについて、お話を伺いました。
スーパー大家ヒストリー
1972年…愛知県生まれ
2002年…業界最大手のハウスメーカーに中途入社
2008年…1億1,000円のRC造 築17年の一棟マンションを購入
2年で3億円、7年で10億円の資産と1億円超の家賃収入を得る
2015年…ハウスメーカーを退社。サラリーマンをセミリタイアし、以後、不動産賃貸業専業となる
安定した大企業勤務……でもこの先もずっと安泰なのか?

私は高卒後、住宅建築の左官職人から働き始め、現場監督も経験。30歳の時には、業界最大手のハウスメーカーに中途入社でき、これで安泰、と思っていました。その一方で、それまでの経験の中で、大手企業にいても、景気に左右され、上層部がリストラに遭う場面にも遭遇してきました。マイホームを建て、子どもも産まれ、もう一度将来のことを考えた時に、今のままでいいのかな、という不安が頭をよぎりました。33歳くらいの時です。
そこでさまざまなビジネス書などを読む中で、邱永漢氏の「サラリーマンをしながら、資産を築けるのが不動産」の教えが心に刺さりました。アウトソーシングのシステムも確立されており、事業としても評価されている。邱氏の話を直接聞きたくて、香港にいらっしゃるご本人に会いに行き、その思いが強くなりました。また、ロバート・キヨサキ氏の「金持ち父さん 貧乏父さん」も熟読。貧乏父さんは、まさに我が事のように思えました。
自立するなら不動産しかない。そう思い、さらに本やwebサイトから情報や不動産投資セミナーにも参加しました。今でこそさまざまなセミナーが各地で開かれていますが、当時はまだセミナーからいろんな大家さんを知る機会も少なく、こぢんまりと開かれているところもありました。
そんな中で、私はサラリーマンからセミリタイアし、不動産投資で成功している方をメンターに決め、いろいろと相談したり、参考にさせていただいたりしました。食べていけるレベルまで成功している方は、やはり自分なりの哲学をお持ちです。お話を聞くうちに、自分の方向性も定まってきます。
私が購入物件で狙ったのは、中古RCマンションの1棟買いです。一般的には小さく始めることがポイントだと言われますが、私はその逆を行きました。区分所有だと、一室あたりの投資金額は抑えられますが、退去してしまった場合に入居者がいるかいないか、100とゼロでは大きな違いがあります。その一方で、1棟買いなら、10室あるうちの1室が空いても、空室率は1割、他の部屋の家賃でローンも払えるので、自分から持ち出しになることはありません。こう考えると、区分所有は意外とリスクが高いと言えます。
また、資金調達について、ある金融機関の元支店長のセミナーで「金融機関も区分所有で数を増やすより、数千万から一億を超える大きめの物件を数棟持って事業として大きく取り組む方が、結果的に融資が付きやすい」という事を学びました。つまり、個人の資産運用よりも、事業としての価値を重視するので、実績がついてくれば小さな金額より、大きな金額の方がさらに借りやすいということも知りました。
物件調達においても一棟物でいくと方向性を決め、WEBで探し、物件の資料をもらう場面においても不動産会社へ事前に連絡し、「資料を取りに伺うので」とアポイントを取って、面談する作戦を進めました。わざわざ出向かなくても、メール1本で資料請求できますが、それでは相手に自分の印象が残りません。きちんと会って、こちらの意欲や状況を伝えることが、後の物件紹介につながります。
そして、35歳の時、1棟目となる1億1000万円の物件を地元の愛知県内で買うことができたのです。
事業家意識を持ち、金融機関が融資したくなる存在を目指す

