
社宅・社宅制度
家賃高騰で「社宅が借りられない」のはなぜ?企業への影響と市場の変化を解説

マイナビBizでは、家賃高騰による社宅コストへの影響や、今後見直したい制度・運用のポイントをまとめた「賃料上昇時代の社宅戦略ガイド」をご用意しています。
近年、賃貸住宅の家賃上昇を背景に、「社宅規程の上限額では条件に合う物件が見つからない」「社内承認中に物件が埋まってしまう」といった相談が、マイナビBizにも寄せられています。
なぜ今、社宅用の物件を借りにくくなっているのでしょうか。
その背景には、家賃相場や物件の動きと、企業がこれまで前提としてきた社宅規程や手配方法とのズレがあります。
本記事では、家賃高騰が起きている背景を整理したうえで、社宅手配や企業のコスト、担当者の業務にどのような影響が及んでいるのかを解説します。
家賃高騰は社宅運用にも影響している
東京カンテイの調査によると、東京23区の分譲マンション賃料は、2026年1月に1平方メートルあたり5,041円となり、4カ月連続で上昇しました(※1)。
この調査は分譲マンションを賃貸した場合のデータですが、都市部で賃料が上昇している状況を示す一例です。
家賃相場が変わった場合、社宅規程の上限賃料や物件条件が以前のままであれば規程内で選べる物件は減っていきます。個人の住まい探しにとどまらず、企業の社宅運用にも市場の変化が及び始めているのです。
では、家賃はなぜ上昇しているのでしょうか。その背景を、供給と需要の両面から見ていきます。
※1 出典:東京カンテイ「2026年1月 分譲マンション賃料」
家賃高騰と社宅を確保しにくくなっている背景
建設費が上昇する一方、住宅着工は減少している
家賃が上昇している背景には、賃貸住宅を新たに建てるための費用が増えていることがあります。資材価格や人件費などの上昇によって建設費が膨らむと、物件の開発費用を回収するため、新築物件の賃料も高く設定されやすくなります。また、採算を確保できないと判断されれば、開発計画そのものが延期・中止され、新たな住宅の供給が進みにくくなる可能性もあります。
実際に、国土交通省の「住宅経済関連データ」では、住宅建設工事費の上昇が示されています(※2)。また、2025年の新設住宅着工戸数は前年比6.5%減の74万667戸となり、3年連続で減少しました。賃貸住宅にあたる「貸家」も、前年比5.0%減の32万4,991戸です(※3)。
建設費の上昇や着工戸数の減少だけで、現在の家賃高騰をすべて説明できるわけではありません。ただ、新たな賃貸住宅の供給が伸びにくいなかで、都市部や利便性の高い物件に需要が集まれば、家賃は下がりにくく、上昇しやすくなります。
※2 出典:国土交通省「令和7年度 住宅経済関連データ」
※3 出典:国土交通省「建築着工統計調査報告 令和7年計」
企業が求める条件の物件に需要が集まっている
賃貸住宅の需要は、すべての物件に均等に集まるわけではありません。駅から近く、勤務地へアクセスしやすい物件や、セキュリティ・設備が整った物件ほど、多くの入居希望者が集まります。
企業が社宅に求める条件も、こうした人気物件の特徴と重なります。つまり、企業は限られた社宅用物件だけを探しているのではなく、個人の入居希望者や、同様の条件で社宅を探すほかの企業と、同じ物件を取り合っている状態です。
そのため、市場全体で見れば物件があっても、自社の条件を満たす物件は募集後すぐに申込みが入ることがあります。これまでのように、候補物件を比較してから社内承認を進めていては、契約までたどり着けないケースも出てきました。
家賃相場や物件の動きが変わる一方で、社宅規程や承認手続きが以前のままであれば、企業はどのような問題に直面するのでしょうか。次章では、社宅手配の現場で起きている3つの問題を見ていきます。
企業の社宅手配で起きている3つの問題
家賃相場の上昇や条件のよい物件への需要集中により、企業の社宅手配にも影響が及んでいます。
従来と同じ社宅規程や承認フローでは物件を確保しにくくなっている理由を、3つの観点から見ていきましょう。
社宅規程内で選べる物件が減る
家賃相場が上昇しても、社宅規程の上限賃料が据え置かれていれば予算内で選べる物件は減っていきます。
駅からの距離や広さ、築年数、設備などの基準を設けている企業では候補がさらに限られます。市場に物件は出ていても社宅として選べる物件がない。このズレが、物件手配を難しくしています。