実は1棟目には、さまざまな紆余曲折がありました。私が最初に名乗りを上げたにも関わらず、後から現金購入するという買い手が現れ白紙撤回されたり、結局、その買い手がまた取り下げたりと、数か月間、落ち着かない日が続きました。 銀行融資を取り付けるのも、労力が要ります。1棟目に限りませんが、これまで愛知県内の金融機関はすべて回り、融資交渉を続けてきました。 「貸せない」「なぜだ」で揉めたこともあります。金融機関から不利益を被る理不尽な諸条件を提示され悔しい思いをしたこともあります。ただ、金融機関はお金を貸してビジネスを成り立たせています。本来は貸したいものなのです。そこに気がつき、こちらがお金を貸したくなるような人になればいい、と発想の転換を図りました。
金融機関が好むのは、「事業」としての意欲です。貸したお金がその事業で生かされ、最終的には社会貢献に繋がる。お金の使い方として、地域の収益性や公共性、また万が一の時、返済が滞らないようリスク管理などの安全性などを重視します。不動産事業で言えば、良質な住宅を多くの皆さんに提供できるというストーリーです。
その一方で、「投資」という言葉を嫌います。金融機関にとって、投資とはギャンブル的な意味合いを含んでおり、自分さえ儲かればいいという姿勢に見えてしまうのです。 私はその点に注意し、投資ではなく賃貸事業であることを理解いただくよう、金融機関でプレゼンテーションに気持ちと工夫をこらし、融資を得てきました。
1棟目に関しては、サブプライムショック後の景気後退の時期に当たり、それまでと状況が一変。融資交渉に苦労しました。いくつもの金融機関に断られ、売り手との売却期日も迫り、焦る日が続きました。そんな中、断られた金融機関を見直し、不動産融資に積極的であったものの断られた銀行の別の支店に再度連絡を取りました。
すると、交渉の俎上(そじょう)に載ることができ、内容も評価され、ギリギリのところで融資を得られました。自分の手で勝ち取ったこの経験は、大きな糧となっています。
2008年7月に1棟目を購入した後、同年、リーマンショック直後の12月に2棟目を購入。
私はサラリーマンを続けながら、不動産事業家になりました。上からの指示や思惑で動くことが多いサラリーマン生活から一転。不動産事業家は、自分自身が事業の最終決定権者であり、自分で判断し、責任を持たなければなりません。
最初のうちは違和感がありましたが、できない理由を並べていては、前に進めません。常にポジティブに考えて、どうしたら壁が乗り切れるか、また先を見据えた行動で先手を先に打っておく。 また、不動産事業へ意欲的に臨むことで、私の経営者感覚も養われました。
当時、社内のプレイングマネージャーとして、住宅のアフターサービス業務に当たっていたサラリーマン活動にもプラスに反映。的確なコスト管理ができ、建設的な意見や取り組み方で仕事もしやすくなりました。社内での存在感も増し、2足のワラジを快適に履きこなしている感覚でした。
3棟目の壁も経験。トラブルも味方につけて、事業家として成長

1棟目、2棟目は購入後も順調。ところが3棟目の壁が待ち受けていました。2010年9月に購入した1億4,500万円の物件です。利回りは10%超。土地は400坪と広めで、積算評価や収益評価のバランスもよかったのですが、同じエリアに似たような物件がダブついており、苦戦する可能性がありました。しかも前のオーナーが手入れをせず、空室率は4割。20年近く手入れを全くしていなかった放置物件です。 ただ、自分としても3棟目。それまでの経験が生かせると思っていましたし、ボロボロ物件を再生させた他の大家さんたちの武勇伝も聞きかじっていました。自分でもなんとかできると過信してしまったのです……。
結果はトラブル続き。手入れをしても、入居者も思うように決まらず、家賃滞納者も出て、水漏れなどのトラブルにも悩まされました。設備トラブルに関しては、サラリーマンの本業で、住宅のクレーム対応に当たっていたので、その経験を活かすことができたのが幸いしました。
なんとか物件再生に成功し、結局4年間保有して、資産の組み換えで売却しました。ただ、トラブルはいろいろな副産物を残してくれました。自分にとって買ってはいけない物件もわかりましたし、トラブル対応の知識も増えました。各分野の知識や経験豊富な人脈も広がりました。
また、融資が付いてしまう怖さも感じました。融資が下りたから買おう、買わなきゃ損、と思ってしまうのです。 近年、シェアハウス投資の実態が社会問題化しましたが、あれも「買えるから買おう」とした人たちが、思わぬところにはまり込んでしまったのではないかと思います。
融資が簡単に通り、不労所得が得られるという甘い蜜に気持ちを奪われる代償はとても大きい……。日々の運営でさまざまな経験をしながら、棟数を増やし、家賃収入が1億円を超えるようになりました。 不動産事業家としては安定。一方、サラリーマンとしてもベテランの域に入り、部下も仕事も増え忙しくなるばかりです。とはいうものの、私の勤務先では中途入社者には雇用体系でガラスの天井があり、大きな昇格、昇給も望めません。結果を出しても逆ザヤになるシステムでした。
中途半端な気持ちでサラリーマンを続けるよりは、不動産賃貸業に専念し、そちらで結果を出していった方が未来のイメージがクリアになる。大切な時間も有限です。思い切ってサラリーマンを退職する時期なのでは、とセミリタイアを考えるようになりました。
ただ、懸念事項として、これまでの融資はサラリーマンとしての後ろ盾があったからこそ得られたということもあります。戦略の中で、属性重視の不動産投資ローンは組みませんでしたが、それでも、辞めたらどうなるのかと思い悩みました。ところが金融機関は、「これだけ家賃収入があるのに、サラリーマンも続けていくのか」という見方もします。事業家としての姿勢を問われるのです。
結果として、私の心配は杞憂に終わりました。サラリーマン卒業をする事に対し、金融機関はどんな反応をするのかとても危惧していましたが、心配とは裏腹に金融機関担当者たちへ伝えると、皆、私の決意を支持し、「これまで以上に応援しますよ」とありがたいお言葉をいただきました。 それまで私が自らの方向性を明確にし、公明正大に事業に取り組んできたことが評価されたのだと思い、嬉しくなりました。1棟目を購入してから7年目の2015年、私はサラリーマンをセミリタイアし、不動産専業となりました。
地域密着の意志を貫き、足で稼ぐことも忘れない、地道な活動を

現在、私は10棟173室を保有。総投資額は15億6,000万円で、総資産13億5,000万円、満室時家賃収入は13,500万円。借入金の返済比率も約40%です。 特徴的なのは、地域密着であること。物件はすべて我が地元の愛知県内です。 これは元々サラリーマンの副業で始めたため、目の行き届く範囲に留めたかったから。そして、地元の金融機関不動産業者らと盤石な関係を築きたかったからです。
本業ではハウスメーカーでクレームに対応していましたが、遠隔地の案件はスピーディーに動けません。物件管理も同じです。何かあっても高速道路を使わずに2時間以内で行ける範囲と限定し、結果的には愛知県内だけになりました。
物件が地元なら、不動産会社や工務店などの付き合いも地元が中心になります。すると地域に関するさまざまな情報も入りますし、人脈も広がります。そしてさらに地元の物件に巡り合えるようになるのです。 その姿勢は金融機関にも好印象に映ります。各金融機関は地域のために出店し、地域経済を支えています。地元物件のための融資であれば、金融機関にとっての納得感も増します。
大家さん仲間からは「もっと地方に目を向ければ、利回りのいいところもあるよ」と勧められたこともあります。でも地元以外の遠隔地の物件に対し、金融機関は、「なぜその場所なのか?」「そんなに遠くて、管理はできるのか?」と疑問の目を向けがちです。それよりも、物件も物件に関わる体制も金融機関も、すべて地元でまとめることが、将来性のある健全な運営に繋がるのです。
新人大家さんに対して、私から伝えたいのは、こういった事業に対する姿勢です。自身が経営者だというマインドを持ち、全体を見まわし、揺るがない軸を持つことが大切です。
そしてポジティブに考えること。融資を断られることがあっても、そこだけに固執していては前に進まず、原因を相手に向けていても、現状は変わりません。それよりもなぜ断られたか、自分にも原因があるのではないかと考えることで、打開策が見つかります。もちろんその施策も、自分さえ儲かればいい、というものであっては、周りの協力を得られません。
相手にしこりが残るような付き合い方をしていると、何かトラブルにあった時に、そっぽを向かれます。それは調子よく回っている時にはわからないものなのです。
私が不動産事業を始めた11年前に比べ、さまざまな情報インフラが揃っています。とても参考になる情報も本当に得やすくなりました。でも私が今、危惧しているのは、そこで完結する人が多いこと。
会わずに、見ずに、得た情報で満足していませんか。本当にその物件のことをわかっていますか。
いい物件に出会うには、足で稼ぐことが大切です。
現地に行けばストリートビューで見る以上のリアルな情報を得ることができます。その手間ヒマを惜しんで、いい加減な投資をすれば、大きな損失を引き起こすことにもなり得ます。 これからどんどん便利なツールも増えていくことと思いますが、だからこそ、足で稼ぐことを忘れないでほしいと思います。
明日から真似したいスーパー大家の裏技

おごらずに臨む
サラリーマン大家によくありがちなのが、「私は大手企業に勤めている」「××のプロジェクトに関わってきた」という自信です。確かに世間的に見れば、立派な肩書きです。でもそれと不動産融資は何の関係もありません。「私は△△なので、不動産賃貸事業もできます」とアピールしたところで、金融機関に響くものはありません。
新たな取り組みで実績の無いものに対してプラスの評価をしてもらえるほど、甘い世界ではありません。
しかし見方を変えて、「◇◇な経験を生かすことができます」という言い方はできます。人とのコミュニケーションや技術力、マネジメント力など、自分のキャリアが不動産賃貸業にどんな武器になるのか、謙虚に見据えることが大事です。

お金に対する向き合い方をチェックされる
自己資金が2~3割あれば、貸し手が安心し、融資が下りやすくなります。 そのためサラリーマン大家になる第一歩は、お金を貯めることからです。その時、金融機関が見るのは、年収との相関性。年収1,000万円の人で100万円の人もいれば、年収400万円でも800万円貯めている人もいます。
この場合、高評価を得るのは年収400万円の人。少ない収入の中から捻出し、お金を貯めてきたという計画性などが評価されます。あればあるだけ使ってしまうということでは信用を損ねてしまい、信頼されることはありません。 経済観念がある、ないが重要なポイントになります。

私はフルローン派
自己資金を活用することは、融資の重要なポイント。キャッシュフローがよくなり、金利が安くしてもらえるなどのメリットもあります。
ただ手持ち資金がカツカツになることは、かえって高リスクです。例えば、火災や風水害などの緊急時、火災保険などですぐに対応できればいいですが、そうでないと行き詰まってしまいます。困ったときというのはお金が必要な時にお金がない時です。その時、融資を受けようと思っても、スムーズに事が運ぶとは限りません。借り手側の危うい時にお金を貸すのは貸し手にとって勇気のいるものです。
また、いい物件に出会えても、手付金が打てなければ、次の物件に繋がりません。運転資金もなければ修繕などの運営にこまってしまいます。そこで私はフルローンにこだわり、手許(てもと)資金を残して、投資効率を上げることを基本としています。
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