規程内で候補が見つからない場合、担当者はエリアや設備条件を緩和するのか、上限賃料を超える物件を認めるのか、その都度判断を迫られます。
社内承認中に候補物件が埋まる
企業が社宅を契約する際は、候補物件の選定後も入居する従業員への確認や上長承認、稟議などの手続きが必要です。
一方、需要の高い物件には短期間で申込みが入ることもあります。社内承認を進めている間に募集が終了すれば、担当者は候補物件の選定からやり直さなければなりません。
従来の承認フローと現在の賃貸市場のスピードにズレが生じ、希望条件に合う物件を見つけても契約まで進めないケースが起こっています。
繁忙期に必要な戸数をそろえられない
新入社員の入社や人事異動が重なる時期には、複数の社宅を一度に用意しなければならない企業もあります。ところが、同じエリアや価格帯で、必要な設備を備えた物件を複数室確保するのは容易ではありません。
特に、勤務地へ通いやすい単身向け物件は、学生や新社会人が住まいを探す時期と需要が重なります。検討を始めるのが遅れるほど候補は減り、希望するエリアや予算では必要な部屋数を確保できないこともあります。
予定していた戸数を確保できなければ、対象エリアを広げる、複数の建物に分ける、物件条件を緩和するといった調整が必要です。従業員への案内や契約手続きも物件ごとに発生するため、社宅担当者の負担も増えていきます。
社宅が決まらないと企業に何が起きるのか
社宅が決まらないことで困るのは、入居する従業員だけではありません。予算を超える物件への対応、繰り返される社内承認、入居日までの調整など、企業側にもさまざまな負担が生じます。
社宅コストが膨らむ
例えば、上限賃料を月8万円から9万円へ引き上げ、その差額を企業が負担する場合、30室で月30万円、年間では360万円の増加です。
1室あたりでは月1万円でも、対象者が増えるほど社宅コスト全体への影響は大きくなります。共益費や更新料などを含めれば、検討すべき費用は家賃の差額だけではありません。
※上記は、家賃の差額を企業が全額負担する場合の試算例です。
担当者の確認・承認業務が増える
候補物件を確保できなければ、担当者は物件の選定からやり直さなければなりません。従業員への確認、見積もりの取得、例外申請、上長への説明も再度必要です。
入社や人事異動が重なる時期には、この作業が複数人分発生します。社宅の手配だけでなく、入退去や契約更新なども担う担当者にとって物件の探し直しは負担のかかる業務です。
問題は一件ごとの手間よりも、同じ判断と手続きが繰り返されることにあります。
従業員の入居や配属準備が遅れる
転勤や入社の日程が決まっているにもかかわらず、住まいが決まらなければ入居準備に使える時間は短くなります。
希望エリアで社宅を用意できない場合は、通勤時間の長い物件や当初の希望とは異なる物件を案内せざるを得ません。契約が入居日に間に合わず、一時的な宿泊先の手配が必要になることもあります。
社宅の確保は福利厚生にとどまる話ではありません。転勤者の着任や新入社員の受け入れを予定どおり進めるための業務上の基盤でもあります。
今の社宅制度が市場の変化に対応できているか確認を
・社宅規程の上限賃料を長く見直していない
・例外承認が増えた
・物件の決定まで以前より時間がかかる
こうした変化が見られる場合、現在の住宅市場と社宅制度の間にズレが生じているかもしれません。
必要なのは、上限賃料を一律に引き上げることだけではありません。エリアごとの家賃相場や利用期間、必要な設備、手配にかかる工数まで含めて、どこに無理が生じているのかを整理する必要があります。
マイナビBizでは、自社の社宅制度に潜むリスクを確認できるチェックリストと、賃料上昇による年間コストの試算、制度・運用を見直す際の考え方をホワイトペーパーにまとめています。
資料では、以下の内容をご確認いただけます。
・現在の社宅制度に潜むリスクのセルフチェック
・賃料上昇による年間コスト増加の試算
・企業が進めている制度見直しの6つのパターン
・短期・長期など、用途別に考える住まい手配
・社宅制度を見直すための3ステップ
自社の社宅制度が今後の市場変化に対応できるか確認したい方は、ぜひご活用ください。





